ディスとリリィ
私は全力を解放した。いつもはかなり、力を抑制しているので普段の5倍くらい強くなる。あの頃に戻ったみたいで少し嫌だが、こいつを倒すには手段を選んでいられない。
・・・・・・実のところ、お父様・・・・・・魔王に力を封印されて、5分くらいしか体が耐えられないのだけれど。
私がなんとかしなくちゃいけない。そんな正義感が、私を奮い立たせる。
魔族及び魔法使いは、飛行できる技術を持っているので、私とヴァンピエオの戦いも当然空中戦になっている。
「すぐ終わったら、許しませんよ?・・・・・・魔架釜死魏」
「え?」
次の瞬間、ヴァンピエオの魔力が10倍以上になった。
・・・・・・魔王を超えている?
流石、最強の刺客だ。でも、絶対に負けない。
「永久凍土・・・・・・エクストラ!!」
私は、ヴァンピエオを殺すつもりでたくさんの氷塊を放った。
「おっと。危ない」
私の氷塊は、軽いから、簡単に浮かすことができるが、ヴァンピエオが宝石にしてしまえばすぐ落ちてしまう。
・・・・・・相性最悪か・・・・・・。
そう思いながらも、ヴァンピエオをみんながいる城の方から放していっている。今のところはまだみんなのところには飛んで行ってない。
・・・・・・ん?ディスがいない・・・・・・?
ディスがいなくなっている。まさか、宝石化を抜けたというのか。
「ぐわぁっ!」
「!!」
よそ見をしていたら、ヴァンピエオがうめき声を上げた。よく見なくても、そこにはディスがいた。
「ディス!」
「貴様、どうやって抜けた」
「なんか意識があって、口が動くようになったから、抜けた」
「な・・・・・・!なんという自我の強さだ!」
「どうも」
・・・・・・頼もしいなぁ。
今だけ・・・・・・じゃなくても心強いな、と私は思う。
「能面シールド!」
「え?」
「いや、ヴァンピエオ。もう少しで爆発するよ」
「あ」
「ドカアアアアアアアアン!」
・・・・・・呆気な!呆気なすぎるでしょ!
「最強の刺客とやらも、大した事ないな!」
・・・・・・多分貴方が滅茶苦茶強いだけよ。裕志君。
ディスの発言に苦笑していると、目眩がしてきた。
「あ・・・・・・」
「理吏!」
私は、体から力が抜けて空中に放り出された。それを当然のようにディスが受け止める。
「・・・・・・ディス?」
「もう何も言うな。理吏」
「・・・・・・今、理吏って言った?」
「あぁ」
「・・・・・・話、聞こえてた?」
「もちろんだ」
・・・・・・やばいめっちゃ恥ずい。
「・・・・・・なんか、ごめん」
口に出さなくても、ディスにはわかったようだ。顔が赤かったかな?
「全部、バレちゃったね」
「でも、いつかはバレるだろ?今で良かったよ。ていうか、今は無理すんな。限界、近いんだろ」
「・・・・・・寝ていい?」
「もちろん」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
私は相当疲れていたようだ。まるで魔法にかかったみたいにすぐ意識が落ちた。
・・・・・・はぁ、終わったな。
本当に間一髪だった。リリィは気づいていなかったようだけど、よそ見をしていた時、ヴァンピエオは、とんでもない攻撃をしようとしていた。あれを食らったら、一撃でノックアウトだった。
・・・・・・実力で勝ったわけではない。不意打ちが成功しただけだ。
過信してはいけない。それは、ゲームをしていたときにも大事にしていた言葉だ。今でも大事にしている。
・・・・・・しかしなぁ。
リリィとの関係性がおかしくなりそうだ。頭がパニックになる。
「おーーい!ディス!」
むむむ、と考えているとユタの声が聞こえた。どうやら、ヴァンピエオを倒したことで、宝石化が解けたようだ。元いた場所に仲間たちの姿が見える。俺は急いで仲間の場所に戻った。
「おまえら大丈夫か?」
「お前こそ、戦ってただろ。最後しか見えてないけれど」
逆にユタに心配されてしまった。
「なんか、自我が強ければ、動けるらしいぞ」
「お前強すぎだろ」
・・・・・・俺そんな強いっけ?
