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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
二章上編『終わらぬ夜の暗月』

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Deviance World Online エピソード7『怒り』

 到底理屈が通っているようには思えない、あるいは理屈が存在していると認識しようにも理解の範疇を超えすぎている。

 少なくとも、今ここで黒狼が扱うには大きすぎる話であるのには間違いがない。

 何ならその言葉のほとんどを理解できず、ポカンとしている黒狼が存在しているぐらいだ。

 なのでその言葉を無視して、黒狼は話を再開する。


「ともかく、俺たちの利害は一致している。だが流石に取り返しのつかない、殺人をするのは気が引けるからさ。告解をしたんだよ、お前という神父に。一見すれば不必要な工程かもしれないが、けれども必要だろ? 体裁があるからこそ人間はより人間らしく生きれるんだ」

「習慣によって人は構成される、と。否定はできませんね、私も貴方も習慣に縛られている」

「ともかく、で過ごしてよい話ではありませんが……。殺すのならばいい加減殺していただけませんか、人生最後の時間は自分で選ばせてほしいもn」

「そうだな、じゃ。死んでくれ、より良い明日を幻視しながら」


 黒狼は取り出したピストルの引き金を、軽く引く。

 ただそれだけで、ギネヴィア王女は抵抗も赦されずHPのほとんどを消し飛ばされてしまった。

 もはや死人だろう、そんな彼女に『呪楔(ブラッドコントラクト)』を発動させた上に『呪屍(オセロットアンデッド)』による半アンデッド化を施す。

 まだ彼女は生きている、生きてはいるがその生存は復活する可能性が存在しえないほどに死んでいるのと変わりない。


「さようなら、ギネヴィア王女。次は良く生まれてきたらいいな、あっさりと死ぬ選択すらできないほどに」


 一抹の申し訳なさはある、少しばかりというには重い罪悪感もあって。

 けれどもそれ以上にそうさせる世界の歪さを黒狼は嗤う、彼女が浅慮にもそうしなければならなかった世界を侮蔑した。

 そうでなければあまりにも、彼女が可哀そうに仕方ないのだから。


「じゃぁ、そういうわけで。また機会があれば、なんで俺の腕をつかむ?」

「まだ主は貴方の罪を赦していません、いえ。まだ語っていない、語る気のない目的が存在しているでしょう?」

「はぁ? どういう……、ってそうか。お前も心象世界を開いていた存在だったな、ファーザー・ガスコンロ」


 心象世界を有する、いいや違う。


 心象世界を開ける存在は唯一つの例外すら赦されず、異形の精神を有している。

 例えソレがスキルというシステム化された代物であっても、例外とはなりえない。

 遥か或いは直近の過去に同質の心象世界を持つが故に、世界から規定はされるが本質的にその心象世界は常識というちっぽけな物差しで測れるモノなどではないのだ。


「殺す、殺したという罪の告解は聞き届けました。その罪に値する罰は主がきっと、下すでしょうとも。ええ、ですが。貴方の筋肉、その鼓動が告げている。確かに、そして未だ貴方には偽りがあるという事を」

「俺がネロにそうであるように、お前も俺の在り方が分かるってか。上手く隠したつもりなんだが、いつから気が付いていた?」

「戦った時から、『不死王』という神の敵は敵の土台で戦うもの。自ら戦略と策略を立て、自らの筋力が及ぶ範囲で戦う存在ではない。だが今の貴方は違う、今の貴方は言葉以上に楽しむことに固執しておらず『騎士王』という神の剣を堕とすことに固執している。これは一体、何故か? 推測を話しても?」


 鐘の音が鳴る、影が黒狼の顔を覆う。

 ステンドガラスの煌びやかな色彩が、黒狼の目の中に映り込み。

 背後に聳える影は確かな悍ましさを伴いながら、神父の正気を問うかのように蠢いている。

 それは宛ら、狂気。

 神の代弁者に対してその気を問うように、黒狼は嗤う。


「いいぜ、語れよ探偵気取り。その言葉に対しては、”俺”の言葉で返してやる」

「では私が得た結論を、前提として貴方にも目的は二つ存在している。”楽しむ”という目的は後付けの目的であり、貴方本来の目的ではない。違いますか? 『不死王』、黒狼」

