五話
2014/03/25修正
「ここが王都のイシュワーズだ。」
「ふーん、随分壁が高いな…。それに魔障壁も張ってある。」
「…よくわかりましたね、羽ありでも気が付くお方はあまりいないですよ?」
そんなもんか?と俺は思ったがメアリー曰く「羽ありが数人集まって造ったから。」らしい。
羽ありの中でも高レベルの人でも「なんかある気がするけど気のせいか?」と思うくらいらしい。
何でわかったかと言うと、多分レベル差の所為だと思う。俺ってばレベルERRORだし。
ついでに魔障壁ははっきり見える。多分あれは光属性と神属性を混ぜて作ったんだと思う。そんな気配がするし。
「おいそこのお前。」
「それはそうと何故この王都へ?」
「おい。」
「ああ、まあ、観光ついでに冒険者になるためだな。」
「……おーい。」
「おお!そうなのか!?実はな、私たちも冒険者なんだ!!」
「泣いても……いいか?」
俺たちの話の合間に門番らしき人が話しかけてきてはいたが無視していたら涙声でそんな風に聞いてきた。
流石におっさんの涙声って誰得?渋いダンディな声は俺得ですhshs。
振り返るとそこにはダンディな茶目茶髪で白髪の混じった門番がいた。
「…もしかして、俺たちに話しかけてるのか?」
「そうだ!何度も話しかけても無視されて……。」
うじうじしてるなこの門番。こんなんで門番出来るのかよとは思うが…。
なんだか、それが演技な気がしてならない。
「…で、だ。そっちの嬢ちゃんたちは許可証を持ってるが、お前は持ってないのか?」
「ん?いや?持ってるが?」
それに周りには気付かない程度には片眉を上げる門番。…やっぱり、演技だったか。
俺はアイテムボックスの中にあるはずだからアイテムボックスを開いて許可証を取り出した。
……内心、本当にあるか心配になったのは秘密だ。
「な!?お、お前、古代魔法を使えるのか!?」
そしたら滅茶苦茶驚かれた。何故だ。
二人を見てみると二人も大層驚いてくれていました。何故だ。
俺は内心首を傾げると、門番は思考が戻ったのか深い溜息を吐いた。
「…あまり、人前で古代魔法は使わない方がいいぞ?」
「?何故だ?」
それに今度は片手で顔を覆った門番。失礼だな。
そう思ったが次の言葉で俺は納得することになる。
「いいか?この重要さが全く分かってないようだから一応言っておくぞ?
古代魔法はな、数百年に一人か二人しか持ってない大変珍しい属性なんだよ。」
つまり、古代魔法(MMORPGでは当たり前にあったもの)を持って生まれるって事は転生者か?
ああ、そういえば、古代魔法を持ってるのはほとんどPC以外あんまり見たことないな。
納得したように一人頷くとそれに少し顔を緩めた門番。多分事の重大さに気づいたと思ったのだろう。
いや、ある意味別の事の重大さに気づいたというかなんというか…気にしないでおこう。
でもとりあえず、次にサイのところに行ったとき聞いておこう。
多分サイの事だから冷や汗を流して目を泳がせるだろう。
「よし、何はともあれ許可証を持ってるからな、入っていいぞ。」
「ありがとうございます。」
一応礼を言って中に入る。その後はレイチェルとメアリーの後をついて行った。
様々な店が並んでいて内心興奮していたが一応おのぼりさんにならない程度に観察した。
勿論、次は一人でも来られるようにだ。
「着きました。此処が私たちの冒険ギルドです。」
「へー…それなりに大きいんだな。」
「まあ、たまに貴族とかも来るらしいからな。そこらへんは気を使うみたいだぜ?
