ブンフウの過去
16年前。ヴァーメンのある上級階級の家にて。
「元気な男の子です」
「やっと生まれたわ!」
「今まで女子にしか恵まれなかったからな」
この家では、男の子に恵まれず、跡取りが居なかったのだ。やっと生まれた男の子、それがブンフウである。上級階級の上の方に生まれた男児として、とても大きな期待を受けていたのだ。しかし・・・・・・
「んまぁ!この子、属性が3つしかないの!?」
「魔力も通常の2分の1未満だ。・・・・・・一族の恥だな」
この世界の人間は、生まれて2,3歳の時に、属性や魔力を測る。その時に、正常か、異常か、はたまた不良品かを確かめる。
「不良品か・・・・・・」
「いや、まだ2歳だ。なにか変わるかもしれん」
「せっかくだから、死に際でも体験させてみるか」
ブンフウの一族は、300年前から続いていて、魔王軍殲滅に大きな功績を残した一族である。そのため、とても強く、王族からの信頼も強い。そんな一族で、「不良品」が生まれたと知られたら、一族は必ず破綻する。それを悟られないように、一族はブンフウを魔術がかかっていて、内側からは開けられない倉庫に閉じ込めた。それも、強い魔物と共に。
・・・・・・無理だよぉ。
もちろんブンフウが敵うわけがなく、ブンフウは毎日死を覚悟していた。幸い、倉庫の中は庭があるように広く、茂みなどもあったため、身を潜めて生きていった。
そして、数年後。
「えwwお前、上級のくせに属性3つだって?」
「マジウケるww」
「魔力もすくねーなww」
「能力も無いんだって?」
「うぅ・・・・・・」
ブンフウは、ある程度強くなったため、魔術学校に行くことになった。しかし、ブンフウへの仕打ちは魔術学校に行っても変わらなかった。ブンフウの精神は、みるみる削られていった。
しかし、そんなブンフウに人生をひっくり返す出来事が訪れた。どこからか頭の中に声が流れ込んできた。
「・・・・・・お前、ブンフウだろ?」
・・・・・・はい?誰ですか?
「俺は神だ。お前に能力を与えてやる。『デスプロデス』という能力だ」
・・・・・・なんですかそれ。
「最強の能力だ。魔王と王の能力を混ぜて2で割ったような感じだ」
・・・・・・それってどっちか一方の力があるってことですか?
「まぁ、そういうことになるな」
・・・・・・そんな能力もらっていいんですか?
「まぁ、お前弱いしな」
・・・・・・うぅ...
「チッ、泣くなよ。悪いのは『金色の神』なんだからよぉ〜」
・・・・・・なんですか?その『金色の神』って。
「あぁ。お前ら人間には関係ないことだ。知らないほうがいいしな」
・・・・・・へぇ〜。
「んで、俺がお前の裏人格として降り立ってもいいか?」
・・・・・・なんでそうなるんですか!?
「いや〜お前弱すぎてさ。まじでいつか『金色の神』を殺してもらわなきゃだから、協力するわ。この『黒色の神』がね」
・・・・・・えぇ〜。
「あ、そうか。名前がなかったな。・・・・・・『フンブウ』ってどうだ?お前の名前っぽくていいだろ?」
・・・・・・いや、そうじゃなくて。
「じゃ、よろしく〜」
・・・・・・えぇ〜。
という感じで、ブンフウの裏人格『フンブウ』が生まれたのであった。黒色の神から授かった「デスプロデス」は、とても強力で危険な能力だった。フッと手を振れば人が死に、焦って戻そうと思うとすぐ生き返る。それは物においても、魔族においても同じだ。それに、『フンブウ』は神なので、全属性&最強。ブンフウ自体が弱いため、フンブウとしての活動限界は短いものの、いつでも喋ることができ、ブンフウ自体も少し強くなった。それと同時にブンフウへのいじめは少なくなった。いや、無くなった。大体は「デスプロデス」への畏怖からやめたものであったのだが。
「すごい・・・・・・これなら・・・・・・」
ブンフウの気が晴れるとともに、フンブウとの絆は深まっていった。
しかし、ある日の出来事だった。それは、空気の澄み渡った空が蒼い日だった。ブンフウを含んだ学生たちが昼休みを過ごしていた時のことであった。
「大変だ!あっちの方から魔王軍が来ているぞ!」
「なんだって⁉︎」
「しかも、魔王とダールドもいるぞ!」
「なんで魔王と最強の幹部が⁉︎」
・・・・・・魔王だって?
