Deviance World Online ストーリー7『ストーリー』
グランド・アルビオンに保管されている準古代兵器は、四つだ。
神父は思わず耳を疑う、そんなことがあり得るのかと。
近隣国家を含め、その兵器の危険度や重要度は知れ渡っている。
アルトリウスの持つ聖剣の時点で強さに至ってはお墨付き、規格外さに関しては未だ議論の余地があるモノのだ。
それでも規格外なのは、間違いがない。
「私のほうから説明させていただきます、そもそもこの国土に存在している準古代兵器の中で『エクスカリバー』と『音響装置』は保有していたと言い難い代物でした。前者はアルトリウス以外の担い手がおらず、また後者はレイドボス『月光のペルカルド』によって守護されており明確に保有しているといえる状況に無かったためです。だからこそ征服王軍、ヘタイロイは確実な勝利を得るために『音響装置』を狙った」
「結果は失敗、コレは全員が知ることだな。征服王は破壊者の前にどうしようもなく敗北した、そして挑んだ対価を己の命で支払うこととなる。加え唯一の例外を除けば征服王軍はどうしようもなく崩壊、生き残りの命も長くはない」
「話を逸らさないでください、重要となるのは我々が保有している準古代兵器は公式的には3つです。そのうちの一つが秘匿が困難であり保有していると喧伝するほかないエクスカリバーでありました、では残る二つは。一つは護国の槍、聖槍ロンゴミニアド。もう一つは、この国の最大級の秘匿事項である聖剣の鞘です」
「聖剣の、鞘ですか。何ともまた珍妙な話だ、強い剣や弓とは幾らでも聞く話ですが鞘が強いと言うのは初めて聞いた」
鞘とは武器を収めるモノ、攻撃に用いる代物ではない。
けれどもソレが準古代兵器足りえるのならば、珍妙な話だと神父は告げた。
実際その通りだと黒狼も同意する、準古代兵器の基準が何であれその項目の一つに破壊力は入っているはずだ。
でなければルビラックスが準古代兵器として扱われていないはずがない、だが実際には違う。
であるのならば聖剣の鞘にも、相応の破壊性が宿っているはずであり。
そうなれば鞘という形をとっているのはやはり不合理的でしかない、と考えられる。
「ふむ、ですが聖剣の鞘ですか。正式な名称などもなく、その呼称が正しい呼び方ですか?」
「その通りです、というよりは表舞台に登場させれば数多の諍い。その渦中へ引き込まれることを懸念した歴代の王たちにより、正式な名を与えることをやめました。対外的に、我々は三つ保有していることになっているというのにも関わらず更にもう一つ持っていると知れ渡れば余計な争いを生みかねません」
「随分と欲がない、いや。欲を出しても仕方ないという話か、戦力が潤沢で貧困に困ることもない歴史のある国家。わざわざ禍根を作り関係性を断つ理由も、又ない」
「実際に四つ目を嗅ぎつけたイスカンダルは主要となる騎士団の壊滅だけで攻勢を止めた、保守に入ったわけだ。実際あの軍団ならばエクスカリバー程度の兵器を相手にしても余裕の勝利を収められただろう、何なら多少疲弊した程度のレオトールだけでも聖剣は制圧できたはずだ」
そしてグランド・アルビオンもまた、その事実を把握していたからこそ準古代兵器を用いなかった。
底を知られれば負ける、聖剣『エクスカリバー』を用い不可能に等しい条件を揃えて尚も致命傷しか与えられなかったレオトールと同格があと何人いるというのだ。
それに北方の価値観とグランド・アルビオンの価値観も異なる、すべてを明け渡す服従か国民すべてを含めた死を要求された時点でグランド・アルビオンに選択肢はなかった。
「それに聖槍ロンゴミニアドと聖剣の鞘はある種別格的な性能をしている、エクスカリバーが担い手の技量を求めるとしたら聖槍ロンゴミニアドは自動攻撃の権化。鞘は被対象者へ莫大なバフを与える性質を持つ、初代国王アーサーが持っていた武装としてそのすべてが規格外」
