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不幸な女

作者: 〜ちあき〜

 

不幸な女は言った。


 あぁ、私はこの世で一番 不幸な女!


 娘の重い病気が

ようやく完治したと思ったら、


次は私が癌になるなんて!


 あとわずか一年の命!


あ〜ぁ、私は いつも こうなのよ。


いつもいつも、

私には悪いことばかり起こるのよ!


お先真っ暗!

どんな慰めも聞きたくないわ。

誰も私の気持ちなんてわかるわけないわ!








 幸せな女は言った。


 あぁ、私はなんて幸せなんでしょう!


 娘の重い病気が、

奇跡的に完治したのよ!


 私が癌になってしまったけれど、


娘の身代わりになれたのだとしたら、

こんなに嬉しいことはないわ!


 余命一年。


一年あれば、

愛する家族と親しい友人に、

感謝の手紙を書き残すことができるわ。


 残された時間で他に何をしましょう?

私に何ができるかしら?







 しかし一年後、彼女らは

奇跡的に癌を克服する。








 幸せな女は言った。


 あぁ、なんて幸せなことでしょう!


 娘も生きている。

 私も生きられる。


 それだけで、本当に幸せ!


この一年間の私の闘病生活で、

家族の絆がとても強くなったのがわかるの。


みんなが家事を分担し協力し、

お互いのことを思いやれるようになったの。


この病気のおかげだわ。


そして、

疎遠になっていた多くの友人がわざわざ会いに来てくれて、また再び親しい関係に戻れたことも。


この癌のおかげよ。


あぁ、

本当に私はなんて幸せなんでしょう!







 不幸な女は言った。


 あ~ぁ、一年間も闘病生活を送ったら、こんなに老けてしまったわ。


 こんな顔じゃ外を出歩くこともできやしない。

 

「癌が治った」って言われたって、

またいつ再発するかわからないでしょ?

 再発したらどうしよう。

あ〜ぁ、もう心配ごとばっかりよ。


 余命一年の私に優しくしてくれた家族だって、これから先はどうなることやら。


 同情してお見舞いに来ていた友人も、どうせまた疎遠になっていくでしょうよ。


癌が治ったところで、

愚痴やら心配やら不安やら、

私には

一生 悩みごとは尽きないわ。


あ〜ぁ、

もっと恵まれた、

もっと素晴らしい環境で暮らせたなら、

どんなに幸せかしら!



あ〜ぁ、私って、本当に不幸な女!









えぇ、本当にーーーー


不幸な女に幸せが訪れることは、

永遠にないでしょう。





 


状況はまったく同じでも、

感じ方、考え方が違うだけで、

幸せになったり不幸せになったり…。


結局、

自分の不幸を作っているのは、

自分自身。


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