自己主張は弱いぞ、と自分の心の中で呟いた。
「ってか、リリィは?どうなったんだ?」
ユタが心配そうに言う。
「・・・・・・後で二人で話そう。他のみんなは、今日は解散だ。数日後には闇の幹部を討伐するから準備を怠るな」
そう言って、俺達は解散した。
「・・・・・・で、話とは何だ?」
王様に頼んで、絶対に誰も近付けない防音バッチリの部屋を借りて、俺はリリィと理吏のことについてすべてを話した。
「・・・・・・本当か?信じられないが」
「俺達が転生したことと同じだぞ?」
「あぁ、そうだったか」
部屋の中に何故か沈黙が広がる。
・・・・・・気まずいな。
「それを考えたうえで、お前は、リリィと・・・・・・」
「黙れ」
俺は、ユタが喋ろうとしたことを一蹴した。
「リリィがいつ起きるか分かるのか?」
「ダールド戦までには起きないと思う。本人自体、ダールドにいい思い出がないようだし、連れて行く気はないな」
「4人だけってことか。・・・・・・かなりきついな」
そうだ。リリィはかなり強いため、幹部戦ではかなり重宝していた。しかし、リリィがいない今回はどうするのか。最強の幹部に勝てるのか。
「ってか、お前。なんで倒れないんだ」
「あ」
たしかに俺は、特別必殺の合せ技を使ったはずだ。倒れるを通り越して死んでしまいそうだ。
「・・・・・・成長?」
「そうなんか?」
・・・・・・特別必殺に関しては、魔力を使っている感じはないんだよな。
「ってか、さっきから目眩がする」
「あぁ〜。お前それ、特別必殺ってやつは体力を消耗するんじゃないのか?それもぶっ倒れるくらいの」
・・・・・・なるほど。それなら合点がいく。
「今までぶっ倒れてたのは、使う前にかなり体力消耗してたからで、今日は温存してたやん?」
・・・・・・頭いいな。ユタって。
ユタって、偏差値70くらい余裕で言ってた気がする。ゲームの上手さと頭の良さって比例すんの?
・・・・・・これに関しては、頭の良さ関係なくね?「頭の良さ」と言うより「頭の回転の良さ」が比例すんだろ!?
それに関しては、思考放棄。それよりも大事なことがある。
「体力を付けたら、永遠に使える・・・・・・ッテコト!?」
「多分、そういうこと」
・・・・・・たくさん使えたら、ダールドなんて敵じゃねぇ!
ダールド戦までの数日間、俺達は、二人でアホみたいに修行した。
・・・・・・絶対勝つ!
「・・・・・・」
名もなき国の幹部、ダールド。
「もう少しで来るな。・・・・・・楽しみだ」
彼は思った。奴らは、彼の本気をぶつけるに値する奴らだと。
「今まで力を制限していたからな。楽しませてくれよ?」
彼の実力は、まだ知られていない。
数日後。俺達は、リリィなしの4人で名も無い地(読み方がないだけ)に向かった。ディスたちの目に写ったのは、荒れ果てた地だった。
「これはひどいな」
「・・・・・・幹部戦が終わったら、僕が癒やしてもいいですか?」
俺がつぶやくと、珍しく何も言わないブンフウが発言した。
・・・・・・そんな便利な能力なのか。
「頼んでもいいか?」
「もちろんです。あまり活躍する機会がないので・・・・・・」
そんなこんなで、少し歩くと、急に大きな気を感じた。
「これは・・・・・・?」
「よくぞ来たな。勇者たちよ」
そこに現れたのは、人だった。かなり遠くにいるから、顔などは確認できないが、声は耳に響いてくるし、確かに人の形をしている奴がダールドだと能面が理解している。しかし、魔王軍特有の禍々しい気を感じる。
・・・・・・サークルよりも人に近いのか・・・・・・?
「待ちわびたぞ。・・・・・・『展開、ワールド』」
「!!!」
ダールドがそう言った瞬間、世界が黒く包まれた。
「え?」
「俺は、強さで人を選ぶんだ。個人個人見させてもらうぞ」
「・・・・・・」
暗い。周囲がとても暗い。でも、本当の問題はそれじゃない。一人であることだ。
・・・・・・射撃の一族は、基本的に人と群れてるから、人がいないと淋しいんだよっ!
彼女、ショフレ自身も、一族もそうらしいのだ。このパーティーに入る前も、強いパーティーに入っていた。基本的に一人なことはないのだ。
「一人は怖いか?」
「ひっ!」
急に明るくなって、何かが現れた。
・・・・・・うわわわっ!人?じゃなくてダールド・・・・・・?にしては、気が小さい?
「我はダールドの分身なり」
「分身・・・・・・?」
「お前の力、見せてもらうぞ」
・・・・・・私なんて。
次の瞬間、不意に過去の記憶が浮かんできた。




