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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
二章上編『終わらぬ夜の暗月』

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Deviance World Online ストーリー7『黄金鹿』

 船が大きく揺れた、次の瞬間乾いた音ともにネロが撃ち抜かれる。

 予測は出来ていたはずだというのに、村正の心を襲ったのは意外という思考だった。

 意外にも、その一撃を村正は予想すらしていなかったのだ。


「なんだい? 鉛玉でブチ抜かれた様な顔をして」


 事実、仲間の一人がブチ抜かれたのだ。

 そりゃそんな顔をしたくなる、が余暇などない。

 即座に目線だけを動かし状況を把握、黒狼しか生きていない上にドレイクおよびその傘下が健在な状況に苦々しい顔を見せ刀を納刀する。

 今戦ったのはあくまで二人のトッププレイヤーであるだけ、陣営で見れば全く彼女らに寄与しない。

 わずか二人で今からトップクランを相手にする、それは事実上の敗北だろう。


「まさか、舐めたこと考えてるんじゃねぇだろうな? 村正」

「馬鹿を言え、手前こそ舐めた真似をするんじゃねぇぞ」


 事実上の敗北、ソレがどうした。

 月光のペルカルドの方が脅威だった、アルトリウス率いるキャメロットに挑む方がよほど無理筋だ。

 それ以上に別段、黒狼の勝利は……。


「勝利条件は唯一つ、ドレイクを倒しフラッグを入手する」

「手前、条件は一つだろうがよ。何二つも挙げてやがるんだ、この蛸が」

「海賊っていうのは俺たちテロリストとは違う、その役職に自分なりの道理があり誇りがある。絶対に奴らは死んでも渡さねぇだろ、何せ海賊。奪うことに誇りを通す連中だぞ? そのロールを突き通すのなら、少なくとも俺はそういう風に動く。そしてその通りに動くのならば、お前が死なないと手に入らないギミックを組み込んでるだろ? 違うか?」

「答えないって選択を取らせてもらうがね、だけど良い考察だよ」


 おしゃべりはここまでだ、そう言うようにドレイクはニヤリと笑えば手を掲げる。

 次の瞬間には手に雷の槍、神の権能たるはずのソレが握られていた。

 一歩踏み出しそのまま槍投げの要領で雷が投げられる、とはいえ予備動作は分かりやすく黒狼は体を軽くひねり回避し。


 直後、轟音が耳を劈き風通しが良くなる。

 ドレイクの武器は銃、中世から近代へと時代の流れを変革させた圧倒的な漆黒の殺意。

 当然や当たり前と言える話ではあるのだが、互いが持つリーチは大きく異なる。


 しかし問題も存在した、銃の方が圧倒的に強いのならばその武装がすでに採用されているはず。

 黒狼やひいては村正が銃を使わず剣を選択する理由がない、けれども実際には真逆であり黒狼や村正は剣を用いて戦っている。

 その理由は単純で、酷く簡単だ。


「近寄ってほしくない、そう公言している様なもんだぜ? ドレイク」

「名前で呼ぶんじゃないよ、アンタの言葉は耳が腐って仕方ない」

「どうだか、いい歳こいた女が海賊ロールで女王様してる方がよっぽどだろ」

「生憎と、ナニ勘違いしてるか知らないけどアタシはまだまだ20代だよ」


 そう返す時点で年齢を気にしてるってことじゃねぇか、最低なあおり言葉とともに隠し持っていたワイヤーを投擲する。

 周囲から飛び交う弾丸が鬱陶しい、黒狼自身のステータスで無視できる話ではあるがその無視できるダメージ量にも限界はある。

 回避できるのならば回避した方が最終的にアドだ、しかし無茶な回避をすれば狙いすましたドレイクの一撃が突き刺さるだろう。

 いくつかの弾丸を素手でつかみながら、警戒心を表に出す。


 そう、銃の弱いところは火薬や魔力の作用で飛ばされているが故に速度上限が存在することだ。

 音速以上の速度で放たれる攻撃は確かに強力で、ステータスが著しく低い状態からでも運用できるが故の強みがある。

 だがすでにインフレは始まっているこのゲームにおいてそのアドバンテージはすでに失われ始めていた、ドレイク率いる『黄金鹿の旅団』は先の時代の遺産を抱え新たな時代の始まりに追い付くことに至らない弱者の集団に変貌しつつある上に。

