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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
二章上編『終わらぬ夜の暗月』

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Deviance World Online ストーリー7『黒鉄』

 沸々と湧いてくる怒り、無念。

 ソレは半ば投げつけるようにヘッドギアを外し、真紅の美しい赤髪を解く。

 ロッソは死んだ、息を深く吐くと改めて怒った事実を確認する。

 反応出来た出来なかった以前に予測できたはずだ、ドレイクが横槍を入れてくることなど。

 最も、その横槍が文字通りの横槍とは予想できなかったが。


「魔術っていうレベルの出力じゃないわね、権能? 少なくとも私をワンパンってかなりの馬鹿力よ」


 実は、と言うより案外。

 このゲームにおいて即死や、ソレに等しい必殺技は限りなく少ない。

 死属性を叩き込む『ザバーニーヤ』系譜のアーツ、死属性の塊そのものであるヒュドラの猛毒と言う程度。

 等しいレベルにまで落としても、黒狼の『始まりの黒き太陽』、『ニ打不』に止まり。

 条件を整えた場合に限り、アルトリウスの『聖剣エクスカリバー』やガスコンロ神父が持つ特殊バフ『マッスルギャラクシー』を帯びた状態から放つパンチ、ネロの『黄金の劇場』に村正の『  刀  』及び『魂魄刀千子村正』、トン三郎の『忍殺・迦羅伽藍髑髏』に柳生の神速の抜刀術、モルガンの『ロンゴミニアド・カラープス』、『臓抜』、『カズクィル』に『カズクィル・ベイ』などが該当するだろうか。

