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第3話 未知との遭遇!勇者のおねえさんがキレてます!

トーキョーのとある公園


アレリアは立ち尽くしていた。

風の匂いも、空気の重さも、見える景色もすべてが、自分の知る戦場とは違っていた。


(……転移した? いや、これは異次元に巻き込まれたのか?)


鼓動がやや重く感じる。

そんな中、頭上から甲高い声が響いた。


「あわわわわ……ひより!? ひよりなのか!?」


ふわふわと宙に浮かぶのは、淡い黄色の身体に羽を持つ、小さな妖精のような生き物だった。


「知性が高そうな魔獣…か?

なにを喋っているのかは分からぬが」


その言葉に被せるように、さらに下品な声が響く。


「……って、おい! そこの!俺様を無視するんじゃねぇ!」


ガチャガチャと音を立てながらメカニーナは怒る。


「……なんだお前は、わかるように言え」


メカニーナを強く睨む。気迫が走る。


(げっ……なんだコイツ……! すげえ殺気…)


明らかに焦りを滲ませつつ、メカニーナは短く叫んだ。


「お、俺様は!無敵のメカニーナだ!! くらえ! メカメカビーム!!」

 

その腕部から不気味なビームが放たれた。

鋭い音を立てて一直線にアレリアを狙う


ビィィィイイイム!!


すかさず、俊敏に避ける。


バシュッ!

パキパキパキッ…

 

光線は、彼女の背後にあった石像を直撃。石像は金属の部品の山へと変貌した。 


「なっ、当たらねぇ!? 避けた!?」

 

「変わった魔術を使う。ただの解放ではないな……だが、攻撃してくるということは敵だ。ならば、叩き斬る!」


アレリアは剣を抜き放つ。一直線にメカニーナへと接近した。


「ま、待つのだ! なにをするつもりなのだっ!?」 


声をかける暇もない。目にも留まらぬ速さで距離を詰め、剣閃が走る。


「えっ……!? 速」


ザシュッ!


鋼鉄の身体が両断され、火花を散らしながら崩れ落ちるメカニーナ。


「……見かけよりも脆いな」



同時刻




空を飛びながら、怪人出現の報を受けた公園へ急ぐ

もう一人の魔法少女。

彼女の名はアンガー☆ガール・つばき。ひよりとは正反対のダークパープルカラーを基調とした戦闘スタイル。


その衣装は紫と黒を基調にしたゴシック調。

フリルと鋭角の装飾が組み合わさり、怒りを象徴するようなデザイン。

胸元には深紅の宝石が埋め込まれ、感情の昂りに反応して微かに光る。

横にはキツネをイメージした使い魔のクナギ。

ライトパープルの色合いでチュチュと同じく翼が生えている。

 

「また寝坊したーーっ!クナギ!なんで起こしてくれなかったのよ!」


「三度ほど起こしましたよ、つばき様」



「これじゃまた、ひよりのヤツに先こされるじゃない!むきーーっ!」


「現場までもうすぐでございます」


やがて、公園の上空に到着したつばきは、勢いよくポーズを決めた。


「アンガー☆ガール・つばき、参上っ!怒りの鉄槌、くらわせてやるから覚悟なさいっ!」


だが、その地上にひよりの姿はなかった。

代わりに、場違いなほど冷たい目をした、鎧のような服を着た女性が立っている。


「……空を飛んでいる?あの衣装はなんだ?」 


「つばきちゃーん!来てくれて助かったのだーっ!」


つばきの目が、その女性の背後に視線を送ると

そこには両断された怪人の残骸が。


「ひ、ひぃぃぃっ!? 誰!? 怪人が真っ二つになってるんだけど…!絶対に関わっちゃダメなやつじゃん……!」 


「チュチュはここにいるというのに……ひより殿の姿が見当たりませんな」


「クナギ!帰るわよ!」


「ええっ?でもチュチュが助けを求めておりますぞ」 


「いいのっ!あの人絶対やばいから!早く!」


つばきはクナギの手をつかんで、全速力でその場から離脱した。


チュチュ「行ってしまったのだ……」


アレリア(なんだったんだ、さっきのは……) 


