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——里香、里香聞いて。今度駅前にジェラート屋さんがオープンするんだって。部活が休みの日に行こうよ!
かつて、里香のことを「水原さん」ではなく「里香」と呼んでいた時のことを思い出して胸にずきんと刺すような痛みが駆け抜けた。
私と里香は同じバドミントン部に所属していた。
里香が部長で、私がキャプテン。
練習メニューや日程は私たち二人と、顧問の長谷先生で相談して決めることが多く、自然と二人の絆は深まっていった。もともと、小学校は違う学校だった。里香は、中学生になって初めて仲良くなった新しい友達で、バド部のみんなからも「あの二人のチーム力強すぎ」と実力を認められるバディでもあった。
だけど、里香との絆は、去年私が病気を発症してから、つい先月に部活を辞めるまでの間に、急速に失われていったのだ。
——恵夢、性格変わったよね。前は明るかったのに、なんで最近そんなに暗いの? 私、前の恵夢のことが好きだったのに。
病気になり、塞ぎ込んでいた私に里香が放った一言は、容赦なく私の自尊心を押しつぶした。けれど、里香が悪いわけではないのだ。私が里香に、病気のことを話していないから。彼女からすれば、明るく朗らかだった友達が、ある日を境に突然根暗になってしまったのだ。すっかり性格が変わってしまった友達を今までのように無条件で受け入れろという方が困難だろう。
里香はだんだんと、私から遠ざかるようになった。
バド部の別の友人と積極的につるむようになり、わざと私を一人にした。
仕方がない。
里香の行動にはかなり精神的ショックを受けたけれど、里香の心中を慮れば仕方がないことだと自分に言い聞かせる日々。瞬く間にクラスで孤立していった私は、消しゴムを落としても誰に拾われることもなく、水の中でもがくように手を伸ばす。
三年生になった今でも、息苦しさにずっと悶えたまま。神様のいたずらなのか、里香とはまた同じクラスになった。去年の春はそれがとても嬉しかったのに、今年は苦しくて仕方がなかった。里香とだけは、別のクラスが良かった。これ以上、彼女から軽蔑の視線を浴びるのが辛い。もう彼女とは関係のない人生を歩んで、ばらばらの進路に立ち、一刻も早く、心の中に棲みついている親しかった彼女の幻影を消し去りたかった。
神様はそんな私の甘えた根性を許さなかったんだ。
病気になったくらいで性格まで変わってしまう弱い私を。
卒業までの残りの一年間、自分の弱さと向き合いなさい。
そう言われているような気がして。今日も私は一人、教室の隅で怯えながら過ごしている。
いつか、病気のことがみんなにバレてしまうかもしれない。
一生友達ができずに、孤独な人生を送るのかもしれない。
それ以前に、近い将来、病に命を奪われてしまうかもしれない——。
怖くて震えながら、息を潜めて無為の一日を過ごす。
今日だってほら、ひとりぼっちで孤独な一日が始まろうとしている。