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戦うコックさん  作者: マキマキ
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応募と前審査

このへんはさくっと行きたいです




 この募集を見つけたのは偶然でした。期限は明日まで。本当に私は運がいいです。


 家督争いの結果、持つものも持たずに家を出ざるをえず、どうせならかねてからの夢を叶えようと、やっとたどり着いた王都。食べるものにも困り、日銭を稼ぐためにギルドの依頼掲示板を眺めていた時に、私はこれを見つけました。


『料理人募集。ただし、戦闘能力をつものに限る』


 簡単に言うと依頼内容にはこんな感じのことが書かれておりました。なんで戦闘能力が必要なのかはよくわかりませんが、大方食材を自分で取りに行かねばならないとかいうことでしょう。そして、なんと、衣食住付きで月給が金貨三枚なのです。金貨一枚あれば、四人家族が一月生活できることを考えれば、この条件の破格さはわかるでしょう。それゆえ、競争率も高いでょうが、なんとか頑張りたいと思います。


 普通なら、怪しくてこんな応募には申し込まないのですが、今は早急にお金や生活基盤が必要な上に、この募集元が近衛騎士団なので安心です。近衛騎士団とは、王に仕える騎士たちの総称で、王都の警備も担当しています。なぜ、彼らが近衛騎士団の名で料理人を募集するのかはわかりませんが(普通は専用の食堂があるはずです)、そんなことはこの条件の前では、気にするに値しません。それに、私の夢のためには身分のしっかりした騎士団に顔を売っておいて損はないでしょう。面接は明日の朝、王都の東にある騎士団の拠点の一つで行われるんですね。




 翌日、受付を済ませ、集合場所につくと、そこは何ともむさくるしい空間でした。右をみてもマッチョ、左を見てもマッチョ、前にもマッチョ。やはり、破格の待遇ゆえに、冒険者としていつまでも芽が出ない人たちや、そろそろ安全な職業に就きたい人等がこぞってやってきたのでしょう。みなさん、私を見て、にやにやされてますね。きっと、弱そうなやつが紛れ込んできたと思われているのでしょう。しかし、筋肉だけぶくぶく膨らませたいつまでたっても芽の出ない、その辺のゴロツキに負けるような私ではありません。表情だけは笑顔を取り繕い、今後のために参加者を観察しておきましょうか。


意実情「みなさん今日はお集まりいただきありがとうございます。しかし、思ったよりも希望者が多いので、ふるい落とすため、あと皆さんの実力を見るために、我らが副団長と軽く剣を合わせていただきます。受け付け順に行きます。それでは、アーノルド・ジョナスさん」

 その言葉で始まり、続々と呼ばれていっていますが、副団長様と向き合ったり、二、三合打ち合っただけで帰らされてしまっています。近衛騎士団はトップに騎士団長様を、そして副団長様、さらにその下に大隊長、隊長、班長と続いていきます。つまり、副団長様は近衛騎士団のトップツーということです。こんなところに来て、審査とは騎士団は暇なのでしょうか。

 副団長様はさすが、騎士団の副団長を務めているだけあり、見た目と肩書きを裏切らない強さのようですね。


「ベアトリクス・リー」

 ついに私の番のようです。いまさらですが、私ベアトリクス・リーと申します。仲のいい方はビアーテと呼びます。今年で十六歳になります。

 副団長様と向い合い、一礼する。そして、自らの愛剣を構えて、最初から全力でいくために、体を軽く活性化させ、特に脚力を強化する。私と副団長様ほど体格差があれば、副団長様の剣を受け止めるたびにかなりダメージが蓄積されてしまうので、受け止めるよりもかわすことに専念するためです。後は、自らの剣に魔力を流しておきましょう。

「はじめっ」

 司会の方の合図で一気に間合いを詰めますが・・・。

「合格だ」

 副団長の言葉で、攻撃を加えようとするのもそれで終わります。合格したのはありがたいのですが、私、何もしていませんがいいのでしょうか。体中にいきわたらせていた魔力を少し発散させなければなりません。私の愛剣も少し物足りなさそうです。それに、周りの不合格になってしまった人たちが納得いかなさそうにこちらをにらみつけています。少々面倒なことになるかもしれませんね。しかし、望むところです。

 そう、ほんとうにたとえばですけれども、私がたまたま人目のつかないところに行って、それを知った不合格者たちが私を襲ったところを私が撃退するのは、正当防衛にかなったまっとうな行為だとは思いませんか?いえ、たまたまですよ。そんな、謀ったりはしませんよ。偶然の産物としてのお話です、もちろん。


 ふっ、たわいもありません。私がちょっとお手洗い(お花をつみに)行って迷っていたら、狙い通り(たまたま)見つかってしまい乱闘になりましたが、ちょろかったですね。ええ、私の末の弟はもとより、今年五歳になるかわいい甥っ子よりも弱いかもしれません。筋肉だけつければいいというものではありませんからね。あんなものは、押さえつけられない限り、役には立たないのです、彼らくらいのレベルだと。暇なので、彼らを積み上げてダルマ落としをしようかと考えていたら、人の気配が、

「あっらっー?お嬢ちゃんが一人連れ込まれたと聞いて来てみたら、やるねー」

 ひゅーと下手くそな口笛を吹いて現れたのは、くすんだ金髪につり目、ひょろりとした身体つきの知らない人でした。

「あっ、副団ちょーが剣を合わさずに合格にした子だ」

 副団ちょーってなんですか、副団長とちゃんと言って欲しいものです。

「そっかー、じゃ、余裕だね、こんな冒険者崩れ相手だと。合格者呼んでるから行った方がいーよ」

 一通り言いたいことだけ言って去って行った。お咎めありかと思いましたが、大丈夫だったようです。それにしても、誰だったのでしょう?騎士団の人でしょうか?



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