 精密加工機械など存在しないこの世界、一から組み立てようにも世界の理屈が違いすぎる影響でより効果的高火力非人道的兵器が開発できなくなっていた。

 DWOは、現実ではない。

 現実から理屈を持ってきても、黒狼がAIに物理学から逆算させ草案としたワルプルギス計画ですらもモルガンおよびロッソの両名がその大部分を書き換えなければ実行できなかったほどに非現実的だったのがその答えでもある。

 分かっているのだ、リアルを採用すればファンタジーに劣るという事は。


 だからこそ、ドレイクが採用したファンタジーが恐ろしい。

 雷、古くからの神の権能であり主神ゼウスの雷霆こそ最も有名な力。

 少なくとも圧倒的なその攻撃力はロッソを一撃で粉砕できるほどの効力を誇っており、カラクリを見破らなければ突破は厳しい。

 そのうえで、コレだ。


「手前の部下が多すぎるってもんだ、身を隠し刺すように打ち続ける弾丸が鬱陶しくて敵わねぇ」

「もう無視しておけ、けど弾丸に紛れる魔法だけは回避しろよ。ステータスを参照する攻撃だけはヤベェ、仮にでも古参クランだ。こうステータスの粒揃いが結構控えてやがる、だが出てこない理由は分からねぇが」


 手数がモノを言う、たとえレイドボスでもダメージが入るのならば確実に死んでしまうのだ。

 それより弱い黒狼らが手数で負け続ければこちらが死ぬに決まっている、短く息を吐いて黒狼は切る気のなかった切り札を用意した。

 これを切れば戦況は若干有利になるだろう、だが対アルトリウス戦が難しくなる。

 それでもなお切るべきか、否か。


「勝てば全部チャラだろ、ならやるしかねぇよな」


 迷う理由なんて、最初からなかった。

 迷う素振りすらもなく、二ヤリを笑みを浮かべカードを切り捨てる。

 文字通りトランプ程度のサイズのカード、いや正しくはこういうべきか。


「圧縮型魔法陣……ッ、破壊を対価に無条件の発動を可能にした代物!! 一枚当たり幾らかかるんだか、ぜいたくな運用だねぇ!!」

「悪いな、こっちは生産者が味方に付いてるんだ。一週間もありゃすぐに作れる、そして効果は……。まぁ、語るまでもないわな?」


 『ウィッチクラフト』を舐めるな、という話だ。

 錬金術師としての戦いは盤外戦術そのもの、戦う前の土台造りこそが本懐であり盤面に出た後の行動はすべて土台に仕組んだトラップの発動でしかない。

 さすがにこの一枚で勝負が決着するようなことはないが、それでも発動した魔術効果は決して笑い過ごせるほど穏やかなモノでもないのだ。


 その魔術名は『始まりの黒き太陽second』、黒狼の術式を黒き神『ジャガーマン』から学習した権能の在り方と合成することで完成させたより一層権能に近しい魔術。

 要求される魔力量と発生する効果は比例し爆発的、軽く盤面を塗り替えるには十分な効果を含んでおり。

 だから必ず、ソレを使う。


「『神々の雷霆(ゼウス・ケラウノス)』、『神因(ゴッズエボ)昇華(リューション)』」


 予想通りであり、想定外。

 攻略可能な範疇でありながら、攻略難易度が青天井の相手。

 大きな釣り針で、バカでかいサメを釣った気分だと黒狼は後に語る。

 何せ相当の神が出てくるとは予想していたが、それでも。


「そこはポセイドンじゃねぇの? 常識的に考えて」


 一つの神話、その主神が出てくるとは予想だにしていなかった。

 随分と身勝手かつ自分勝手な言い分ではあるモノの、黒狼は眉間に皺をよせそうつぶやく。

 直後、第一の太陽が炸裂した。

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