その時、その場にいた全員が恐れ慄き、逃げ惑うように隠れ出した。
・・・・・・どうしよう?
「おい、お前。魔王倒すぞ」
・・・・・・え⁉︎なんでそうなるの?
「・・・・・・あいつは俺たち神にとって邪魔な存在だ。早く取っ払ったほうがいい」
・・・・・・はぁ...
「お前体借りるぞ。絶対に負けちゃいけないからな」
・・・・・・えぇ〜
「裏人格の時意識あるからいいだろ?別になんの支障もないぞ?」
・・・・・・はいはい。
そんなこんなで、ブンフウは魔王を迎え撃つことになった。
「ここがヴァーメンか」
「はい。ライトンから魔王様直々に支配してほしいと頼まれまして」
「フン。どうせ碌に強い奴がいないだろう」
「それはどうかな?」
「・・・・・・なんだ貴様は」
「名乗る名前などない。今からお前をぶっ殺す」
・・・・・・口遣い悪すぎでしょ。
・・・・・・いいじゃねぇか。
「よそ見すんな」
「うおっと」
魔王の重い一撃が飛んできた。
・・・・・・やべぇ。こいつ、思ったよりも強い。
・・・・・・本当に大丈夫?
・・・・・・あぁ。絶対勝つ。
「威勢だけじゃねぇよな?」
「攻撃魔術。槍嵐・極」
そう言うとフンブウは、大量の槍を出現させた。
「死ね」
「ズドン」
槍は、魔王の体に触れると、爆発した。
「これで少しは・・・・・・」
「ほぅ、こんなに強力とは」
「無傷⁉︎」
「だが、全く効かぬ。魔磨詮誠」
次の瞬間、魔王は空から紫色の物体を地面に打ち付けた。
「行け」
そして、それが魔王の声に合わせてこちらを目掛けて突っ込んでくる。
・・・・・・あれに当たったら一溜まりもねぇな。使いたくなかったけどアレを使うしか・・・・・・
・・・・・・いいのか⁉︎魔王にアレの存在が知られても。
・・・・・・ここで絶対殺すから安心しろ。
俺はブンフウにそう言うと、覚悟を決めた。
・・・・・・一発で決めてやる。
「・・・・・・『デスプロデス』」
俺がそう言うと、辺りは俺の足元から白くなっていく。
「これは・・・・・・?私の『ブレイク』に少し似ているが、白色ではないか!?」
「知らね」
「貴様・・・・・・神だな?」
・・・・・・流石に鋭いな。
「何のことだ」
「能力を与えるなら、『黒色の神』か?」
「・・・・・・」
「図星か。目的は、私か。神がお望みならば使ってやろう。・・・・・・『ブレイク』」
すると、魔王の足元から、デスプロデスよりも早く、紫色が侵食している。
・・・・・・これは、危険だ。
「神がいるなら抗いようがないな。ダールド、撤退するぞ」
「かしこまりました」
気を抜いていたフンブウの耳に、そんな会話が聞こえてきた。
・・・・・・逃がすか!
「قبضة الله، قبضة الله النهائية」
「・・・・・・は?」
「ドゴッ」
フンブウから放たれた黒いムチのようなもので魔王たちは攻撃された。取り巻きは、何人か死んでいる。
・・・・・・なんだよ、これ
・・・・・・神専用の技。
・・・・・・なんて言ったんだよ。
・・・・・・「神の拳、究極神拳」って言った。神語だね。
「魔王様!・・・・・・くっ!『ダールワープ』」
次の瞬間、魔王とその取り巻きたちは消えていった。
「うっ!」
・・・・・・おい、大丈夫かよ!
・・・・・・どうやら、反動と限界が来たみたいだ。あとはよろしく。
・・・・・・勝った・・・・・・のか?
・・・・・・いや、魔王の反応は消えていない。・・・・・・次の機会にまた殺すぞ。
「思い出した・・・・・・。貴様は魔王の取り巻きだな?」
「あぁ。そうだが?」
「お前のせいで魔王を仕留めそこねた」
「そうですか。だからなんですか?」
・・・・・・こいつ。本当に神なのか?
神ならば普通魔王様に味方することも多いはず。かの大魔王様も神であった。
「貴様、神ならばなぜ、魔王様の味方をしない」
「簡単なことだ。このままでは世界が崩壊する」
俺の素朴な疑問を神は一蹴した。
・・・・・・この世界が・・・・・・?
「だから、お前も裏切ったほうがいいんじゃねぇか?」
その言葉に一瞬思考停止していると、神の重い一撃が俺に伝わった。




