転生前
「・・・・・・で、あんたは誰なんだ?」
俺は、周りが真っ白な空間で、声に向かって聞いた。
「・・・・・・答える必要はない」
「はぁ?どういう意味だよ?俺は知りたいんだよ!」
「・・・・・・知ったら損をするぞ」
「損などしないさ」
どうやら話によると、そいつは神だそうだ。よく、異世界でも生きていけそうな人間を見つけ、異世界に送り込んでいるそうだ。そいつが死んだら、次の奴を見つけるそうだ。
・・・・・・道理で俺が選ばれたわけだ。
送り込まれる人間は、みなRPGゲームの猛者らしい。ちなみに、ずっと生き延びた奴はいないそうだ。
「・・・・・・で、これは帰れるのか?」
「もちろん、帰れない」
図星だ。それも想定の範囲内だ。
「じゃあ元の世界の俺はどうなる?」
「・・・」
急に神が黙った。
「おい、」
「死んだことになる。というか、もう最初からいない設定になる」
それは困る。だって、俺が塗り替えたゲームのRTA記録もなくなるし、俺が作ったゲームも、俺が苦労してテッペンに行ったゲームの記録もなくなるってことじゃん。のおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。
「心配するな。お前が望んだ異世界はすぐそこだ・・・」
そういった瞬間、目の前に何かが浮かび上がった。ゲームでよく見る設定の画面に似ている。
「それで、お前の設定を選べ」
そんな嬉しい機能があるとは。俺は嬉々として選んだ。
俺が好きで毎回選んでいるジョブ。それは、勇者だ。
・・・・・・なんてったってかっこいいし、ザ・王道みたいな感じが良いんだよなあ〜
それから諸設定を終え、
「転生後の世界は、異世界転生者に敏感だ。まず顔が違うからな。すぐ殺されてしまう。・・・・・・だが安心しろ。そんなお前に顔を隠すアイテムもやろう。そのアイテムにちなんだ、技も与えてやろう」
それは助かる。殺されたくないし、最初から技があるのはありがたい。
「では行くぞ・・・・・・」
その瞬間、俺の顔に何かがついた。なんとなく、心做しか視界が狭まったような・・・・・・
「ビビッ、アイテム『能面』を装着しました」
「へ・・・・・・?今なん・・・・・・」
「では行って来い」
「うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
そこで俺の意識は途絶えた。