表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この夢がきみに喰われても  作者: 葉方萌生
第四話 言葉だけで救われる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/73

4-9

「あのさ、恵夢、提案があるんだけど」


 手元のジュースを飲み干した結叶が一際明るい声で言う。


「なに?」


 今度はなんだろう。またデートしようとか、全然違う話だったら笑ってやる。でもデートだったら嬉しいから笑う前にこっちがにやけてしまうかも。なんて、取り留めのないことを考えた時、彼が言い放った。


「俺の夢を喰え」


「……え」


 聞き間違いかと思った。

 俺の夢を喰え……?

 一体どういう風の吹き回しだろう。

 今の話を聞いて、私に自分の夢を差し出すことのリスクを考えなかったわけじゃないはずだ。それなのに、どうして。


「あの……自分が何言ってるか、分かってる?」


「もちろん。恵夢に俺の夢を差し出すんだろ。そうしないと、恵夢の病気は治らないし、寿命だって短くなるんだろ」


「そ、そうだけど」


 結叶の言っていることは間違っていない。私が話した内容そのままだ。でもだからこそ、本当に事の重大さを理解しているのか、怪しい。


「ありがたい申し出なんだけど、さすがに出会って間もない結叶に頼むわけにはいかないよ」


「じゃあ他に誰かあてはあるのか? それこそ水原に頼む?」


「いや、その」


 結叶からすれば、私が誰かの夢を喰うことが当然になっているらしい。確かにそれしか治療法はないのだけれど、実際に他人の夢を喰うなんて、踏み切れるはずないよ。


「頼めないんだろ、他の誰にも。だったら大人しく俺の夢を喰っとけ」


 さも当たり前のように軽い口調で言うので、思わず彼の顔をまじまじと見つめてしまう。一体どうして? どうしてそんなふうに出会ったばかりの私に、大切なはずの夢を渡そうとできるの?


「……そんなに簡単に言っちゃだめだよ。自分の夢は大事にしなきゃ」


 胸にツウツウと刺すような痛みが走るのに気づかないふりをしながらそっと呟く。夢。夢、か。私にもかつては夢があった。作文にも書いた、中学校の先生になるという夢だ。ついでにバドミントン部の顧問にもなりたかった。だけど夢欠症になって、その夢ももう諦めかけている。今でさえ酷い発作に襲われることがあるのに、この先どれほど長く生きられるのかも分からないから。


 私は、まっすぐな瞳で「俺の夢を喰え」と命令してくる結叶の顔を、胸を、足を、つま先を、順番に見つめた。微動だにせずに私に自らの夢を差し出そうとしている彼は、どれほどの覚悟を持っているのだろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