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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章中編『黒の盟主と白の盟主』

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Deviance World Online ストーリー3『戦闘開始』

「いくぞ!!」


 号令とともに一斉にプレイヤーが動き始める。

 無論、黒狼たちもそれに連なり動いていた。

 先ほどの作戦会議はボスであるエキドナを攻略するための作戦会議、レイドイベント自体の攻略はあの作戦会議では語られていない。

 なぜならそれは、事前に掲示板を通じて連絡されていたからだ。

 このイベント自体の攻略手順は以下の通りだ。


1.戦線に参加するプレイヤー全員での突貫。

2.一部のプレイヤーを除き集まっているミ=ゴの対処。

3.強力な上位プレイヤーが来るまで持ちこたえる。


 この場にいるプレイヤーは何度も説明する通り、其処まで強くない。

 数少ない二つ名持ちはともかく、ほとんどは素材の採取人や非戦闘特化の魔法使いに類する。

 そのため、この戦いは如何にして勝利するかではなく持ちこたえるかという勝負になっていた。

 

「一斉に動くな、見てて壮観としかいえねー。」

「私たちは前線組なのよ!? のんきな感想を言ってないで速く走って頂戴!!」


 ロッソに急かされ、足を速める黒狼。

 体が軽い分早いのか、結構な速さで地面をかける。

 それに対抗するロッソは自己バフを行っているらしい、足に何らかのエフェクトをまとっているのが見て取れた。

 そんな二人の前方には鎧姿に見合わないほど早く動いている『アイアンウーマン』の姿がある。

 彼女も何らかの自己バフを用いているらしい、白銀のエフェクトがたなびく様子は正に格好良さの体現といえよう。

 視線を先にやればヒポグリフに乗って地面をかける少女こと『理性蒸発娘』アストル、そして彼女の背中に抱き着くようにいるのは毎度おなじみ『黄金童女』ネロ。

 その速度はいまだ加速中、だがそんな彼女らを抜かすように一人のNINJAが加速する。


「お先に、でござるよ!! ドピューン!!」

「ねぇ!? なんであのふざけた掛け声からあそこまで加速するのよ!? 時速500kmはあるんじゃない!?」

「俺に聞くな!! ロッソ!!」


 そう言いつつ、黒狼も足を速める。

 スタミナが無いゆえに、走れる距離は誰よりも。

 若干遅くはあるが、それはそれで問題はない。


 後方で戦う音が聞こえている、その事実はもうすでに黒狼たちは敵の渦中に入っていることを示している。

 黒狼の反応より早く、斜め後方からミ=ゴが襲い掛かってきた。

 それを、半歩遅れていたロッソが迎撃し一瞬遅れて気付いた黒狼が籠手で殴り掛かる。

 結局、この攻撃は結局バイオ装甲に阻まれたが一瞬の足止めには十分だ。

 

「『飛燕、紅蓮、イチジクの葉。【シン・ブレス】』」


 黒狼が籠手で抑え込んでいる隙に、ファンタジーに登場するような竜のブレスを再現した様な炎の攻撃を繰り出す。

 一瞬にして全身を焼かれ、バイオ装甲を貫通されたミ=ゴは黒狼の剣の一撃を受けてうなり声を出しつつ死亡。

 ポリゴン片に変化される様を最後まで確認せず、武器を仕舞い地面を駆け出す。

 ロッソの攻撃は全体的に火力が低い、それこそヴィヴィアンや黒狼に比べれば割いているリソースが少ないゆえに。

 だが、その事実は必ずしも欠点とはなりえない。

 何度も言おう、何度でも言おう。


 ロッソの強さは手札の多彩さ、彼女は使える魔法や魔術を増やすことによって自分の強さを高めたプレイヤーなのだ。

 

「やっぱ魔術は便利でいいな、俺も使いたい。」

「便利じゃないわよ!? 覚えるのに結構苦労したのよ!?」

「ヘイヘイ、けど便利なのは事実だろ?」

「そうね、それは確かに事実だわ。」


 剣を片手に、逆手に持って力をより強く籠める。

 そのまま重心を下げ、一気に現れたミ=ゴに切り込んだ。

 