チリとなって崩れ落ちていく怪人の残骸を背に、アレリアは改めてチュチュへと視線を向けた。

剣はすでに鞘に収められていたが、その眼差しにはなお警戒の色が残っている。


「さて……ここは一体どこなんだ?教えてもらえるか」


「ひぃぃぃっ! 怖いのだ!殺されるのだぁぁぁ!」 


羽根をばたばたと震わせながら後ずさるチュチュ。


「……待て。敵意がないのはわかってる。だが、肝心な言葉が通じん……

くそっ、セリアがいれば翻訳の魔術が使えるものを……」


その場で小さくうーんとうなりながら、腕を組むアレリア。

チュチュは怯えながらも、その様子をじっと見つめていた。 


(……もしかして、お話したいのか?) 


「よ、よしっ……ぼ、僕も使い魔なのだ!勇気を出すのだ!」


小さな身体から、ほのかに淡く優しい光が溢れはじめる。

それは空気の粒を震わせながらアレリアを包み込んでいく。 


「……っ!? な、何をした!? やはり貴様、敵かッ!」


即座に剣を抜き、切っ先をチュチュに向けるアレリア。

 

「ち、違うのだーっ!翻訳魔法なのだ!殺さないでほしいのだあああ!」 


ぴたりとアレリアの動きが止まる。

彼女の表情が徐々に変化する。


「言葉が、理解できる……」


「よ、よかったのだ……!通じたのだぁ……!」


地面にぺたんと座り込むチュチュ。

アレリアは剣を再び鞘に納めながら、じっとその小さな使い魔を見つめていた。


「はぁ……とりあえず、この世界にも魔術のようなものは存在しているようだな」


そう呟きながら、アレリアは疲れた様子でその場に腰を下ろした。


「あっ、そうだったのだ! ひより!…ひよりはどこに行ったのだ!? それと、君はいったい誰なのだ?」


「ひより……? 私はアレリア・ブラッドリィ。

魔王討伐隊の一員だ」


「まおう……? ひよりがいなくなってから、もう何がなんだかわからないのだ……」


「それは私も同じだ。あの術式を使ってから、この世界に飛ばされたような気がしている」


小さく息を吐き、空を見上げるアレリア。


「……一刻も早く戻らなければ。今ごろ討伐隊の仲間たちはネイヴと戦っているはずだ。3人では厳しい……セリア、ガロス、コー……無事でいてくれ」


再びチュチュに目を向けた。


「……さて、“ひより”が何をしたのか、君が何者なのか。お互いに知っていることを共有しよう」


「わ、わかったのだ!」


チュチュはぴょんと跳ねて胸を張る。


「僕はチュチュ! とある星から、魔法少女を選ぶためにこの地球にやってきたのだ! そして、ひよりは僕が選んだ“魔法少女”なのだ!」


「魔法少女……魔法を使う少女、という意味か。私も幼い頃から魔術を学んできたが、それとは別の仕組みなのか?」


「う、うーん……たぶん、ちょっと違うのだ。僕と契約して、僕の呪文で変身して、怪人と戦うために“魔法少女”になるのだ!」


「……ますます意味がわからんな。“怪人”とは、さっきの鉄の塊のような存在か?」


「そうなのだ! あれは“メカニーナ”っていう

怪人なのだ!」


「メカニーナ?……すまないが、君の翻訳魔法は本当に機能しているのか? 私には意味不明な単語ばかりなのだが」


「そ、そ、それは……!」


気まずそうに視線を泳がせたあと、はっと思い出したように言う。


「そうだ! ひよりは、とっておきの魔法を使ったのだ!

それで、こんなことになったのかもしれないのだ!」


「とっておきの魔法……? 私も異次元の術式を発動した直後だった。それが暴走した結果か……」


「異次元!? じゃあ、それが原因でひよりとアレリアが……!」


「ふむ、そうなると、ひよりは今、私のいた世界

ウェルミールに転移している可能性があるな。……まずいことになった」


アレリアは立ち上がる。


「……よし。私はこの世界から脱出する手段を探る。世話になったな」


「え? ちょっと、ひよりはどうなるのだ!?」


「すまないが……そちらの魔術は私には理解できない。君が探してくれないか? 私には時間がない」


そう告げると、アレリアは走りだした。


ダッ――!