とは言っても貴族は裏口の豪華な所から入るみたいだけどな。」
裏口の方が豪華とは一体どうなんだとは思うがあえて口に出さなかった。
ついでに冒険ギルドの外装はテンプレではなくて、清潔感のある装いだ。
「!?…いらっしゃいませ。初めての方ですか?」
「はい、そうです。」
何故か受付の人が驚いた顔をしてたけどどうしたんだ?内心首を傾げつつも返事を返す。
すると受付の人は営業スマイルを顔に引っ付けた。持ち直しが速い。
「では、こちらの魔法玉に手を当ててください。」
俺は手を乗せる前に鑑定をした。
魔法玉::とある羽ありが造りだした特殊な水晶玉。その人の犯罪履歴などを見る事が出来る。
その他には体力魔力etc.を見る事が出来る。
「…どうかいたしましたか?」
「ん?ああ、いや。なんでもない。」
俺は手を翳した。その瞬間、辺り一帯が光に包まれた。何故だ。
光が収まったらそこにはガラスの破片と言うには烏滸がましい砂があった。
周りは静かになって、目の前の受付の人は顔を真っ青にして震えている。
俺のハイスペックボディなため勝手に周りの声が聞こえてくる。
「ま、マジかよ…。」「つーことは羽あり?」「でもよ、羽ありが羽を隠すか普通。」「いや羽ありでも壊れないのに…。」「てことはマジで羽ありかよ。」「あんな弱そうながなぁ。」「しっ!聞こえたらどうするんだ。」
うん…丸聞こえなんだけどな。羽ありって事が確定するほどこれの容量は大きかったって事か?
いやでも羽ありでも壊れないっつってたし…。
目の前にいる受付の人は震度7あるんじゃないってくらいに震えている。
「あの…。」
「ひゃひい!な、なんでごじゃいましょうか!?」
お、おう。予想以上に怯えられているようだった。地味にショックだ。
しかし俺は自慢の美貌(笑)にスマイルを乗せて安心させるように屈んで目を同じ位置にする。…目は合わないけど。肩ビクゥッってされたけど。
そして優しい声で話しかける。…逆効果でなければいいんだけどな。
「すみません。確かに俺は羽ありです。けれど無暗に傷つけはしないです。
俺は羽ありだと知られると怯えられると思い、羽を隠したのです。」
なるべくゆっくりと諭すように、優しいながらも断言している言い方にする。
すると徐々に受付の人は震えが止まり、目を合わせてくれた。
「あ…の。ごめんなさい。私、誤解して。」
俺は誤解が解けたことにホッとして笑っていた。すると俺の顔が見える範囲にいた人全員が顔を赤くした。
俺の笑顔は最終兵器ですかそうですか。こりゃ滅多に笑わない方がいいな。
「…ああ!?魔法玉がぁ!!」
ボーっとしていた受付の人はまた顔を青ざめさせてそう叫んだ。
これって直した方がいいよな?この程度だったら簡単に直るし。
「ど、どうしましょう!?」
「あーっと、直せますよ?それくらいだったら。」
「「「「「……は!?」」」」」
そんな何気ない俺の言葉で周りは口を開けて唖然としていた。
え?なんでそんな顔すんだよと思いつつ俺は手を翳して直す。この場合はただ「直れー直れー。」と思うだけでいい。
直った魔法玉を触って確かめる受付の人は「本当に直ってる…」と呆然と呟いた。
「すっごいですよ!!私初めて見ましたよそんなの!!」
先程までの恐怖はどこへやら、興奮した顔を近づけてこれまた興奮した声でそう叫ぶ。
叫び声に眉が寄りそうになる。叫んだら少し興奮が収まったのか席に座る受付の人。
「…失礼しました。えーっと、ではステータスは未知数という事になりますね。」
「そうですね。」
「そうですねじゃなかろうに。」
やっぱりいたか。俺は別に反応を返すわけでもなく無視する。
それに爺…多分ギルドマスターは溜息を吐いた。俺は仕方なく振り返る。
「おや、いたんですか?」
「…お主、気づいておっただろうに。」
受付の人は「ギルドマスター!?どうして此処に!?」とまた叫んだ。やっぱ合ってたか。
受付の人にギルドマスターは一言二言喋って俺に「ついてこい」と言ってきた。
俺?俺はレイチェルとメアリー一緒ならなって言った。そしたら許可してくれた。ラッキー。