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この夢がきみに喰われても  作者: 葉方萌生
第六話 笑顔の灯火がともるから

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6-2

「また気分が良くなったら散歩にでも行ってみる」


「おう、そうしろ」


 家族には体調が悪いから、と嘘をついて休んでいるが、たぶん両親も兄も、本当は私学校に行きたくないだけだと知っているだろう。もし本当に体調が悪いと信じているなら病院に連れていくだろうから。そうしないってことは、気づかないフリをしてくれているのだ。


 兄の気配が自室の前から遠ざかっていく。兄に言われた通り、少し外の空気を浴びた方が良いかもしれない。

 夕方、学校が放課になる時間帯に、私はひっそりと玄関から飛び出した。

 どこへ行くわけでもない。歩いて、その辺をぷらぷらと彷徨う。習い事帰りの小学生が、道草を食いながら友達と歩いている。無邪気に笑い合う声が胸に堪えた。

 私にもあんなふうに、友達と仲良く帰宅する時間があったのに。

 里香や紗枝、朱莉たちと部活帰りにしょうもない話で花を咲かせていた日々を思い出す。みんなが別れる交差点で、日が落ちるまで立ち止まって喋っていたっけ。時々帰りが遅くなって母親に怒られることもあった。けれど、叱られた後も、不思議と充足感に満ちていた。

 あの頃にはもう、戻れないのかな……。

 一人で考える時間が多いと、つい思考がネガティブな方へと持っていかれる。

 こんなだから、学校で二重人格とか陰キャとか揶揄われるんだ。

 前みたいにもっと、明るく笑ってなきゃ——。

 カラスが集団で鳴く声に合わせて、ふと視線を前方へと飛ばした。

 私と向かい合わせになるようなかたちで、向こうからこちらへと真っ直ぐに歩いてくる見知った人影がある。その人は私の姿を見つけて、はっと私を凝視した。走っていたのか、肩でぜえぜえと息をしている。

 どうして彼女が——と疑問を抱いた時だ。


「恵夢、何してんの!?」


「……え?」


 その人——里香は、私を見据えて少し離れたところから声を張り上げた。彼女の自宅はこの辺りではない。それに今日、部活があるはずなのになぜ放課後のこの時間帯にこんなところにいるの? 

 疑問はぐるぐると頭の中を駆け巡った。先週、彼女にこれ以上関わらないでと宣言したことが記憶に蘇る。そんなことは忘れたと言わんばかりにこちらへと駆けてくるかつての友人はどこか焦り気味で、眉は八の字に下がっている。一体何事だろう——と答えを探す時間はなかった。

 里香は私の肩をがっしりと掴むと、まだ乱れている呼吸を整えることも忘れて、叫んだ。


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