ライトン
この世界の人間には、属性の他に、「能力」が備わっている。
例えば、国王。「クリエイト」といい、何でもかんでも作り出すことができる。
他には、魔王。「ブレイク」で、何でもかんでも破壊することができる。
これらの能力を持った二人が対立したのが、魔王と国王の対立の始まりだったのだ。
もちろん、代償はつきもの。「クリエイト」を持つものは、何かを作るごとに、寿命が縮まる。「ブレイク」を持つものは、何かを破壊するごとに、寿命が伸びる。すなわち、国王が代替わりするのとは逆に、魔王は一生君臨しているということだ。
ちなみに、俺の能力は「能面」、そのままやん。どういう能力かというと、防御が弱くなる代わりに能面の結界を張れる。実際のところ、能面の有無はどうでもいいのだ。ついでに、リリィの能力は「アイシング」氷で傷を癒すそうだ。なんとも彼女らしい。
「・・・・・・で、リリィはなんで旅に出ようと思ったんだ?」
今まで話し相手がいなくて寂しかったからか、話が盛り上がる。
「・・・・・・そうね。この国を救いたいと思ったからかしら?そういうディスはどうなの?」
「俺はもちろん、この世界にあこがーーー」
ん?これ言っちゃダメじゃね?
「え?何?この世界に?」
「こここここの世界を救った俺に憧れて欲しいなぁって思って・・・」
「まぁ!素敵ね」
・・・・・・とっても嬉しい。話し相手いるし、美女だし。
本当のところ、リリィは15歳だそうだ。意外に若かった。
・・・・・・転生前の俺が14歳だから、負けてる⁉︎まじか、ショック。。。
まぁ、このディスは20歳の設定だからね。一応勝ってるよっしゃあああ。
なんやかんやで俺とリリィは仲良くなった。よかったマジで。
「ーーーーーーっ!」
リリィが何かに気づいたようだ。
「なんだ⁉︎」
「敵よ!警戒して!」
次の瞬間、目の前に大きな物体が見えた。
「うおっ!」
「”アイス”・・・・・・アイスシールド‼︎」
「パキン!」
氷の壁ができ、物体がぶつかった。
「今の内に、逃げよ!」
「いや、もう遅い」
「ピキピキピキ」
まずい。このままじゃ確実に死ぬ。
「能面式殺戮殺法・・・・・・茂廻‼︎」
俺はすぐさま蔦を出し、それを自在に操る。
「いけぇっ!」
「ドゴオオオオオ!」
「ライイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!」
その物体から声がした。もしかしてこれが・・・・・・
「もしかして、この丸っこいのがライトン?」
俺が言う前にリリィが言った。
・・・・・・名前と形からして、豚かな?
豚だったら、突進してくるのも分かるし、名前の由来も納得できる。
「痛ってぇな」
霧が晴れて、姿が見えた。
・・・・・・ぶ
「マジで痛ったいトン!」
・・・・・・たじゃなあああああああああああああああああい?
それは、アルマジロだった。
・・・・・・なぜそうなった。
「とても、トンテンに似てますね...」
「トンテンって何っ!」
「とっても可愛いですよ。丸くて、突いたら丸まって、可愛くて・・・」
どうやらこちらの世界でアルマジロのような生物はトンテンというらしい。リリィは、飼っていたことがあるらしい。
・・・・・・あくまで観賞用だけど、死んだら肉を食べるってマ?残酷すぎん?
異世界転生あるある。命の扱われ方が軽い。
「喋るトンテンって・・・可愛すぎませんか!」
・・・・・・あんたの方が可愛いよ!
