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この夢がきみに喰われても  作者: 葉方萌生
第一話 ひとりぼっちの夜

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1-10

——あ、あと一つ教えてください。夢を喰うって具体的にはどうするんですか?


 一番気になっていたことだ。医者は私の質問を受けて、「ああ、それは」と切り出す。


——専用の装置があります。患者と、夢を喰われる人の頭に装着して夢を奪うんです。もし使うことがあれば、またその時にお見せしますね。


 あまり想像はつかないけれど、頭に装置を付けるということだけは分かった。「喰う」という表現から、なんだか相手に噛みついて夢を吸ってしまうみたいな、吸血鬼的な想像をしていたのでほっとする。

 現実でそんなことあるわけないよね。

 夢を喰うという治療自体、全く現実的ではないのに、装置を使うという部分にだけ納得してしまっている。中学生の考えなんて所詮そんなものだ。


——夢への想いが強ければ強いほど、あなたが受ける恩恵は大きくなります。具体的には病気よって蝕まれてしまった寿命が延びるでしょう。でも、一つだけ注意点があります。夢を喰うと、夢を食べられた相手の方は、|二度とその夢を思い描けなくなります《・・・・・・・・・・・・・・・・・》。相手の方には同意書にサインもしていただきます。なので、相手を選ぶ際には十分にお気をつけください。


 夢を二度と思い描けなくなる。

 その言葉の意味の重大さに、私は息をのんだ。

 誰にだって、叶えたい夢や目標の一つぐらいあるだろう。

 その夢をもし、私の病気を治すのに差し出してしまったら、その人は夢を失ってしまう。

 そこまで考えた時、ふふ、と口から笑みが溢れた。両親がぎょっとして私を見る。

 仕方ないじゃん。

 だってそんな治療法、誰も試せないでしょ。

 私なんかのために、自分の夢を差し出そうなんていう人間、この世にいないって。


——分かりました。


 夢欠症の治療はほとんど絶望的だ。医者から伝えられた特効薬的な治療に期待することはできない。治療法なんてないものだと思っておいた方がいい。

 私はその日、医者の説明に納得できない様子の両親と共に、病気の進行を抑えるという薬を数種類もらって帰ってきた。

 薬は鎮痛剤や漢方薬など、他の症状でも使われるような平凡な薬ばかりで、夢欠症にピンポイントで効きそうなものはなかった。まだまだ解明されていないことが多い病気だと言っていたし、こんなものだろう。病気になってしまったという絶望感と、淡々と病気を受け入れようとする冷静な自分に辟易としていた。


 病院から帰ってきた日の夜、トイレに行こうとリビングのそばを通ると、父と母、それから受験生だった兄が集まって何やら話し込んでいるのが見えた。気づかれないようにそっと聞き耳を立てる。


——信じられないわ、夢欠症なんて! そんな病気聞いたことない。治療法だって馬鹿げてる! あの医者、私たちを馬鹿にしてるんだわっ。


——落ち着けよ母さん。確かに信じられない話だったけれど、筋は通っている。さすがに、医者が嘘をついているなんてことはないだろう。


——そうだけどっ。あなた、よく冷静にそんなこと言えるわね。


——冷静じゃないさ! 娘が変な病気にかかってしまったんだ。俺だって、ずっと胸がざわついてる……!


——父さんも母さんも落ち着いて。今日はゆっくり寝て、また明日からどうするか考えよう。


 分かりやすく取り乱す母と、表面上は母を宥めようとする父。だが二人とも気が狂いそうになっているというのは同じで、医者から直接話を聞いていない兄だけが、妙に冷静だった。

 用を済ませた私は、これ以上家族が混乱しているところを見ていられなくてそっと部屋へと戻る。その後、三人の間でどんな会話が繰り広げられていたのか分からない。翌日、「大変だけど頑張って乗り越えよう」と言ってくれた兄は目の下にクマができていた。母と父は妙に優しくなり、私は孤独になった。


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