 つまり、少ない。

 ロッソを基準としても500前後のステータスで即死させたいのならかなり手順を踏むか、ソレが可能なアーツを取得するしか無いわけで誇る難易度からは目を覆いたくなる。

 つまりこの時点でドレイクの力は少なく見積もってトッププレイヤー、つまりは『白銀』クラリスよりも上と想定でき。


「なんなら、最前線走っててもおかしくないわよ」


 また、ロッソが纏う身体防護の術式や魔道具を貫通したことをも想定に入れるならそれ以上とも言えるだろう。

 急遽完成させた装備を使用していなかったとはいえ、相当な耐性を持っているのは事実。

 純魔攻撃なら一撃以上は耐えられるはずだと言うのに、全くもって不可解だ。

 とはいえ、とはいえだ。


「ま、モルガンが居たら負けないでしょ。腐っても鯛、無限の魔力を持つアイツの攻撃出力なんて並のプレイヤーが束になっても敵うものじゃないし」


* * *


「ちぃ、モルガンめ!! あっさり死にやがって」

「キャラがブレてるんじゃない? 村正さん」


 焦りを隠しもせず、皺を酷く寄せる。

 状況は先ず先ず最悪に近い、『白銀』は黒狼らが受け持ったとはいえ『黒鉄』もまた『白銀』に近しい実力を持つ。


 あるいは、それ以上か。


 『黒鉄』のヴィンセント、彼の実力は純粋比較を行うのには向かない特性を持つ。

 それは魔術や基礎ステータスに依存しない主流なビルドとは異なるソレ、スキルにのみ重視した掛け算による圧倒的強化。

 姉たる『白銀』が基礎ステータスによる圧倒的なごり押し性能にたけているのならば、黒鉄はその一瞬を爆発的に強化し蹂躙することに長けており。

 それは同時に、モルガンの天敵となり得た。


「内側に入られれば弱い、ってそれじゃただのカモって言ってるのと変わりないよ」

「ご忠告どうも痛み入る、暫しばかりその口をふさげ」


 甲板から無理矢理飛び上がれば一気に数本の刀を投げつけた、最悪とまではいわないが状況は如何せんよくない。

 モルガンの耐久性を高く見積もったつもりはないが、それでもここまで瞬殺されるのは予想だにしなかった意外な結果。

 この難所を切り抜けれる気がしない、とはいえだ。


「うむ、余の出番であるな!!」


 ネロがいる、クランの中では最も弱いとはいえだ。

 彼女のバフは所詮スキルにすぎない『黒鉄』のヴィンセントに勝る、心象世界に由来する絶対性を持ったバフは下手な術式で対応できる訳がない。

 対応できる訳がない、のだが。


 問題は、心象世界を開いた場合この船ごと沈みかねないという事だろうか。


 心象世界は境界を形成するモノと、仮想の現実を現実に流入させるモノがある。

 つまりは自分のイメージで構築される世界に連れていくか、自分のイメージする世界をアイテムにするか。

 ネロの心象世界は後者であり、ドゥムス・アウレアは確かに質量を持った劇場だ。

 重ね古代ローマを思わせるその建築様式は石造りであり数百トンは下らないようにも思える、こんなものを展開すればドレイクの船ごと海中に沈みかねない。

 両者死ねば結果はドロー、結末は戦っていないのと同じになる。

 それこそ許容できる話ではない、そうで良いのならば既に戦わず終わらせているのだから。

 さて如何した物か、思案すれども答えは存外に見えるわけではなく。

 むしろ一方的ともいえる攻勢に舌を巻き手が焼ける、文字通り。


「『炎撃』『回転切り』『疾風迅雷』」


 何か絡繰りがあるだろうけれどもだ、スキルを使用し攻撃が連続するにつれ攻撃力が加速的に上昇していた。

 ただし加速的とは言っても爆発的ではない、このバフ自体はさほど脅威に足りえない。

 問題なのはスキル側の攻撃力、基礎攻撃力を加算することにより乗算である連続使用の攻撃力を跳ね上げている。

 1×2=2だが5×2=10になるというわけだ、そして1に4を出すのは案外難しくない。


「察するに、その剣か?」

「どうだろうね?」


 そしてもう一つ、問題がある。

 魔力の動きが非常に悪い、生産職の中でもユニーク職に分類される妖刀鍛冶だからこそ分かる感覚。

 その目利きが告げている、彼の用いる刃もまた常なる物では無いと。

 聖剣や妖刀と言った魂が込められた逸品ではない、というかそもそも村正が異常なだけでポンポン転がってる物じゃない。

 そんなに転がってるのならモルガンのルビラックスと同等の杖をロッソも持ってるはずだ、だが彼女の杖は有り合わせの自作品。

 無限魔力供給回路は疎か、単一属性を増長させる術式以外のギミックはないのだから。

 まぁ、そもそも最近は鈍器としての運用が主に成り立つある時点で仕方のない話だろう。


「儂の見立てじゃぁ、周囲の魔力の撹拌って所だろうよ」

「ありゃバレてる、それならもう少し種明かししてもいいよね。厳密には撹拌じゃなくて集合、周囲の魔力を無差別に吸引してるんだよ。ちなみに製作者はロッソさん、いい物作るよねー彼女も」

「へぇ、そうかい。長々と話してくれて有難よ、『居合い』」


 やはり逆転の可能性はネロにある、攻めに転じつつ村正は直感した。

 ついでに厄介なモノを作り出したロッソに関心を覚える、案外互いの能力の底は見たことない訳でこうして成果物を見てみればその腕前は褒めて余りあるモノだと理解できてしまう。

 使い手の腕前が高いからこそその全力が拝める訳で、その意味合いではヴィンセントの強さも自分の物差しで察することも出来る。

 考えうるに、その実力は黒狼よりも遥かに上。


「『杭打ち(ぱいるばんかー)』、ちっ。流石に黒狼よりかは下手か、だが良い。やっちまえ、手前の持つ心を曝け出せっ!!」

「む、だが……」

「儂が対応してやんよ、だから安心しやがれ」

「無理無理、できっこない……。いや、嘘だろう? 本気でやる気かい!?」


 失敗作を適当に放ち、インベントリに仕舞い込めば村正は自らの腕を切り落とした。

 出来るからやる、出来ないのなら全部が御破算。

 極限状態でありこれ以上になく面白い状況、突破できなきゃ進めず後ろに下がる意味はない。

 恐怖はない、理性はすでに切り捨てた。

 切断した腕の分だけHPが減少し、滴り落ちる血液により益々消えていく。

 命が溢れながら、それでも笑い、


「俺は、負けねぇぞ」


 村正は、刃を造る。

 その腕を素材とし、錬鉄の炎を以って。

 至るは研鑽、万物衆生を置き去りにした炎の世界。

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