Deviance World Online ストーリー2『Ⅻの難行、獄獣の難行』
扉を潜った黒狼は、一息ついた途端に即死した。
「は? ちょい待ち?」
慌ててスポーン時間を確認し、7秒と表記されているのを見て安心する。
ならば死んだ原因は明白だ、光属性がその空間に充満していたということ。
死ぬまで3秒ほど猶予がある以上、その瞬間にダークシールドを展開すれば対応可能と言えるだろう。
「3、2、1、『ダークシールド』!! よし!!」
復活と同時に魔法を展開、光属性を防ぐ。
だが流石にレベルダウンした光属性耐性(反転)を軽く貫通する光量は、流石のダークシールドでも即座に耐久値が減っていく。
だが、流石にこういう事は何度も経験した。
インベントリからあらゆるモノに対する耐性を保有する毛皮こと獅子の皮を取り出し、顔以外を完全に覆う。
流石に一枚では布面積が足りないので余っていた金属を錬金術で加工し、それぞれを繋ぎ止める金具とする。
贅沢にあしらい体を完全に覆ったとき、ようやく周囲を確認する余裕ができた。
「『スラッシュ』!! 地獄の猛犬とは幾度となく戦ったが、地獄の番犬とは初だな!!」
「『騎士の誇り』!! フィールドが熱い……!! 無効化し切れないんですけど!!」
そこには奮闘する2人の姿が。
相手は三つ首の猛犬、レオトールの言う通りケルベロスそのもの。
三つの首が自在に動き、それぞれが炎を吐き出す。
ただ吐き出すだけではなく、噛み付くこともできるし歯で剣を絡めとることもできている。
異形と言うこともあり、ゾンビ一号はもちろんのことレオトールも少々苦戦しているようだ。
また、フィールドがフィールドということもある。
フィールドは地獄を模しているのか、其処彼処に溶岩が流れておりそれによって大地に火はつき光が乱舞している。
自分の死因に納得しながら、黒狼は即座に杖を構えた。
「『ダークバレッド』、すまん!! ちょっち遅れた!!」
「構わん、だが事前に一言よこせ!! 当たりかけたぞ?」
「お前なら避けれるだろ? レオトール。」
「私はよくともゾンビ一号が無理なのだ。っと、『パリィ』!!」
久々のまともな戦闘、単純な切り合いに若干テンションが上がってるレオトールだがその動きに濁りはない。
愚直なまでに究極的な美しさの欠片も無いその剣技は、着実にケルベロスに有効打を与えている。
またゾンビ一号も中々に奮闘している。
レオトールの攻撃により怯んだ状態のケルベロスを惹きつけ、レオトールが攻撃しやすいように誘導しているのだ。
2人で十分なんじゃね? と思う黒狼だったがよくよく見てみるとゾンビ一号には多少の傷が付いている。
完全に防御ができているわけでは無いようだ。
それを見た黒狼は即座に『ダークシールド』を出すと、鉄板を出し周囲のマグマにアイスアローを発射した。
アイスアローは即座に溶けて消えたが、その溶岩の場所は一時的に固まる。
レオトールは黒狼の意図を即座に察すると獅子を誘導し、その表層だけ固まった岩石の上に弾き飛ばした。
ギャオンッ!?