目にも留まらぬ速さでその場を去るアレリア。躊躇いなく一直線に走っていた。


「あ〜〜! ま、待つのだ〜〜っ!」


必死に叫ぶチュチュの声も、アレリアの耳にはもう届いていなかった。


滲身…肉体強化の魔術を全身に行き渡らせ、

風を裂くように走る中、思考をめぐらせる。


(滲身は問題なく使える。この世界でも魔力の流れに干渉はできるようだ。ならばまずは都市人の集まる場所に向かえば、何かしら手がかりや魔導書保管所があるはずだ) 


そして。


辿り着いた街並みは、アレリアの常識を根底から揺さぶった。


「……これは……」


巨大な建造物が、天を衝くように聳え立っている。尖塔ではなく、無数の窓と光を持つ塔が、何本も空に突き刺さるかのように並んでいた。


地を滑るように走る車。魔車とは違い、魔力供給台も見当たらず、車体はどれも軽そうで、まるで風を纏っているようなスピード。

空中には幾何学的な形の看板が浮かび、文字でも魔術記号でもない奇妙な記号が連なっている。


服装も見たことのない色と形。露出の多い者、頭に飾りのような被りものを乗せている者、耳に鉄製のような板を押し付け喋る者……。


そして、耳に入るのは理解できる言語にもかかわらず、意味の分からない言葉たち。


「イベント?」「映画の撮影かな?」「え、あれガチで本物じゃない?」


「やば、再現度高すぎ」「マジで異世界の剣士みたい」「コスプレってレベルじゃねぇ」


(会話は通じる……だが、言葉の意味がわからん。イベント? コスプレ? なんの術式の名前だ……?)


脳が情報を処理しきれず、思考が鈍る。人々の視線がこちらに集中していることにも気づくが、もはや気にする余裕はなかった。


「……まるで、世界そのものが違う」


文明、文化、魔術、技術、全てが彼女の常識と逸脱していた。


剣を携え、鎧を纏ったまま立ち尽くすアレリアの姿は、まるで異物のように都市の風景に溶け込まず、ただそこに“異界”の存在として佇んでいた。


「そこの……私はアレリアという者だ。すまないが、“魔導書保管所”はどこにある?」


すれ違いざま、近くの男に声をかける。


「え? 魔導書……? いや、すみません、わかりませんね……」


そのまま背を向け、足早に通り過ぎていった。


「動画の撮影かな……?」


聞こえてきた小さな声に、アレリアは眉をひそめる。


「……はぁ……」


日は傾き、街全体が夕日に染まり始めていた。アレリアは小さな公園のベンチに腰を下ろす。


(戦場の方がまだ落ち着く……。この世界は……すべてがわからない)

(今まで、過酷な訓練や死線をいくつも越えてきたつもりだった……それでも、ここは……神経が擦り減るばかりだ)

 

その時


「見つけたのだ〜〜!!」


弾むような声と共に、小さな羽音が混じって近づいてきた。


「……チュチュ、だったな。どうした?」


「やっぱり、一緒に考えたほうがいいって思ったのだ! それに、頼れる人が一人いるのだ!」


「頼れる人?」


「この世界で、もう一人魔法少女をしてる、とーっても強い女の子なのだ!」


「それはありがたい!ぜひ案内してくれ」



ーーーー



場面は変わって、都心の一角。住宅街にぽつんと佇む、洋風の豪奢な屋敷。


扉が開き、そこから颯爽と現れたのは、上品な洋服を着た少女夜野つばき。


「お出かけ行ってきまーす」


「お気をつけて、つばきお嬢様」


メイドに見送られ、高級なレザーの鞄を肩にかけながら

歩くつばき。その横には、使い魔のクナギが宙に浮かんでいた。


「……ねぇクナギ、今日のあの人……なんだったのかしら?」


「私にも分かりません…」


「でしょうね。剣で怪人ぶった斬ってたし……

まあ、もう関わらないことを願いたいわ」


気だるげに肩をすくめたその時


「つばきちゃーーん! 助けてほしいのだーー!!」


遠くから、チュチュが慌てて飛んできた。


「チュチュ……………って…は? ……ちょっと、その人って……」


「関わっていけない人…ですな…」


「急ですまない。君も“魔術”を使えると聞いた。……もしよければ、協力してほしい」


関わってはいけない人に…2度会う羽目に

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