何口裕志と言う少年
生き涯はわざとです。
「ゲーム」。それは裕志にとって生き涯だった。
何口裕志。14歳、中学2年生。かろうじて学校に入っているが、帰ってきたらゲーム三昧だ。朝起きて、ゲームして、学校行ってゲームして、寝たと見せかけて夜な夜なゲームして・・・。
「ゲーム」。裕志は特に、RPG・・・・・・冒険をして最終的に魔王を倒すオンラインゲームが好きだ。なにより、楽しい。とにかく楽しい。知識を蓄えて、相手を倒していくたび、世界を救っている実感が湧く。
そんな俺だが、成績はまあまあいい。勉強なんてゲームに例えたら楽勝だ。
そんなある日の夜だった。その夜もゲームをしていたのだが。
「何口裕志、何口裕志だな?」
頭にそんな声が響く。
「其方、異世界転生を望むか?」
・・・・・・異世界転生。
それは何より裕志の好きな言葉だった。
・・・・・・だって、ゲームの世界に入り込んでプレイできるってことだろ?最高じゃん!
ゲーム三昧だが、異世界転生の本は読む。俺の憧れる世界だったからだ。
「其方の行動を見させてもらうぞ。いつも通りで良い」
はい、お願いしますっ!と答える前にその声は聞こえなくなっていた。
・・・・・・何だったんだ。
次の日、そんな言葉は気にせずにいつもと変わらぬ日常を送っていた。
その夜、その声は再び現れた。
「其方の行動見させてもらったぞ。・・・・・・いいだろう。異世界転生させてやる」
・・・・・・へ?何が良かったんだ?
今日一日ゲームをしていたことしか記憶にないが。まぁ、嬉しいから喜んだ。心の中で。
「だが、気をつけろ。転生先の世界は極めて危険だ。あと、異世界転生者とバレたら、お前の命はない」
ふむふむ、と頷いた。こう見えて、ゲームの説明など聞かずに突っ走るやつだと思われやすいが、ゲームの説明はちゃんと聞かなきゃ。その他の注意点も聞いたあと、最後にその声は言った。
「楽しめ、全力で」
はぁ?と思っていた瞬間、目の前が暗転した。