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この夢がきみに喰われても  作者: 葉方萌生
第四話 言葉だけで救われる

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4-7

 迷子の子供を安心させるようにほっとした笑みを浮かべる結叶に連れられて、私たちは街中にある小さな公園へと向かった。

 公園ではベンチに座ってスマホを眺めている大人や、杖をついて散歩をしているお年寄りの人、母親と手を繋いで歩く小さな子供などたくさん人がいた。なんとか空いている椅子を見つけて腰掛ける。結叶が自動販売機で買ってきてくれたオレンジジュースを遠慮がちに一口飲む。思ったよりも喉が渇いていることに気づいて、冷たいジュースの酸味が喉を潤した。


「さっきはその、いろいろと迷惑かけてごめん。発作のことも、事故りかけたことも」


「あのことはもういいって。それより、恵夢のことを話してほしい」


 先ほどから変わらず、真剣に私の身を心配してくれるような優しい口調で私を包み込む。無意識のうちに身も心も委ねたくなる柔らかさだった。ツンツン頭で切れ長の瞳をした見かけによらず、結叶は優しい。私は大きく深呼吸をすると、去年の秋に病気を発症したことを話し始めた。


「高校二年生の秋に、夢欠症っていう病気を発症したんだ。夢が見れなくなる病気。すごく珍しい病気で、世界でも症例は指で数えられるほどしかないらしい。脳機能に障害が出るみたいで、その影響でよく頭痛がしたり、吐き気がしたり、ぼうっとしたりする。やがて本格的に脳が衰弱して——死んじゃうんだって」


「死んじゃう」と言ったところで、結叶がはっと息をのむ気配がした。


「さっきみたいに発作が起きるのは本当にたまーになんだけど、発作が起きたら基本的に薬飲まなくちゃいけなくて、でも今日は持ってくるの忘れてて……」


 本当はもっと詳しく、順序立てて話をしたいのに、初めて他人に病気のことを話す緊張からか、なかなか上手いこと伝えられなくて焦る。それでも結叶はただ静かに私の話に耳を傾けてくれていた。


「完治させる方法は基本的になくて、進行を遅らせたり症状を抑えたりする薬を飲むしかないの。病気のせいで睡眠不足にもなるし、ストレスで塞ぎ込んじゃうから、性格もガラッと変わってしまって。前にも言ったけど、本当はもっと明るい性格だったの。友達だってたくさんいたし、里香たちとも……。でも病気になってから、誰にもそのことを話さずにいたから、二重人格だって揶揄われるようになって。『明るい人だと思ってたのに、私たちのこと騙してたんだね』って去っていく友達もいた。部活も辞めざるを得なくなった。ひとりぼっちになって、このまま卒業まで灰色の生活を送るんだって思うと、怖かった」


「そうだったんだ……」


 初めて聞くであろう夢欠症の症状と、私が経験した孤独の闇に、結叶は驚きながらも深く心を寄せてくれている様子だった。


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