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この夢がきみに喰われても  作者: 葉方萌生
第四話 言葉だけで救われる

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4-4

「あれ、恵夢と結叶くん?」


 聞き慣れた声がして、はっと振り返る。結叶も同じように声の方へと顔を向けた。

 視線の先に立っていたのは里香と紗枝、朱莉だった。

 三人は短パンに色違いのブラウスというお揃いコーデをしていた。それぞれの鞄には、私が持っているぬいぐるみと同じうさぎのキーホルダーが付いている。私も持っているキーホルダーだった。いつか、四人で遊びに行った際にみんなで買ったものだ。私は咄嗟にキーホルダーから視線を逸らした。


「こんなところで何してんの? ていうかもしかして、デート?」


 信じられないものを見たという様子で里香が目を丸くする。


「そうだけど」


 先ほどまでとは打って変わって冷静な声で淡々と答える結叶。紗枝と朱莉が「は?」と同時に声を上げる。


「デートだって! うわー転校生くんを早速たぶらかしてる! 恵夢ってビッチだったんだね」


「みんなに内緒で結叶くん狙うとか、サイアク! 今度一組の子にバラしてやるよ」


 違うクラスのはずの彼女たちは、結叶が転校生でクラスの人気者だということを知っているらしい。意地悪な笑みを浮かべてねちっこい声で告げた。


「べ、別に何も悪いことしてるわけじゃないんだけど」


 私にしては珍しく彼女たちに反論した。不思議と歯向かう勇気が出ていたのだ。だがその勇気も、里香がキリリッとした目で私を睨むと同時に萎んでいく。


「あんた、私らと遊ぶのはもう嫌だからって、結叶くんと二人でデートしてんだ? 普段は陰気なくせに、男に色目は使えるんだね。この裏切り者ッ」


「……っ!」


 色目とか裏切り者とか、信じられない黒い言葉が里香の口から溢れ出るのを聞いて、胸がズキンと痛くなった。ドク、ドク、ドクンッ、と脈が乱れるのが分かる。こめかみまで痛みが伝播するようにズキズキ痛くなって、思わず両目を瞑った。


「おい、恵夢、大丈夫か!?」


 頭を押さえて嗚咽を漏らす私を心配した結叶が私の肩を揺さぶる。里香たちは何かを察したのか何も言わず私たちの姿を眺めている。


「あ、う……わたしっ」


 言葉にならない声が漏れる。発作が起きているのだと自覚した。慌てて鞄に手を伸ばして、発作を止める薬をまさぐる。けれど、普段とは違う鞄を持ってきたせいで薬を入れ忘れていることに気づいた。

 嫌だ。こんなところ、結叶に見られたくない。里香たちにも、見られたくないっ!

 

 羞恥心が全身を駆けずり回った途端、私はダッシュでゲームセンターから飛び出した。ひどい頭痛と吐き気に襲われているにも構わずに。


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