ショフレの過去
18年前、彼女は世界で唯一、「射撃」という職業を受け継いでいる家に生まれた。
「やあっ!」
「バン!バン!バン!」
「すごいわねぇ〜。ショフレちゃんは」
「ショフレこそ、この一族の跡取りだ」
3歳になった頃、彼女は上級で、かつ魔力が多かったので、攻撃に使う「銃」も容易に作成できたし、才能もあった。何より、両親に褒められるのが嬉しかった。しかし、その当時嬉しかったことはそれだけではなかった。
「わー!生まれた!」
同じく3歳の時、彼女の弟が生まれたのだ。
「ママ、名前決めてる?」
「えぇ。名前は、ガルースにしようと思うの」
「へぇ〜かっこいいね!」
彼女は、ガルースは自分の生まれたときの魔力よりも少なく、大して才能もないだろうと言われていたので、特にその面では気にしなかった。
ガルースが2歳になったときだった。
「ママ。じゅうってこうやってだすの?」
「そ・・・・・・そうよ。すごいじゃない」
彼の魔力は爆発的に増えて、才能もショフレを超えたのだ。
・・・・・・どうしてなの!?あんなにかわいがってあげたのに!
しかし、両親は決してガルースを贔屓しようとはしなかった。両親とその一族は、異変に気づいていたからだ。
「・・・・・・最近ガルースから、邪悪な気を感じるのは気のせいかしら?」
「気のせいじゃないと思うよ。・・・・・・2歳でできるのはおかしい」
この世界では、稀に「邪悪な力」を持って生まれる子どもがいる。その力は、人間に反する力であり、魔王を幇助する力だ。その子どもは、すぐ処分するか、手に負えなくなったら勝手に魔王のところに行く。
「・・・・・・2歳で魔王のところに行くと聞いたことがある。早めに殺してしまわなければ」
そう言ったのは、子どもがいないおじだ。
「あなたは子どもがいないから分からないでしょうけど、そんなことできるわけ無いでしょう!?」
姉である母親が反論した。
「じゃあ、僕がやるよ」
「駄目よ!それに、まだ『邪悪な力』を持った子だとは限らないじゃない!」
「ねぇママ。何してるの?」
「ガルース!」
時刻は10時。ショフレは起きていたが、ガルースはもう寝ている時間だ。
「僕はどこにも行かないよ?」
「そうよね!?そうよね!?」
みんなが、ガルースを信用していた。なぜなら、もうガルースから邪悪な気を感じなかったからだ。おそらく、ショフレにしか見えていなかったのだろう。ガルースが、ショフレに向かって邪悪な笑みを向けた。
それから数年、つつがなしく日々を過ごしていた。しかし、ショフレが16歳、ガルースが13歳になったときだった。その時には、すでにショフレは勇者ランキングで上位に君臨し、すでに実績を上げていた。
「ガルースは本当に勇者ランキングに登録しないの?絶対上位に行けると思うんだけど」
この世界では、13歳になったときから勇者ランキングに登録できるのだ。
「うーん。僕はいいかな。だって・・・・・・」
次の瞬間、家が吹き飛んだ。
「え・・・・・・?」
ショフレは何が起こったのか瞬時に理解できなかった。ただ一つ―――ガルースからとてつもなく強い邪悪な気を感じることだけは分かった。
「ガルース・・・・・・?どうして・・・・・・」
「ははは。みんな馬鹿だね。あの時すぐ処分すればよかったのに。もう僕は立派な魔王様のしもべだよ」
ショフレは、家族を、ガルースを、自分自身を責めたくなった。
・・・・・・私は、私はガルースの姉として失格だ。
一族よりも、両親よりもずっと側にいたはずの弟を守ることができなかった。
・・・・・・ならばせめて、自分の手で。
「ガンフ流、射撃雨霰」
ショフレは一瞬で両手に銃を出現させ、魔力を流し込んで、弾を発射させた。しかし、放った球はガルースに届く前に溶けてしまった。
「何で・・・・・・?」
「ははは。終わりだよ」
次の瞬間、大きな衝撃波がショフレを襲った。
「ぐっ・・・・・・」
ショフレは、抵抗する術もなく、意識が暗転した。
もう脈もないと言われていたが、奇跡的にショフレは生還した。
・・・・・・あの時以来、私は絶対強くなってガルースを自分の手で倒すって決めたんだ。
それからというもの、私は、色々なところで経験を積んで、力をつけてきた。
「貴様の記憶見させてもらったぞ」
・・・・・・記憶が見られるのか?
「ほぅ。貴様は、あのガルース様の姉か」
「ガルース・・・・・・様?」
魔王軍の中で魔王の次に強く、身分も高いはずのダールドが「様」を付けるのはおかしいのではないか。
「あぁ。四天王の中のひとりだ」
・・・・・・四天王!?
新しい存在に驚愕しつつ、そこまでガルースが上り詰めていたことに腹が立つ。
・・・・・・その強大な力を魔王のために使うなんて!
「ガルース様は、大嫌いな姉をご自分で殺したことをとても悦んでいましたよ。・・・・・・生きていますが」
・・・・・・は?マジ許さん。
ショフレの心に火がついた。あの時、一命をとりとめたが、死んではいない。その勘違いにすら、ショフレはムカつく。ショフレはキレ性なのだ。
「まずお前から、だ」
ショフレは本気モード。今の彼女を止められるものはもう誰もいない。
「少しは楽しませてくれ。ガルース様の姉よ」