「すまねぇけどさ、相手にしてる暇がないんだわ。だから大人しく、消えろ。」


 炎が剣に纏わりつく。

 MPの心配は不要、死ねばいい。

 重要なのはいかに早く先に進むか、ただその一点のみ。

 剣が急速に加熱される、魔法陣から直接もたらされる熱により剣は赤銅色になった。

 バイオ装甲がジュっという音とともに蒸発をはじめ、ミ=ゴは焦りを隠せなくなる。

 

「【ウィンド・インパクト】、普通に強いじゃない。走ってる最中に錬金術のスキルで加熱するための魔法陣を組み込んだ感じかしら?」

「見ればわかる感じか? この金属さ、結構扱いやすいんだよ。便利でいいぜ~?」

「知ってるわ、錬金金属。その名の通り錬金術スキルを媒介とするときに異様に変化が速く劣化しずらい金属。私も何度か扱ったけど、いいアイテムよね。私のスタイルには合わないから使ってないけど、そんな使い方ができるのなら私も扱ってみようかしら?」


 談笑に興じつつ、そのまま休憩地点に駆け込む。

 まだまだエキドナまでは遠い、全速力で走り続けてもいつかはスタミナ切れになるのがオチだ。

 故に設定された休憩地点、前線組がスタミナを回復できるようにと想定された箇所。

 上等な設備があるわけでもないが、ここに集うプレイヤーはそれで十分だ。

 一瞬のうちにポーションを飲み干したり、魔術やスキルを行使し効果が表れるまでそのまま足を止める。

 必要不可欠な足止めを最小時間でクリアするための努力を行う。

 ロッソについても同様だ、極彩色のポーションを飲み込み不味そうな顔をしつつ口元を袖で拭う。

 胸をトントンとしつつ10秒ほど休憩すれば問題なくなったらしい。

 再度、走り出す。


「前衛組は強いわね、平然と走ってるわ。私には無理よ……。」

「本当に運動ができない奴はVRでも会話しながら走ることができないらしいし、そんなもんじゃね? 結局スキルがモノを言うゲームだし。」

「いや、スキル構成の問題ね? スタミナがってこと。」

「それがリアルの運動の問題……、理解した。俺の認識違いだったな。」


 そういうと、そのまま黒狼は飛び上がり魔術を発生させる。

 『錬金術』と、一言。

 口内にこだまするその音ともに、刻まれた魔法陣が変化した。

 魔力が流れる、氷の矢が発生する。


「邪魔だ、って言ってるだろ。誇りも葛藤も迷いもない、NPC風情が。」


 足に狙い打たれたその攻撃は、ミ=ゴを地面に縫い付ける。

 そのまま攻撃を加えず、即座に先に進む黒狼。

 ロッソも同様に、加速する。

 黒狼は元の体重の低さゆえにその速度は非常に速い。

 また速さを示すAGIアジリティは236もあり全ステータスの中でも二番目の高さを誇る。

 遅いはずがない。


 精神的な部分もかかわって顔に疲労の色が混じり始めたロッソとは反対に、苦行に等しい5時間の雑魚狩りを平然と行っていた黒狼にとってVRで得られる疲労など何のその。

 精神的な疲労などあってないに等しい。


「大丈夫か? 遅れてるぞ。」

「舐めないで頂戴!! ハァ、結局この疲労も精神的なもの。無視さえすれば、問題は……。」

「大ありって訳か、次に休める場所はそこそこあるな。こういう時は……。」

「ん? なんか呼ばれた気がしたぜ? オレをよんだか? 黒狼!!」


 タイミングよく表れたシャルを見て、来ると思ったよという雰囲気を醸し出す黒狼。

