リリィの過去
「・・・・・・さて、完全に宝石化したな」
「・・・・・・帰って」
「嫌ですよ。今日はあなたを連れて帰りに来たのですよ。魔王様の一人娘、リリィ様」
・・・・・・うっ!
「覚えていないとは言わせませんよ。さぁ、帰りましょう」
・・・・・・思い出したくないっ!
16年前。
リリィは、魔王の娘として生まれた。毎日毎日修行漬けでヘトヘト。だが、彼女は努力し続けた。
12歳になった頃、リリィは氷の幹部になった。
・・・・・・お父様の期待に答えたい!
その当時はそれ一筋で生きていた彼女。最強の幹部だった。
2年後。
「お前が、氷の幹部・・・・・・」
「そうよ、だからどうしたの?」
ある日突然、能面をかぶった男がリリィの前にやってきた。そして、その男はとてつもなく強かったのだ。
・・・・・・強っ!
リリィは敗北した。魔王にも引けを取らない強さだった彼女が初めて敗北したのだ。
「っ・・・・・・!殺せ」
「・・・・・・君はとても強い。まだ変われる。俺がいた国のヴァーメンで引き取ってもらえ」
「・・・・・・」
彼女はボロボロに敗戦したので、抗うすべもなく連れて行かれた。
「これは・・・・・・氷の幹部じゃないか!でかしたぞ、勇者ディス」
彼女を破った勇者の名は、ディスと言った。
「・・・・・・彼女はとても強いので、国王の養女にすればよいのでしょうか」
「ふぅむ。一理あるな」
そんなこんなで、勝手に話が進んでいき、結局、ディスが魔王を倒したあとに国民の記憶を消して養女になるらしい。
・・・・・・屈辱だわ。
結局、勇者ディスは、魔王を討伐したあとには帰ってこなかった。
「くっ・・・・・・!勇者ディス!こうなったら、私自身もろともの記憶も消してやるっ!」
・・・・・・へ?
意味がわからなかった。次の瞬間、世界が白色に包まれた。
「・・・・・・あれ?私...」
目覚めると、リリィの記憶は「国王の娘」のものに書き換えられていたのであった。
それから二年間、表面上「国王の娘」として取り繕い、ヴァーメンのために戦うにつれて、みんなは忘れている「氷の幹部」や「勇者ディス」の存在も思い出せるようになってきた。
・・・・・・嫌だ。
自分が「国王の娘」ではなく、「魔王の娘」だということを自覚するたびに、彼女は自分自身に失望した。自殺を図ってみたこともあった。しかし、彼女の強さ所以死ぬことはできなかった。
ある日、茂の幹部グラグロを討伐に行ったときだった。
「これはこれは。魔王の一人娘、リリィ様じゃないですか」
「・・・・・・貴方誰?」
「あれ・・・・・・?覚えていらっしゃらないのですね。あんなに魔王様に可愛がられていたのに・・・・・・」
「うるさい!」
「おっと。魔王様の命令で、リリィ様対策はバッチリですよ」
・・・・・・また負けた!?
あっけなく、リリィはグラグロに捕まった。
「出てきてくださいよぉ。リリィ様ぁ」
・・・・・・嫌だっ!
彼女は、閉じ込められた部屋の扉を氷で固めた。誰も入ってこれないように。
・・・・・・別に何も期待してないから!
「こうなったら・・・・・・道連れに・・・・・・」
グラグロの叫ぶ声が聞こえる。
・・・・・・誰と戦っているの?
それから少し経って、誰かの足音が聞こえた。
・・・・・・人間・・・・・・?勇者が来たの?
「フンッ!」
次の瞬間男が現れた。
「だっ、誰?」
「俺だ。勇者ディスだ」
その男の声と名前は聞き覚えのあるものであった。
「勇者?勇者様が来てくれたのね?」
「あぁ。もう大丈夫だ」
「ありがとうございま・・・・・・」
霧が晴れた。実は、私は能面の下が見えるのだ。
「だっだだだだだだだだだだだ誰えええええ???????」
その男の顔は、記憶の中の勇者ディスの顔とは全く違ったのだ。
「だから・・・・・・」
「そそそそそそそその物騒な能面を取っていなさいよおお?」
能面自体を取ってほしいのではなく、正体を明かせ、ということだ。
・・・・・・誰よ。あの男。
でも、でも、なんだかとても懐かしい気分に浸ってしまうのだ。
・・・・・・落ち着く。
思い出したいのに思い出せない。一体彼は何者なのだろうか。
その日の夜、ある夢を見た。
私の名前は、坂野理吏。小学六年生。好きなことはゲーム。友達で幼馴染の何口裕志くんと沢村幽太くんと一緒に毎日放課後にゲームをして楽しんでいる。
・・・・・・幽太くんは、トッププレイヤーだから勝てないけど、裕志くんにならまだ勝てる!