「その答えだと及第点だな、だが正解だ。確かに俺の本当の目的は楽しむことじゃない、楽しむという目的は『神々の栄光』たるヘラクレス。あるいはそれ以前の段階で出会った『伯牙』レオトール・リーコスやモルガン含めた『混沌たる白亜』結成後に生まれた目標でしかない、つまりはこのゲームに興味を失った後に生まれた継続する理由として楽しむという目的を定めただけだ」

「そこまで詳しくは聞いていませんが、なるほど。となれば貴方の本来というべき目的はすなわち『ゲームをプレイすること』、であるのに間違いはありませんね?」


 黒狼は、二ヤリと笑った。

 大正解だ、彼の目的はゲームをプレイ。

 いいや、ゲームにログインしているという事に他ならない。


 別段、勝っても負けても。

 賽を振っても降らずとも、彼はどちらでもいい。

 ソコに何ら、彼の興味が至る物事は存在しえないのだ。


「そうすれば理解できる、ゲームをプレイすることを目的として。その手段に楽しむを掲げている貴方が楽しさを放棄し、何が何でも勝ちに行く。それは普通にあり得ないことだ、ですがそれを無理やりにでも実行するというのなら。『アルトリウスがこのまま存在すれば、貴方のゲームプレイに致命的な影響が出る』、という事に他ならない。必然、貴方にはもう一つ目的があるはずだ」

「大正解、答え合わせだ。俺の、黒狼の目的ではなく俺自身の目的を語ってやろう。とはいっても複雑なもんじゃぁ無い、単純に俺も感情移入しちまったってだけだ」

「感情移入? 随分と、あまりにも人間らしい答えですね……?」


 感情移入してしまった、この世界に。

 アルトリウスを排除したいと願うほどに、黒狼は感情移入させられた。

 名もなき顔のない男は、ただ(ソラ)に輝く輝けるべき一等星に目を奪われてしまったのだ。

 その一等星が落とされた、その報復をしなければ例えどれだけアルトリウスに興味がなくとも。

 例え自己以外の全てに興味がなかったとしてもだ、それでもヤル気が湧いてこない。


 黒狼もまた、黒前もまた。

 物語に出てくる主人公へと共感するように、感情移入してしまったのだ。

 この世界で生きた一人の男へ、何も感じていないという言い訳すらできないほど確かに。

 傭兵レオトール・リーコスに対して物語に出てくる英雄へと向ける尊敬と同種の感情を、確かに抱いてしまった。

 だから黒狼は薄っすら嗤い、片目を閉じる。


「感情移入しない、なんてわけない。俺もまた普遍的な人間である以上は、誰かに感情移入するし罪悪感も抱く。目に届く範囲で誰も死んでほしくはないし、手の届く範囲で救えるものなら救いたい。砂粒がごとき罪悪感を抱くのは嫌だし、自分勝手の幸せを噛み締めたいと思ってる。ただその物差しは誰に理解されるわけもない、俺だけのものでいい」

「自分に都合の悪いものは見たくない、と。また随分身勝手な主張だ、けれどもその主張もまた否定できるモノではない」

「いいや、否定できるモノでなくとも。それは確かな悪意だ、誰もが肯定することを赦されない個人の幸せ其の物。俺が最初に定めた方針であり俺が最後まで達成し続けるモノ、ソレこそが俺の在り方であれば」


 黒狼は静かに、口角を上げゆっくりと告げる。

 口の端からこぼれる言葉で、ただ静かに告げるのだ。

 目の前にいる神父を、挑発するかのように。


「神を殺してやろう、ソレが俺のロールだろ?」


 次の瞬間、黒狼の頭が弾け飛んだ。

 あまりに不遜な物言いに、神父は静かに怒っていたというわけだ。

良いお年を

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