表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この夢がきみに喰われても  作者: 葉方萌生
第五話 この夢を思い描く理由

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/73

5-8

「俺がちょくちょく学校に遅刻したり欠席したりするのは、美結のお見舞いに来てるからなんだ。先生には体調不良か家の用事でみんなに伝えてほしいって言ってる。うち、両親が早くに亡くなってて、伯父さんの家で暮らしてるんだ。親代わりって言ったら思い上がりかもしれねえけど、できるだけ俺が美結のそばにいてやりたくて」


 彼の家庭の事情を、初めて知った。ご両親がいないという話は初耳だった。

 ご両親の代わりに、妹さんの病室に足繁く通う彼のことを思うと、胸がツンと詰まる思いがした。


「美結のやつさ、こっちが心配するぐらい明るいんだよ。本当に病気なのか疑っちまうくらいにな。でも絶対無理してるんだ。辛いのを隠してる。俺、もう美結にあんな無理矢理笑ってほしくない。だから、俺が美結の病気を治したいって思ったんだけど……まあ、今の俺にできることはねーわな。白血病の治療は確立されるし、どう足掻いたって、美結の治療には間に合わねえんだ」


「そんな……そんなことない、よ」


 そう言い切りたい。けれど、病気のことを詳しく知らない私は、途中で言い淀んでしまった。

 結叶が医者になりたいと言った背景には、これほど切実な願いが込められていたんだ。

 ますます、私が彼の夢を喰うわけにはいかない。

 だってそうでしょ? 大切な妹を救うために抱いた夢を、私が汚していいはずがない。

 

「医者になりたいっていうのは確かに本物の夢だ。でも今、美結はもう助からないかもって言われてて……。だからってわけじゃないけど、それならこの夢を恵夢にあげたい。美結がもしいなくなっても、恵夢のことを救えるなら、俺の夢も美結も、浮かばれると思う」


 ぽつり、ぽつりと一つ一つの言葉を噛み締めるようにして語る結叶の横顔はとても淋しそうで。とてもじゃないが、彼の顔を直視することができなかった。

 病室のロビーには、患者を呼び出す受付スタッフの声だけがやけに大きく響いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