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この夢がきみに喰われても  作者: 葉方萌生
第五話 この夢を思い描く理由

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48/73

5-1

 週が明けると、早速中間テストの返却が始まった。テストがうまく行った時もそうでない時も、返却だけは早いから心の準備がままならない。月曜日の朝から、教室はテスト返却前のそわそわとした空気で満たされていて。


「あれ、今日も結叶くん遅刻ー?」


 教室で、誰かが声を上げた。はっとして彼の席を見ると、確かにまだ来ていない。普段なら朝のHRが始まる十五分前には来ているので、遅刻か欠席だろうか。それにしても結叶って遅刻が多いな。一度欠席している日もあったけれど、先生曰く「家庭の用事」だそうだ。体調不良ではなく、家庭の用事。結叶が休むときは大体、体調不良か家の用事だった。


「恵夢……」


 結叶の席を眺めた後、ふと隣を通りかかった里香がボソリと呟いた。一昨日、里香とはゲームセンターでばったり出会してから発作が起こり、それっきりだった。


「お、おはよう」


 気まずい空気が漂う中、なんとか挨拶だけはすることができた。里香は「あの」と何か言いたげな顔をしていたけれど、ちょうどその時、北野先生が教室に入ってきた。出かかった言葉をごくりと飲み込んだのが分かる。そのまま私の顔をじっと見つめてから、自分の席に戻って行った。


 なんだったんだろう。

 また嫌味の一つでも言おうとしたんだろうか。

 ゲームセンターで私が結叶とデートをしているところを見た彼女が、「裏切り者」と叫んだことを思い出す。私はみんなに黙って部活を辞めて、友達を裏切ったのだ。それなのに男の子と二人きりで遊んでいたから、里香はそんな私を軽蔑して……。

 一昨日のことを思い出すと気分が悪くなった。

 ここ数日間で、朝目覚めた瞬間の体調がぐっと悪くなったような気がする。薬でなんとか抑えてから学校に来てはいるものの、このペースで体調が悪化したら、いつ学校に行けなくなるか分からない。

 夢欠症には解明されていない謎の部分が多く、症例も少ない。自分の身体がいつどうなってしまうのか、不安で仕方なかった。

 

 北野先生による朝のHRが終わった。結叶はやっぱり家庭の都合で遅刻だそうだ。そんな彼が教室に現れたのは三時間目が始まる前のこと。すでに数学と英語のテストが返却されていて、次は国語の時間だった。


「結叶、あの、一昨日はありがとう」


「やべー今日も遅刻しちまった」と明るくぼやきながら教室に入ってきた彼に、私はそっと告げた。クラスのみんなは、私が結叶に話しかけるのを遠巻きに眺めてヒソヒソと近くの人と囁き合っている。

 不釣り合いな二人。

 凸凹すぎ。

 内藤みたいな陰気な子、結叶くんだってすぐに飽きちゃうよ。

 どこからともなく聞こえてくる心無い声が現実のものなのか、私の被害妄想なのか判別がつかない。いつからか自分の悪口を拾い集めることに耳が慣れてしまっていた。


「俺の方こそありがとう。楽しかった」


 あえて病気のことは口にしない。ただ二人で遊べて楽しかったことだけを思い出し、心がほっと温かくなった。

 その後も順調にテストが返却されていき、その日のうちにはもう主要五科目のテストが返却された。私は、五科目の合計点数を見て驚く。普段より五十点ほど高かった。中間テストだからということもあるかもしれないが、結叶と一緒に勉強した日々のことを思い出す。あの勉強会が功を奏したのかもしれない。そう思うとほっこりと嬉しい気持ちになった。


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