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それぞれの因縁

「少しは楽しませてくれ。ガルース様の姉よ」

「へへっ。私はそんなにやわじゃないよ!・・・・・・ガンフ流、射撃雨霰」

 私は、得体のしれない紫色の球体に向かって技を放った。

「はっ!その手は記憶で観たぞ?」

「くっ!」

・・・・・・自然すぎてあんま感じなかったけど、こいつは記憶を読み込んでいるんだった!卑怯だな。それに、対策もできるなんて・・・・・・

 次の瞬間、ダールドと思われるモヤが、人の形になった。

・・・・・・あのときも思ったけれど、やっぱり人だ。

 私は、魔王を見たことが無いからわからないが、強い魔族は人の形なのだろうか。ダールドの見た目は、20代前半の男のようであったが、一つだけ人間とは圧倒的に違う点がある。それは、両腕から紫色の靄が出ていることだ。

「次は俺だ。・・・・・・ライトハンド、60%」

 ダールドはそう言うと、左手を前にして突進してきた。

・・・・・・あ。やばっ。

 射撃や弓使い、僧侶などは、普通1人では戦わないし、かつ近距離専門ではない。というか、近距離は無理だ。つまり、こういう突進攻撃が来た時、守る術がないのだ。

・・・・・・死

「・・・・・・にたくないっ!」

・・・・・・あれをやってみる?

 ショフレは昔を思い出した。


「・・・・・・ショフレ流、鋼鉄銃壁!」

「なっ!」

 魔術学校、5年生の頃のショフレ。この時、クラス内でトーナメントをしていた。

「お前!なんで射撃なのに防御が使えるんだよ!」

「私が編み出した技だし。強いでしょー?」

 射撃一族は、生涯を自分の流派を作ることに捧げる。ショフレは、わずか10歳で自分の「ショフレ流」を編み出したのだ。そのショフレ流は、主に防御を専門としていた流派だった。

・・・・・・勇者や戦士と当たったら、絶対不利だもんね!

「ひ・・・・・・卑怯だぞ!」

「別に卑怯じゃないもん」

 ショフレは、自分の流派を作ったことが嬉しくて、家に帰ってから家族に自慢した。

「パパ、ママ。私、自分で流派を作ったよ!」

「流派を・・・・・・?」

「駄目だ!成人してから・・・・・・せめて魔術学校を卒業するまで待つんだ!」

「どうして?」

「幼いときに流派を作ると、成長するにつれ技が合わなくなるんだ。ちょっと待とう」

「えぇ〜」


・・・・・・あの時、全く何を言ってるかわかんなかったけど、今はわかる!そして・・・・・・今、流派を編み出していいことも!

「・・・・・・ショフレ流、鋼鉄銃壁」

「な!?」

 ダールドの自信満々の攻撃は、ショフレ流によって防がれた。

「言ったでしょ?やわじゃないって」

「くっ・・・・・・ボスハンド100%!!」

・・・・・・全力攻撃だね。

「ショフレ流!!彁雲反亞カウンター!」

「え」

 とてつもなく大きいエネルギーのぶつかり合いに、耳をふさぎたくなるような爆音と、まばゆい光を全身で感じた。


「ん・・・・・・」

 ショフレは気づくと、元いた荒れ果てた土地にいた。

「勝った・・・・・・ってこと?」

「そのようだな」

「!!」

 振り返ると、さっきと同じようにダールドがそこに居た。

「貴様っ!」

「おっと。攻撃しても無駄だぜ。これは、幻覚だからな。お前も手を出せないし、俺も手を出せない」

・・・・・・こいつ・・・・・・こんな芸当までできるのか?

「これで分身が一つ減ったか」

「あといくつある?」

「3つだろ。残りの仲間の数だ」

・・・・・・おかしい。

「お前、本体はどこだ?」

「さぁ?分身に紛れているとか?」

・・・・・・絶対ディスさんと対峙してそう。

 ショフレは、仲間全員の命運を願った。

・・・・・・どうか全員帰ってきますように。


 過去に苦労した人物・・・・・・といえば、この人ではないだろうか。

「ピチャン」

「ひっ!」

・・・・・・無理無理無理無理無理無理絶対無理!!!!!!!!!!!!まず一人が無理だけどこの空間も無理無理!

 このパーティーの僧侶、ブンフウであった。彼は、人混みはもちろん無理だが、一人ぼっちも駄目であった。

・・・・・・何で洞窟の中なのぉ〜?

「はぁ〜。こんなビビってんじゃ、戦うどころじゃねぇな」

「ひぃっ!誰誰誰誰!?」

「ダールドの分身だ」

「ダ、ダダダダダールド!」

「こいつやべぇな」

・・・・・・ダールド、か。

 ブンフウは考えた。ダールドは、自分が勝てる相手かどうか。

・・・・・・勝てるな。

 それは、彼の経験からの結論だった。

「お前の記憶、覗かせてもらうぞ」

「記憶・・・・・・?」

・・・・・・それだけはやめてくれ。

どうやら、助けてほしいみたいだな。

・・・・・・はぁ。またお前か。

そんなこと言うなよ。俺のお陰でおまえは生きていけたんだろ?

・・・・・・まぁ、そうだけど。

お願いされたいなぁ〜。お願いされないと、俺は出てこれないんだから。

・・・・・・しょうがないなぁ。じゃあ、お願いします。

はいよ。


「ふぅ〜」

「?」

「やっと出てこれたぜ」

・・・・・・は?

 さっきまでオロオロしていたブンフウという少年が、シャキッとしている。それに、心なしか聞いたことのある声だ。

「貴様・・・・・・?」

「あ、自己紹介が遅れたね。俺はフンブウ。ブンフウの裏の人格さ」

「裏の・・・・・・?」

・・・・・・稀だな。

 二重人格。この世界では、そんなに珍しいことではない。主に人間に多いらしいが、5歳にも満たないうちに裏人格に押しつぶされて、一つの人格に収束する。この年で、二重人格で協力して生きているのはとても稀だ。

「俺の体には、思い出したくない記憶がたくさんあるからな。先に倒す」

「あっ、そう」

・・・・・・見たくなるよなぁ〜。

 見られたくないと言われたら見たくなるのは俺だけなのだろうか。

・・・・・・最初から本気で。

「攻撃魔術、槍嵐」

・・・・・・なんだこれは。

 とても大量の槍が頭上に降ってくる。実体化しないから、当たることはないのだが。

・・・・・・実体化していないのに、位置がわかるというのか。

「よかろう。実体化して戦ってやる」

 そう言うと、俺はいつも通りに実体化した。

「『デスプロデス』」

・・・・・・これは!

 確か数年前、ヴァーメンまで魔王様にお供したときに魔王様を圧倒した固有能力だったはずだ。これは危険だ。

「『ワールド展開。読憶。』」

「は?」

 これは早く記憶を読んで、魔王様に情報を送らなければいけないと思った私は、この少年の記憶を読むことにした。

 数秒もしないうちに、俺の意識はブンフウと同化した。

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