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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
二章上編『終わらぬ夜の暗月』

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Deviance World Online ストーリー7『嵐の前の静けさ』

 ぶっちゃけ、ゼウス含めたギリシア神話の神々がいることは不思議ではない。

 実際に黒狼はその一人であるアルテミスの死に直面したうえ、一時的にとはいえその力を借り受けた。

 だからこそ疑問となる部分はそこではなく、もう少し踏み入ったところ。


「その様子じゃ、深淵の神々じゃなさそうだな」

「やっぱり、アンタもそこまで知ってるんだね?」


 深淵か、それ以外か。

 黒狼の中でそれは結構思い意味を持つ、黒狼は対キャメロットに向けてこの短い一か月でDWOの神話を見つめなおした。

 その中で発見した歴史の中で古代の王が神々と約定を結び天獄と深淵に封印し、そこへ向かうための境界を『花の魔術師』マーリンが自ら幽閉されることと引き換えに久遠に閉ざしたとされている。

 『此処より先は、旧支配者たる神の国。白亜の龍、災厄の獣、湖の守護者を乗り越えて。彼ら咎人へ、断罪を』、そしてもう一つ。

 『古き漆黒』グ・ルーズレイ、現在からおよそ38年前に失踪した罪人たる彼が残した魔導書『イルウィカトル・テテオカン』において深淵に連なる言語を用い先史時代の文法で確かに記載されていたはずだ。


 『古き約定は締結されていた、我々人類はすでに劣化している。神々は来訪し無知なる人から取り戻すだろう、人知を超えた英知の結晶。我々は認識することができない、より高位の座へ。深淵を目指せ、女神アルテミスを復活させるのだ。恥知らずのアルテミス、純潔たるアルテミスを』


 黒狼がゲームを始め、真っ先に迷い込んだあの洞窟。

 その中に存在していた一つの暗室、秘匿されていた魔導書。

 すべてが隠された大きなシナリオを示している、神々という重大な仮想敵を据えて。


「お前のソレは、天獄産だな? ゼウスは天獄にいる。そうで、間違いないな?」

「アンタが気にしてどうするんだい、それを知ったところで何が変わると? さっきの太陽は恐ろしい攻撃だったけどね。コッチとソッチじゃ、格が違うのさ。神の、格ってもんが」

