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この夢がきみに喰われても  作者: 葉方萌生
第六話 笑顔の灯火がともるから

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6-1

 翌日からまる一週間、私は学校を休んだ。

 体調が悪かったからではない。結叶と病院で鉢合わせをしてから、心に薄もやがかかったように苦しかった。結叶が私に「自分の夢を食べて」と提案してくれるのに、その複雑な表情の向こうに垣間見える美結ちゃんへの情愛が、私をがんじがらめにする。

 できない。

 できないよ。

 できるわけ、ないよ。

 大切な人を救いたいと思い描いた夢の尊さは計り知れない。私だって学校の先生になりたいと思っていたけれど、彼の想いの強さに比べたら、私のなんておふざけみたいなもんだ。


「どうして……」


 神様、どうしてですか。

 どうして彼の妹を病気にしたんですか。

 どうして私を病気にしたんですか。

 どうして私は彼と出会ってしまったんですか。


 聞いたって仕方のないことなのに、どうしても神様を責めたくなる。私は結叶と出会うべきじゃなかった。私と出会わなければ、結叶は誰かに夢を差し出そうなんて思わなかっただろう。こうして私が彼に会うのが気まずくなることもなかった。結叶に会わなければ、私は今もひとりぼっちで、教室の隅っこで息を潜めていただろう。

 胸いっぱいに込み上げる切なさが、私を部屋の中に縛りつける。学校に行けば自ずと彼の顔を見てしまうから、ここから一歩も動けないでいた。


「恵夢、大丈夫か?」


 トントン、と部屋の扉をノックする音が聞こえたかと思うと、兄の恵太の声が聞こえてきた。今日は大学の授業が休みらしい。……と本人は言っているが、本当は私のために休んでくれたのだと知っている。そうと知っているから、余計に苦しかった、


「大丈夫。お兄ちゃん、大学に行ったら?」


「兄ちゃんはな、こう見えて優等生なんだぞ? もう授業に出席しなくてもいいぐらい、日々の授業で戦績を上げているんだ。がっはっは」


 私を元気づけようと、わざと明るい声で笑ってみせた。扉の向こうから感じるその優しさに、胸がジンと溶けた。


「ああ、そういえばさ、前に話した俺の友達が、夢欠症の人は家に引きこもらない方がいいって言ってたぞ。少しでも外の空気を感じた方が、脳に優しいんだって。要は気分転換ってことだな」


 本当か嘘か分からない提案を、兄はあっけらかんと言ってのける。

 気分転換か……。

 確かにここ一週間、部屋に引きこもっているので、自然と身体が小さく縮こまっている。同時にストレスを感じているのも事実だった。だけど、だからと言って行くあてはない。学校へはまだ行く気にならなかった。


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