んなこと考えてたら、
「許さないトン!硬皮奥義、大爆発!!」
ライトンはそういうと、空高く跳ね上がった。
「やべぇ!これはやばいぞ!」
・・・・・・どうすればいい。どうすれば・・・
その瞬間、俺は誰かの言葉を思い出した。
「・・・・・・やっぱり、上空に跳ね上がった敵を、跡形も残さず倒すには、もっと上空に上げ、宇宙まで持っていけばいいと思うんだよね」
プロゲーマーの、栄岩加奈子さんの言葉。俺が「跡形も残さずに敵を殺せ」っていう任務に苦戦した時に見た映像だ。
「そうすれば、地上には何も残らないし、敵も殺せて一石二鳥!まさに最高だね」
・・・・・・あぁ、なるほどな。
「能面式殺戮殺法・・・・・・起流!」
「ヒューーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
俺は、渦を纏って上に上昇した。
「ほいで、能面式殺戮殺法・・・・・・草草無天!」
「〇〇無天」。その技の究極奥義のようなものだ。魔力をかなり消費するので、普段使いはできない。魔力が多い方らしい俺でも、一度に一回までしか出せない。
「やあああああああああああああああああああああああああああ」
「トン⁉︎なんだお前!」
「ガチン!」
ライトンが空高ーーーーーーーーく舞い上がった。その勢いで、大気圏突破。
「はいどんどん行きましょう。悪」
ズパパパッと悪の斬撃を宇宙空間で喰らわした。
「トンっ」
「まだ耐えるのか。でも、これで終わりだ。能面式殺戮殺法・・・・・・能!」
「遅いなぁ、ディス」
私は、唯一の仲間ディスの帰りを待っていた。
「はぁ・・・今日もうまくいかなかったな...」
実は私、勇者ディスに恋をしているのだ。助けられたことが嬉しくて、でも恥ずかしくて、あの時はあんな態度をとってしまった。
・・・・・・さすがにこれ以上は迷惑だよね?
ディスは、能面を被っていて表情が全く見えないので、感情を読み取ることができない。だから、私のことをどう思っているのかなんてわからない。
・・・・・・嫌われてなければいいな。嫌われていたら、私、私...
そんなことを一人で考えていると、何かが落ちてきた。
「ドスッ」
「⁉︎」
なんと、落ちてきたのは、ディスだった。当然だけど。
「負けたの・・・・・・?」
「いや勝った。ほら、魔石だ」
ボロボロだったが、その手には確かにライトンの魔石があった。
・・・・・・良かった。
「倒せたのね。良かった。・・・・・・でも、私全く活躍していないわ」
「そんなことない。君は、すかさず俺を助けてくれただろ?それだけで十分だ」
私は、できるのが当たり前だと昔から言われてきたので、こんなに褒められて、感謝されるのは初めてだ。好きな人だし。もうそれだけで胸がいっぱいになった。
「・・・・・・あ」
「ごめんリリィ。一週間くらい寝込むから、後はよろしく」
お礼を言おうと思っていたのに、そのまえにそんなことを言われた。
「・・・・・・え?え?」
「本当に・・・・・・ごめ」
そこで、ディスの意識が途切れたようだ。眠ってしまった。
・・・・・・どうしよう。
私の気持ちはどうしても抑えられない。溢れ出してしまいそうだ。
・・・・・・今ならバレないよね。
そう思うと、とっさに私は彼の口に唇を近づけた。
「ん・・・・・・」
またまた、雨の音で起きた。またまたでもないな。なんか俺はリリィに膝枕されていた。
「起きましたか?ディス」
そういうリリィはとても笑顔で幸せそうだ。でも、俺はちょっと慣れていないから嫌だ。
「・・・・・・リリィ、申し訳ないが、下ろしてくれるか」
そういうと、リリィはこの世の絶望のような顔をした。そして、泣き出しそうになった。
「ごめん!そんなつもりはなくて・・・。俺自身こういうの慣れていないから・・・」
「・・・・・・いいんです。どうぞ、下りてください」
・・・・・・よくないでしょ絶対。
そんなことを思いつつ、俺は下りた。そうすると、リリィはいろいろ話してくれた。
「ディスが倒れたから、急いで城に帰ったら、大丈夫だって言われて...。心配だったんだけど、ちゃんと今回のことは報告したよ」
「良かった。ちなみに次の任務は?」
「・・・・・・ちょっと中央に調査に行くことになったの」
「ナンダト!?」
どうやら、幹部2体を討伐した功績を買われて、魔王の支配地の中央に調査に行くことになったらしい。
「・・・・・・魔王」
おそらく魔王は、とてつもなく強い。俺以外の転生者は、幹部ではなく最初に魔王に挑んで爆死したらしい。
・・・・・・相当強そうだ。
妙な胸騒ぎがする。なんだかそれを急かすように木々が揺れ、鳥は木々の葉っぱを落とすように飛び立った。