何年も前から二人とはゲームをしていた。その中で、いつしか、裕志を好きになっていたのだ。
「今日もかっこよかったなぁ〜」
そんなことを今日も寝室で呟いていると、
「強盗だ!金を出せ!」
・・・・・・何事!?
一階で声が聞こえた。
「ここに女がいるぞ!」
・・・・・・見つかった!
ゲームの中では強くても、現実ではか弱い女の子だ。
「おらっ!」
すごく硬い金属のような物体で私は殴られた。
・・・・・・痛いっ!痛いよ!やめて!
「うっ〜」
「大丈夫ですか?リリィ様」
側仕えに起こされて、私は目が覚めた。
「・・・・・・少し、悪い夢を見て」
「それは辛かったですね。どんな夢を見たのですか」
「・・・・・・誰かに無抵抗に殺された夢?」
「そうでしたか」
側仕えも真摯に聞いてくれるが、私はそれよりも、伝えたい人がいる。
・・・・・・昨日の人、夢の中の『何口裕志』って人にそっくりだった。
そう思った瞬間。
「うっ!」
「リリィ様!」
頭がズキンと痛み、なにかの記憶が頭の中に入ってくる。
・・・・・・これは、さっきの夢?
・・・・・・痛いっ!痛いよ!やめて!
理吏は何の抵抗もできずに、死んだ。
「ここ、どこ?」
気づいたら、周りが淡く光る部屋に理吏はいた。
「驚いた。自力でここに来るものがいるとは」
「あなたは・・・・・・?」
「私は神だ。それよりも、貴方はこの先どうなりたい?女性だから、姫ですか?」
「待って。全く状況が掴めないんだけど」
「それもそうでしょう」
「じゃあ説明して」
「貴方は、日々神が創りし最高傑作で遊んでいますね。確か、人間界では『ゲーム』と呼ばれているらしいですが」
「あっ、ハイ」
「ならばその知識で、異世界転生してみませんかというお誘いです」
「はぁ・・・・・・」
理吏はとても迷った。とても素敵なお誘いだが、何らかのリスクがあるだろう。
「・・・・・・断ったら、」
「断ったら、天国行きです。もう何もできません。ゲームも・・・・・・」
それは困る!!
「やりますやります!」
「わかった。食いつきが早いな。・・・・・・貴方には魔王の娘になってもらいます。心証はあまり良くないから、記憶も消しますね。程よい時間経過で戻りますよ」
「え」
「それではいってらっしゃい」
「・・・・・・ィ様、リリィ様」
ふと、我に返った。ここはヴァーメンの城だ。
・・・・・・嘘か真か・・・・・・。
リリィは、それを信じてみることにした。
「・・・・・・昨日の勇者を呼んで。いますぐに」
「かしこまりました」
「・・・・・・そういうことだから。帰って」
「話長いなこの王女」
「もう一回言ってみ?」
「・・・・・・」
宝石になりながらも、ディスは話を聞いていた。なぜかわからないが、頭の部位だけは使えたのだ。そして、ヴァンピエオの言う通りだが、話が長いな。うん。
・・・・・・まさか、理吏がリリィだったとはな。
想像もつかなかった。転生者がまだいたなんて。色々驚いたものだ。能面の下が見えたとか。
・・・・・・ん?なんか、宝石にひび入ってないか?
すると、リリィの声が聞こえた。
「・・・・・・というわけで、貴方を倒す!」
「私も決して弱くはないですよ、リリィ様」
「・・・・・・『解放』」
「!?」
その瞬間、リリィの髪の色が、紫色に、瞳の色が水色になった。
「素晴らしい!これこそが本当のリリィ様だ!」
・・・・・・なるほど。もともとはこういう姿だったのか。いかにも、魔王軍という感じだ。
もともとは、ただのゲーム好きの幼馴染なのだが。
「この力、今は長く使えないから、早めに行くよ!」
「リリィ様を屈服させて絶対につれて帰ります」
・・・・・・参戦したい。
そう思ったのは一瞬だった。俺は素朴な疑問をいだいた。
・・・・・・え?時系列ごっちゃじゃね?
理吏が死んだのは、俺の世界で2年前。なのに、リリィが生まれたのは、こっちの世界で16年前。
・・・・・・???
まぁ、わからないが。頭を使うのは苦手だ。勉強はできたけど。
・・・・・・お?口が動きそうだ。
口が動くならば、あいつを俺の手で殺せる。この体をまとっている宝石を壊すつもりで。ヴァンピエオを殺すつもりで、俺は集中した。
周りの声も、集中していれば聞こえない。どれだけ時間が経ったかわからない。俺は小声で言った。
「能面式殺戮殺法・・・・・・流転能面」