熱ッ!! とでも言うように片足が溶岩に使った獅子が飛び上がる。
三つの顔はそれぞれ涙目になり、慌ててレオトールから距離を取った。
黒狼は爆笑しながら『ダークランス』を放ち、レオトールは弓と矢を取り出すと連射を披露する。
ゾンビ一号は2人が遠距離攻撃をしている間に後退し、空き瓶に入れた液状の軟膏を飲み干す。
「このローテーションなら時期に倒せるな?」
「地形こそ厄介だが火傷にさえ気をつければさしたる問題もあるまい。」
「アッツい!! よく2人はHPが減りませんね!?」
「灼熱には既に適応しているからな? 住んでいた土地が悪かったとも言うが。」
「俺はそもそも状態異常完全無効化だから、半端に肉体があるチミとは違うのだよ。」
「ウッザいです、黒狼。」
「多少のジョークには乗ろうぜ?」
「さて、くるぞ。」
「『騎士の誇り』!!」
再度盾を持ち、突進してくるケルベロスを受け止めるゾンビ一号。
ケルベロスも馬鹿ではなく、一番弱そうな黒狼を狙ってはいるのだがゾンビ一号のアクティブスキルである『騎士の誇り』によって強制的に視線がゾンビ一号に寄ってしまう。
その間にレオトールが強烈な攻撃を行い黒狼が地味に鬱陶しい攻撃と地形を利用したトラップを貼る。
火力こそレオトール頼りになっているが、レオトールのみに頼った戦い方では無い。
……勿論、レオトールが本気を出せばケルベロス如き簡単に殺せるだろう。
地獄の番犬と言えど、所詮三つ首の犬。
その大きさは車並みだとは言え、『極剣一閃』の一撃で悶絶する程度の相手でもある。
地形の厄介さはそもそも無駄としか言いようがない。
軽業士もびっくりな空中起動を披露するレオトールが地形に囚われるなどあり得ない、最悪『大地峰壊』を行い飛び散る溶岩を避けながら有効打を何度も放てばいい。
では何故それをしないのか? それは偏にレオトールと黒狼、そしてゾンビ一号。
彼ら全員の認識が、互いに並び立つ仲間であるからだ。
2人が庇護者であるのならば、レオトールも態々こんな面倒臭い事はしない。
だが、2人は庇護者ではなく並び立つ存在。
守るだけでは、駄目なのだ。
「『スラッシュ』!!」
「ひょぇ〜、マジか。ただのスラッシュでそこまでの火力になるのかよ。」
「冗談みたいに横っ飛びにッ!! なってましたねッ!!」
「グラムを使えば一瞬だが?」
「遠慮するよ、今でも十分戦えてる!!」
そういながら、黒狼は接近し『インパクト』を放つ。
余裕が出てきた、と言うよりもレオトールの攻撃頻度が下がったため近接戦が得意では無い黒狼も前線に入らざるを得なかったのだ。
ぶっちゃけ鬼畜教官のレオトールが悪い。
勿論、実践で得られる立ち回りはこの上ない経験でありレオトールの行動は間違いではないだろう。
ただ、単体性能でもあの獅子を上回るケルベロス相手にすることではない。
地形も加えれば相当な難易度となる相手で訓練など正気の沙汰ではないのだ。
そしてそれを平然と受け入れる黒狼も相当に頭がおかしい。
「ほいほいほほいのほい!! 『スラッシュ』からの『インパクト』!!」
「ふざけた声が鬱陶しい!! 黒狼!! 黙ってくれませんか!?」
「だが、断る。」
「断るな!!」
微笑ましい? やりとりをしつつ2人は順調にケルベロスを追い詰める。
レオトールはちょくちょく手を出しているが、それ以上の行動は必要ないと基本的に静観する姿勢になった。
そんな時、いよいよケルベロスのHPは5割を切りフィールドから大きな音が鳴り響く。
「……、やはりそんな単純には終わらせてくれんか。」
「げぇぇぇ!? 大量の犬っころがいるんだが!?」
「冷静になれ!! 大した問題はない、ヘルハウンド共は私が引きつけよう。」
音が鳴り響くと同時に溶岩が隆起し、其処彼処にヘルハウンドがスポーンを始めた。
確認できる範囲で凡そ100体、しかも未だ万全に沸き続けている。
それを見たレオトールは剣を納刀すると、弓を取り出し一喝。
同時にインベントリから出た矢を掴みレオトールはヘルハウンドを打ち始めた。
「さぁて、Are you ready? ゾンビ一号!!」
「ちょっと黙って!!」
後半戦、開幕。
最後の難行は案外簡単そうですね。
……、え? 本当にコレが最後の難行か? って?
フッフッフ、どうなんでしょうね?
ではいつものように定型文を……。
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