 そのまま、アイコンタクトで状況を説明するとカクカクシカジカと言葉にする。

 一瞬で状況を把握したシャルは即座に任せろ、と胸をたたくとロッソをお姫様抱っこした。


「え? ちょ、やめなさいよ!? 体重が……、ああもう!!」

「安心してくれ!! キミはアストルよりはるかに軽いから!!」

「おいソコ!! 雑談すんな!! 早く行くんだろうが!?」

「っと、そうだったそうだった。『エンチャント:レッグ』!! お先に行くぞ、黒狼!!」


 一気に加速し、飛ぶような速さで地面を駆けるシャルを見つつ主戦力が一人減ったことに気付いた黒狼が慌てて走り出す。

 攻略戦に参加するプレイヤーの中では真ん中ぐらいの速さを持つ黒狼だ、決して遅れすぎるということはない。

 疾風のごとく、あばら骨から空気が漏れ出すのを体感しシャルに追いつこうと必死に走る。

 速さでは決して遅れをとっていない、それどころか平均的なプレイヤーよりかは圧倒的に早い。

 難業で鍛え抜かれた逃げ足の速さは一級品。

 だがそれを上回るだけの早さを、シャルは持っていたというだけの話だ。

 徐々に差は広がって行く、淑女1人を抱えたシャルの方が早いという事実は少々不思議に思える部分はあるが事実として差は広がっていている。

 百聞は一見にしかず、最強談義をするよりも作中での戦闘が如実な結果を物語る。

 

「早い早い早い早い!!? お前早くね!?」

「はっはー、追いついてみろ!!」

「ヒャぁぁぁぁぁああああああ!!!?」


 羞恥と恐怖と安心感と、いろんな感情がごちゃ混ぜになったロッソの悲鳴を聞きつつただ単純に面白いから、カッコ良さそうだからという理由だけで全力ダッシュをするシャル。

 その後ろを追いかける黒狼の姿があり、中々に愉快な状況に陥っている。

 

 徐々に追い離される黒狼、若干シャルを睨みながら迫ってきているモンスターことミ=ゴを確認した。

 即座に剣を手に取り、『錬金術』スキルを用いてかかれていた術式を変更する。

 氷から炎へ、炎の剣に変生させてカウンター越しに切り掛かる。


「邪魔だ、つってんだろ!!」


 一撃でバイオ装甲を削り切れていないことを見た瞬間に、蹴り飛ばしそのまま先に進む。

 右からもう一体ミ=ゴがやってきた、ネメアの獅子皮の籠手で殴りつける。

 上から襲いかかってきた一体はローリングで避け、そのままダッシュで走り続ける。

 

 ファースト・サンは温存しておくべきだ。

 少なくとも今ここで使うべきでは無い。

 自滅技の最大の弱点は、大群に対しては無力に等しいこと。

 そして、それ以上に仲間が多い場所では有用とは言えないこと。

 この二点に全てが尽きる。


 Ⅻの難業では最強であるレオトールが補助をしてくれた、だからこそ使用しても問題のない状況が完成した。

 だが今はどうだ? 信頼できる仲間は? 信用できる最強は? ここにそんな存在はいるのか?

 問うまでもない質問ではある、だが確かにそれは事実としてそこにある。


「洒落くせぇ!!」


 背後から追いかけてくる三体のミ=ゴを見ながらそう叫びつつ、さらに追加されてきそうな状況に冷や汗をかく。

 剣を軽く投げ逆手に持ち、そのまま相手に対して攻撃を加えていき攻撃に対するカウンターを行う。

 スキルは使わない。

 動きがある程度強制されるスキルを用いてしまえば、速度を維持するのが難しくなる。

 

