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この夢がきみに喰われても  作者: 葉方萌生
第六話 笑顔の灯火がともるから

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6-4

 そこまで考えて、心が記憶に蓋をしてしまった。今はそれどころじゃない。里香の言う通り、結叶のところへ行かなくちゃ。

 彼女でもなんでもないのに、彼の顔を一目見たいという衝動に駆られた。


「私……行ってくるっ」


 依然として肩で息をしている里香を置いて、榊原総合病院へと向かうため身を翻す。バス停で病院へ向かうバスへと乗り込むと、なんとか呼吸を整えた。

 結叶……美結ちゃんに何があったの。

 会ったこともない友達の妹だけれど、彼がどれだけ美結ちゃんのことを大切にしているかは知っているから。病院に着くまで、ずっと気が気でなかった。


「結叶……!」


 榊原総合病院の入り口に着いた時、受付近くの自動販売機の前で呆然と佇む彼の姿を見つけた。ちょうど一週間前に彼と話した場所だ。


「恵夢……?」


 私の方へと振り返った彼の顔を見て絶句する。

 見たこともないほど憔悴して、疲れ切っていた。一瞬、結叶ではない別の誰かと見間違えたのかと疑ってしまったほど、別人だ。不安の滲むその顔つきから、瞬時に美結ちゃんの状態が芳しくないことを察して胸がチクチクと痛んだ。


「み、水原さんに、結叶が病院に行ったって聞いて。いてもたってもいられなくなって……」


 自分がここに来た経緯を話す。彼は「ああ」と力なく頷いた。


「恵夢、ずっと学校休んでたけど大丈夫なのか」


 自分は全然大丈夫そうじゃないのに、真っ先に私の心配をするんだ。

 その痛々しいほどの優しさに、胸が疼いた。


「私は、大丈夫。それより美結ちゃんは……?」


 私が学校に行ってなかったのは、美結ちゃんの話を聞いてから、どんな顔をして結叶に会えば良いか分からなかったからだ。

 私の問いかけに、結叶は一瞬なんでもないというふうに平気そうな顔をした。けれど、しばらく経つとくしゃりと顔が歪む。結叶の苦しそうな表情を見るのは初めてだった。


「大丈夫、と言いたいところなんだけど、大丈夫じゃないんだ。美結……危篤状態になってる」


「!?」


 声にならない悲鳴が空気となって喉から漏れた。憔悴しきった彼の様子からなんとなく察しはついていたが、まさか危篤状態だなんて。



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