「深淵が下だって? 笑わせてくれる、な」


 深淵と天獄は互いに互いを牽制しあい、其々の領域をより大きく深く根を張りながら侵食している。

 故に深淵と天獄は一切の優劣などなく、あるのはそこに住まう神々の格差のみ。

 そして戦争における敗者、より人に寄り添い守護し疎まれたが故に深淵に住まう神々は天獄に住まう神々へと後れを取るだろう。

 ただし、何事も一つの通りが全てを支配するというわけではない。


「『環境汚染:迷宮』」


 迷宮は、全てを等しく拒絶する。

 そしてこの戦場は、神の戦いにして神話の再演を行うに少し脆すぎた。

 ドレイクはこの船上において限りなく黒狼に有利を取っている、神の力による攻撃を行なったとて勝てるだろう。

 だからこそ、その確信から黒狼は環境を塗り替える。

 この艦橋へと体を翻し、逃げの姿勢をとるドレイクに対する挑発を行いながら。


「逃げんのかよ、海賊」

「迷宮籠りの芋虫が、よく言うよ」


 次の瞬間、ドレイクの背後から切りつける一人の男の影があった。

 村正だ、千子村正が素早い抜刀でドレイクを背後から切りつける。

 当然、特殊アーツを伴って。


「『電光雷切』」

「チィ、『サンダーボルト』ッ!!!!!!」

「逃すかっての、『弓張如月』」


 仄かに緑色の魔力を纏った矢は一直線にドレイクの雷撃を撃ち落とす、同時に周囲の炎属性の魔力を吸い取り彼女へ植物属性の魔力的拘束を行なった。

 空中を飛ぶように移動していたドレイクは一瞬だけ、動けなくなる。


 次の瞬間、村正が放った刃が彼女の胸を切り裂いた。

 服が切り裂かれ、血液が軽く飛び散る。

 思わず胸を押さえたドレイクは顔を赤らめ目を逸らす村正に対して蹴りを入れ吹き飛ばした、ついでに言えば他の人間にはモザイク処理が施され何も見えるものがない。

 少し気まずそうにしながらも構え直す村正へ、ドレイクは急接近しながら拳を放つ。


「険しい顔でウブな男……、益々イイねェ!! 最近の若い子ってのは転換手術に慣れすぎてダメダメ」

「五月蝿ぇ、ちったぁ抵抗あるだけだ」

「なんか草臥れたOLが小動物を目の前にした顔してらぁ、貞操狙われてんじゃね?」

「んな、阿呆な」


 黒狼の巫山戯た言葉に苛立ちを抑え言葉を返す、次の瞬間村正の抜刀術が披露された。

 飛来する雷を切り裂き、ドレイクの喉目掛け刃を走らせ空を切る。

 ミスだ、カウンターとばかりに返された弾丸は村正ではなく仕込みをしている黒狼に向けられ性格無比に片手を出して防いだ。


「右手を撃ち抜かれちった、『再生』」

「魔力パスの先はあの船かい、魔力切れを狙うには少し難しそうだ」

「ワルプルギスには無限魔力炉が付けられてるぜ? そう簡単に魔力が切れると思うなよ」


 事実上のモルガンだ、そしてワルプルギスの魔力と黒狼の魔力は非常に親和性が高い。

 近辺にワルプルギスが存在し稼働しているのならば、黒狼の魔力切れはあり得ないと断言しよう。

 故に切り札を切り続けられる、第一の太陽は再び降臨する。

 黒狼の、その手の内で。


「『夜の風、夜の空、北天に大地、眠る黒曜』」


 神は、神でしか殺せない。

 世界に存在する絶対原則であり、また神という象徴的存在の力。

 その大きさにして強さを示す言葉である、言い換えれば神の力とて神域に居なければ相殺できないという事だ。

 神の力、権能とはソレだけでつまり。


「『不和に予言、支配に誘惑、美と魔術』」


 世界を塗り替える大業、世界を改変する偉業。

 在来人類では到達不可能な、黒狼だけの領域。

 権能とは人が扱えるモノでなく、故にこそその権能は黒狼を神に押し上げる。

 或いは、黒狼の体躯を滅ぼし誰も用いぬ事象として発生するのだ。


 ドレイクの対応は早かった、逃げるではなく応戦に切り替える。

 その太陽には良い思い出がない、発生したら最後自らを殺す魔弾になりえるだろう。

 確信に近い妄執がドレイクの身体を加速させ、全身に纏う力を増強させた。


 焦るべきは黒狼だ、村正は目の前に居座る怪物を目の前にし脅威を測りかねている。

 力の規模が戦闘開始から異様に拡大している、少なくとも先ほど苦戦させた『黒鉄』ヴィンセントよりも最低火力が高く感じる威圧感はレイドボスに匹敵するだろう。

 月湖のペルカルドと比較すれば流石に劣るとはいえ、力の格は勝るとも劣らない。

 レイドボスコールが流れていないことが不思議なほどに、彼女の力は大きく比例するように身体へ雷霆の文様が浮かび上がりより多くの雷を纏っている。

 まだギミックがあり、コレが手札の全てじゃないことを悟らせてきた。


 『安心しろ、村正』


 その焦りを見抜いた黒狼が、目線を投げかけ否定する。

 分かっている、ドレイクが未だ全力にないという事を。

 また自分もソレを理解したうえで、この行動を行っているという事実とともに。


「『それは戦争、それは敵意、山の心臓、曇る鏡』」


 ドレイクは、意図して攻撃しなかった。

 ここで黒狼を殺すのは簡単かもしれない、その大きな隙を晒している詠唱を妨害するのは簡単だ。

 けれども、その詠唱を中断させた結果に出来上がるカウンターを警戒した。

 見え透いたカウンター、もう一つの収束した魔力を。


「『五大の太陽、始まりの52、万象は13の黒より発生する』」


 挑発的な視線を物ともせず、構えた雷槍を村正へ向け。

 そのまま力任せに黄金雷を投擲し、構えた刃を以てその雷を切り落とす。

 来るとわかっていれば、雷程度切れずして何が剣聖の弟子か。


「『第一の太陽ここに降臨せり、【始まりの黒き太陽(ファースト・サン)】』」


 手の中に収束した太陽は膨張を始め、一瞬にして周囲を焦土に変貌させる。

 船の上、湿気たフィールドであっても関係ない。

 摂氏六千度に匹敵する熱量はステータスを無視した太陽の権能として降臨し、船を焼く。

 そのうえで自らを殺すダメージを以て、黒狼はもう一つの予備策を発動した。



〈ーーーレイドボスが顕現しますーーー〉



「マジ?」



〈ーーレイドボス名『ワイルドハント』ーー〉




「大マジだよ」




〈ーープレイヤーネーム『ドレイク』ーー〉










〈ーーレイド、開始しますーー〉












「生憎と、こっちが一歩早かったらしいね?」


 カウンターのカウンター、後に至りて先に立つ。

 敗北などありえない、すべてを振り払うように彼女は笑う。

 装備が全て一新され海賊としての彼女ではなく、神として降臨する怪物。

 もしも彼女の新たな姿に二つ名を与えるのならば、『雷神』とでもするべき姿をさらしながら。

 落雷とともに、太陽を打ち貫いた。

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