「さぁ、皆舞いな空洞で!!」

「歌うなシャル!! いろんな意味で!!」

「ぴゃぁあああああ!! 揺れる揺れてるわよ!?」


 歌を口ずさみ、空中で回転していたシャルの影響でぐったりしていたロッソが再度悲鳴を上げた。

 荒ぶりに荒ぶるその挙動は、ロッソの胸部や臀部を揺らし面白いことになっていた。

 魔女装である以上、大量の装飾があるがその衣装がシャルの動きによって荒ぶりに荒ぶり面白いことになっている。

 視線を向けた黒狼が思わず笑いそうになり、慌ててカウンター越しに襲ってきたミ=ゴの爪を弾く。

 そのまま前方に転がり背後の二体の攻撃をかわして笑いをこらえた。


「悲鳴が面白すぎんだろ!! ロッソ!!」

「むひゃぁぁぁあああ!? 何よこれ!! 怖い怖い怖いわよ!? もうちょっと優しく扱ってくれないかしら!?」

「えー、ちょっと厳しいんだが? オレもそこそこの敵に追われてるし、ぶっちゃけ半分遊びだけど優しく運んでる余裕はない!!」

「残念無念、って訳だ。頑張ってこらえてろ、ロッソ!!」


 再度悲鳴を上げて、急加速急ターン急カーブをする暴走列車なシャルにしがみつく。

 そんな運転をすれば免許返納間違いなしだろう、高齢者と初心者ドライバーはお気を付けを。


 そんなこんなで進みつつ、黒狼たちは第二の休憩地点に到着した。

 ロッソを投げながらローリングし突入したシャルと、投げられたロッソを受け止めるように動いた黒狼。

 互いの行動がほぼ完ぺきに達成された直後、背後が爆発し追いかけてきていたミ=ゴが爆発四散した。


「遅くは……、ないか。ポーションはあるか? あるなら即刻回復しろ。」

「『鎧武者』!? そうかー、お前はここの維持だったモンな!! そっちにいるのはトン三郎か!?」

「そうでござる!! あの化け物のVITが高くて拙者の火力じゃ役に立てないといわれたのでこっちで道を守ってるでござるね。気分は忍び忍べど忍べないスター忍者!! 実態は高速機動で爆弾ばらまく高速忍者でござるよ!!」

「爆弾魔の間違いでは?」


 ロッソの突っ込みを聞かない振りしつつ、一瞬ブレたと思えば直後屋外で爆音が響く。

 その音を聞き、あきれ顔で扉を見ると戻ってきたトン三郎の姿があった。

 その恵体に見合わない急加速は残像すら見えるほどの速度である。

 

「俺、スタミナ管理必要ないから先に行くぜ? シャル。」

「おう、後であの魔女さんは連れて行くから安心してくれよ!!」


 意思を伝えるのならそれで十分、そんな雰囲気だけを漂わせ黒狼は再度走り始めた。

 風が体を通り過ぎるその感覚、神経どころか肉すらないその体躯。

 それを全力で動かし、黒狼は一気に加速する。


 風が、心地いい。


 この暴風のような荒れ狂う風が、言葉にできないほどに心地いい。

 手の武器に刻まれた魔法陣を見つつ、その感想を噛み締める。

 また、モンスターが表れた。

 ミ=ゴが、一体。


「問うまでもない、戦うなど愚の骨頂!!」


 誰にも向けず宣言しつつ、トップスピードを維持し続ける。

 どちらにしろ、先に進めば関係ない。

 強かろうが弱かろうが、最後はファースト・サンで敵の頭におやすみなさいを叩き込むだけだ。

 

 現実であればできないような長時間ダッシュ、もう走った距離で言えば3キロはくだらない。

 直線距離ではそこまででもないにしろ、結構蛇行しながら進んでいる。

 それも外周部を円を描くように進んでいるのだ。

 スタミナが尽きるのも当然の話だろう。


 だがアンデッドである黒狼にそんな話は関係ない。

 

 肉体という枷に縛られない、自由の体現者である黒狼は存分に大地を踏みしめる。

 さぁ、化け物が見えてきた。

 始まる、いまから。

 その高揚感とともに、黒狼は口を開く。


「『夜の風、夜の空、北天に台地、眠る黒曜。』」


 さぁ、始めよう。

 レイドバトルを。

書いている途中で3000文字消えたんだが?

さて、今回は今年最後の更新です。

私は某実況者のバイオ配信を見ながら年越しになりそうです。

皆さんはどんな年越しになりそうですか? ぜひ良ければ教えてください。

では、皆さん良い年越しを!!


(以下定型文)

お読みいただきありがとうございます。

コレから黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『◼️◼️◼️◼️』    (ヴィヴィアン)の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!

また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね

「この点が気になる」や「こんなことを聞きたい」、他にも「こういうところが良かった」などの感想があれば是非感想をください!! よろしくお願いします!!

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