「なるほど、そして貴方は聖剣の鞘を求めている。……あの空飛ぶ船、やはり未完成でしたか」
「頭が回る脳筋ほど怖いモノはねぇよ、正解だ。ワルプルギスには準古代兵器である『音響装置』を完全な形で運用するのは現状不可能だ、魔力をバカ食いしてくるしそれ以上に音響装置で増幅した音で自壊する。それを防ぐために聖剣の鞘を欲してるってわけだ、奪うのもいいが正規の手段を利用して奪わなきゃ色々大変だろうしな。あとシンプルにアルトリウスを失脚させたい、っていうのが俺の思惑」
大々的なお披露目はあの一回で終わりだというのに、その一回で看破されている。
それも準古代兵器を完全な形で稼働させてすらないというのに、脳筋が聞いてあきれる話だ。
この分だとアルトリウスにもバレていると考えるべきか、ワルプルギスが未完成であると。
実際にその通りだから困る、準古代兵器の保有する暴力的な攻撃能力は自分自身すら崩壊させるエネルギー量を有しておりソレはあの聖剣とて例外ではない。
加え此方は天才的なセンスで制御しているエクスカリバーと違い、個人による万全な形での運用が不可能に等しい音響装置では完全な利用は不可能。
やはり、防衛機構は必須なのだ。
「あなた方の思惑は、鞘の奪取とアルトリウスの失脚。なるほど、であれば反対にグランド・アルビオン。また王女たるギネヴィアの目的とは? ぜひよろしければ、話していただけますか」
「もちろん、私たちの目的は三つ。一つ目にキャメロットの弱体化および異邦人の制限、二つ目にレイドボスの覚醒を遅延すること。最後に、三つ目。準古代兵器を国外へと持ち出す、という事です」
一つ目は分かる、国家として破綻するほどにグランド・アルビオンはプレイヤーの力に頼りすぎている。
否、征服王に対抗するためには頼らざるを得なかった。
その弊害で国家が徐々に弱体化し、もはや単一の国家として存続することが不可能になるほどにはグランド・アルビオンは弱体化している。
黒狼は丁度良い警告なのだ、異邦人に依存しているNPCに対して向けるヴィランとしてもヒールとしても丁度良い警告。
二つ目もわかる、ここ数週間でレイドボスが次々に覚醒を始めていた。
完全な覚醒に至る前で対処し十分な被害が出ないようにしているためか、プレイヤーの中でも大きくは騒がれていないがけれども確かに情報は出回り噂となっている。
黒狼がキャメロットを弱体化させることでレイドボスの出現、覚醒を遅延させることにどうつながるのかは不明瞭であるとはいえだ。
まだ、二つ目もわかる。
「三つ目、ソレはどういった意味で?」
「我々には未だ準備が整っていません、境界の魔術師マーリンが至るアヴァロンへと向かう準備が」
楽園、またの名をアヴァロン。
あるいは天獄、深淵と対を為すもう一つの神の居所。
黒騎士が守り、あるいは秘匿すべき最奥。
そして黒狼が理解できず踏み入ることすら躊躇われた、高次の瞳。
そこに愉悦快楽を見出すことすら出来ず、幾何学的な高次の力のみが介在する特異点。
扉、鐘、光、秘匿、秘密、魔術、最奥、楽園、終末、境界、終わり、即ち。
「我々が挑むべき、外なる神ではなく古き世界が翳す本来の形たるグランドクエスト。最も優れた雛形より生まれ最弱種族たる人類が至る、潰えた可能性の頂き。まだ人は虚弱であり、底なしの坩堝を開けるべきではない。だからこそ、貴方たちを至らせない為にこの国から準古代兵器を失わせる必要があるのです」
ストーリーが進行する、即ち。
黒狼が歩んでいるシナリオが、7となる。
0になっているシナリオは計測出来ないほどに距離が遠のいたか、至る必要がないかの二つです。




