四話
2012/02/19修正
「やってきました異世界。」
あの後、べったりして離れなくなってしまったサイを何とか説得して仕事に専念してもらった。
「たまに来るから!」と言う約束でなんとか納得してもらった。
そして移転した所は鬱蒼とした森の中。どうせだったら精霊たちが居そうなところがよかった…。ま、仕方ないか。
「きゃ!?ま、魔人!?」
「くそっ!」
「んえ?ってうお!?」
ひゅんっと音がして反射的にしゃがむ。すると上から舌打ちが聞こえてきた。
俺は転がり剣が届かないところまで来たらジャンプして木の枝に座る。
「いきなりなんだよ。驚いたじゃんか。」
「うるさい!魔人のくせに!!」
攻撃してきたのは赤い髪をした17歳ほどの美女だった。目の色も赤い色で女剣士風。
悲鳴を上げたのは金髪青目、17歳ほどのこれまた美女だった。こっちは魔法使い風。
て言うか、魔人てあれだよな?敵キャラのあのヴァンパイアとかの。
「俺魔人じゃないし?」
「嘘をつくな!」
それにムッとした俺は「じゃあ何処をどう見たら魔人だって思うんだよ?」と聞く。
それに口ごもりながら「か、勘…?」と逆に聞き返されて俺は呆れた。勘って…。
「おいおい。普通だったらもっと確証のある物を提示してくれよ。そんなことで勘違いされたらこっちはたまらないよ。」
呆れた様子でそう言った俺に顔を赤くする。ついでとばかりに俺は「それに、どこをどう見たら俺が魔人に見えるんだよ?」と言う。
すると、またも口ごもらせながら「い、色気が半端ないから…。」と言われる始末。
「は?確かに普通よりも少しだけ色気はあるが、それだけで魔人扱い?」
「少しだけ…!?どこがだ!!色気ダダ漏れムンムンでそんなこと言うのかよ!淫魔とかの類よりもあるんじゃないのかってくらいにあるぞ!?」
確かの容姿的には若干エロくしたけど女剣士風の奴になんかに言われるなんて…。
ついでに、女剣士風の子の格好は胸当てとかの必要最低限以外のところは肌が見えてるという過激な服装だ。
というか、埒が明かないな…。このままだと平行線だ。
「んー。ああ、この世界にも羽ありっているか?」
「羽あり…?いるが、どうした?」
「いや?実は俺も羽ありなんだよね。」
その言葉に大層驚いた二人だったが胡散臭げな顔で見てきたのには少し傷ついた。
まあ、基本的に羽ありという事を隠す必要なんてないし、むしろ威張りに威張って吹聴しまくって自慢しまくるはずだから仕方ない。
俺は証拠とばかりに炎の翼を出した。
「「なっ!?」」
「ふふん。魔族は羽ありになんかなれないだろ?つまりお前たちの勘違い。」
「す、すまない!」
「ごめんなさい!」
二人の誤解もようやく解けた。しかし何故かビクビクされてる。顔も真っ青になっている。
そこまで気にする事なのか?と聞いてみたところ呆気にとられた顔をされた。
なんでも、基本的に羽ありと言うのは羽あり至上主義で傲慢らしかった。それでわかったが、この世界の設定は少しあのMMORPGと似ているみたいだった。
「別に俺はそこまで怒ってないし、気にしないんだがな…。」
「すまない。確かに、もし普通の羽ありだったら既に私たちは殺されてるだろう。」
「そうです!それに、そんな大きく色の濃い翼は見たこともありません!それなのに私たちを見下さないなんて…!」
何故か二人からキラキラした目で見られるんだけどどうしよう。
気まずくなって俺は頬をぽりぽりと掻いて誤魔化そうとする。
「あ、そう言えば…。」
「なんでしょうか?」
魔法使い風の少女が俺の声に反応して聞き返した。
いや、そんな畏まらなくても…って無理か。俺羽ありだし。
「俺の名前はシオン・アイリス。出来れば近くの町にでも行きたいと思っている。もし悪いと思ってくれているなら案内してくれないか?」
その言葉にきょとんとしている二人。確かに羽ありの翼は飾りじゃなくてきちんと飛べる等になっている。
わざわざこんな事を言わなくても飛んで探せば早いだろう。
だが、いくら此処があのゲームの中と似通っていたとしても全てが同じという訳じゃないと思っている。
だから俺は少しでも情報が欲しくてこんなことを言った。
「…っあ、私の名前はレイチェル・レジャーナルだ。」
「私の名前はメアリー・スゥです。」
俺は異世界で仲間を見つけた。嬉しくなって笑うと二人は顔を赤くした。…この顔か。
前の私だった頃の顔だったら効果はなかっただろう。むしろスルーされていた可能性も…。
勝手にそう思って勝手に落ち込んだ俺を二人は不思議そうな顔で見ていた。