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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章中編『黒の盟主と白の盟主』

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Deviance World Online ストーリー3『作戦会議 作戦前の一時』

 残酷だが、ソレは事実であった。

 ここにいるプレイヤーは戦闘に特化している人間は少ない。

 いや、厳密に言えばヘビープレイヤーとして戦闘に特化しているプレイヤーが少ないと言ったところだろう。

 ここにいる全員は、どちらかといえばライト層でありそうである以上持っている能力はヘビー層より劣るのは間違いないだろう。


「……確かに、そうでござるな……。」

「事実なのは間違いないからな〜……、とは言え直接言われたら心にくるものが……、いや案外ねぇな?」

「カカカカカカ、シャル!! 相変わらずだな、その呑気さは!!」

「おいおい、あんまり横道にそれたらダメじゃ無いの〜、ボクみたいに空気を読まなくちゃ!!」


 だが、重苦しい空気はすぐに掻き消えた。

 騒がしくも呑気な会話が場を塗り替えたのだ。

 呆れた、もしくは怒り混じりの目線が向けられる。

 彼らが空気をかき回し注目を集めたことにより、空気は一新された。

 

「喋るのはいいけど、そこまでにしてね? さて、ここで今から言うのは特攻組と防衛組だ。つまり道を切り開いて、エキドナの元まで辿り着く組とその道を守る組だね。まず確実に決定しているのは、『アイアンウーマン』のポッツと『鎧武者』の武鎧(ぶがい)、彼ら二人は君たちが知っているように二つ名持ちでも防衛に秀でている。逆に攻略で必須となるのは『冒険王』シャルと、『豚忍』トン三郎、そしてそこのアンデッドの黒狼。彼ら三人を主力に据えて攻略を行いたい。」

「質問します、そこのアンデッドの彼は強いですか? 私はこれを疑問に思います。」

「そこは私が保証するわ、彼は弱くはないわよ。少なくともダーディス……、このクランの三席にも劣ることはないわ。」

「ああ、俺がダーディスだがさっき戦ってみた感想じゃ中々強い。勝らずとも劣らずって程度にはなァ? それにそいつは結構な火力を持ってやがる。足を引っ張ることはねェだろう。」


 擁護するように黒狼の実力を把握している二人がそう告げ、他の人間は多少訝しむ様子だったが渋々納得する。

 発言力が違う、少なくとも持っている権力が。

 黒狼はそう思いつつ、何にもしゃべれずに終わる。

 売名行為をしたい、現在無名である黒狼にはそう言う欲求が少なからずあったからだ。


「さて、細かな作戦は省略するよ? ルートと目的を一致させれば問題ないだろうし。それ以上に時間がない、彼らが復活するまであと二十分。それまでに可能な限り貢献度を稼ぐ、ソレが僕の提示した条件だ。そしてみんなはソレに……、協力してくれるよね?」


 声音や言葉は違えど、全員が一斉にそう告げる。

 ソレを認める言葉を。


*ーーー*


 会議が終わり、早速攻略に行こうとした時。

 黒狼はトン三郎に呼び止められた。


「おーい、そこの御仁!! そうそう、骨の黒狼さん!! 少し話したいのでござるが!!」

「ん? 俺? いいけど、なんで?」

「いやぁ、拙者も初めて見る人外種族!! アンデッド!! 少々興奮をしてしまうでござるよ!!」

「は、はぁ?」


 首を傾げつつそう返す黒狼に、トン三郎は興奮したように顔を近づけその体を見る。

 カルシウムの塊、魔力で駆動するソレをみて何が楽しいのかと思わないこともないが、楽しいものは楽しいのだろう。

 黒狼としては有名プレイヤーに顔を覚えてもらえるだけで多少のアドバンテージとなるし、特に問題はない。


「ほぉぉ、この圧倒的な骨!! 骨骨しさ!! 良いでござる良いでござるよぉ!! うんうん!! グロテスクで弱々しい!! 何度も砕いたスケルトンの姿をこんな近くで見られるなど!!」

「ごめん、前言撤回。殴っていいか?」

「いいんじゃないかしら?」

「む!? ひどいでござるよ!!?」


 若干ギャグが混じったを話をしつつ、同時に黒狼は得手物を確認する。

 相変わらずの初期装備だ、だがソレがいい。

 その初期装備を侮るなかれ、ソレは違いなく大英雄にすら通用させた武器であるが故に。

 物々しい装備を着込んだ周りと比べ、確かに貧相な装備をした黒狼だったが決して弱いわけではない。

 何度でも繰り返そう、最弱とは最も弱い存在ではあったとしても不勝の存在ではないのだ。


「遊ぶのも程々にな〜、早く行かなきゃ置いていかれるぜ? あと十分後に門の入り口に集合なんだから早く移動しなきゃな!! オレもあの馬鹿どもを集めたらすぐ行くし!!」

「おっけ、と言うか意外なのは俺たちを集めたのって顔合わせが主な理由なんだな、ロッソ。」

「ええ、ソレに隠したい手札なんかはたくさんあるでしょう? わざわざ細部まで詰めるって言うのは結局嫌われるわ。昔、あの黒騎士相手にどっかのプレイヤーが集まってそう言う問題が発生したのは有名な話ね。」

「過去の教訓に学んだ、ってわけか。」


 このゲームの自由度は酷く高いせいで、PK行為ですら規制される要因になり得ない。

 PvPなど日常茶飯事であり、ゲーム内時間で週に一回程度は軽い大会が開催される程度にはこのゲームでも人気である。

 またスキルの種類は多岐に渡り、プレイスタイルで入手でいるスキルの方向性は大きく変化してしまう。

 そう言う事情がある以上下手に手札を明かすことは、プレイヤーの中で酷く嫌われていた。

 

「とりあえず早く行こう、ポイントの見方はわからないけど稼げるだけ稼ぎたい。」

「ステータスから見れたと思うけど、まぁいいわ。確かにソレには賛成ね、早速移動しましょう。」


 そう言い、移動し始める。

 時は金なり、その言葉通り時間を省く迅速な移動は金銭となる程度に価値があり、ソレを潜在的に理解している黒狼とロッソは早速、足を動かした。

 

 足早にさまざまな情報を共有しつつ、街を歩き抜ける。

 中心街から遠ざかって入るものの徐々に人は多くなり始め、黒狼たちは目的の場所に向かっていることを実感した。

 何故なら人が徐々に増えていっているからだ、そこにいる人々は徐々に増え始め黒狼を奇異な目で見る人間もチラホラと現れ出している。

 若干不安になり出した黒狼は魔術を用いて姿を変え、奇異の視線は大きく減少する。だがそれに反比例するようにロッソに注目を向けている人間が増え始めた。

 二つ名プレイヤー、その中でも数少ない魔女の名を授かっている存在である彼女は当然有名だ。

 本人が宣伝を行う気がないため他の魔女よりも知名度は低いとはいえ、間違いなく彼女は有名なプレイヤーの一人と言えるだろう。

 だからこそ、奇異の視線は減ることはなかった。


「お前って有名なんだな。」

「有名、って言えば有名ね。否定するつもりはないわ、実力に見合ったものであるとは思えないけど確かに私は魔女の名で通っているし。」

「謙遜はよせよ、実力は俺が認めるさ。少なくとも俺にはできないすごい魔術を使える、それだけでお前は俺の尊敬に値するし。ソレに、お前の魔術は俺から見ても分かりやすく作られている。素人の俺が見てもだぜ? 誇れよ、これを謙遜されたら俺の経つ瀬がない。」

「ズブの素人……、と言うほどではないでしょうけど。素人が比類できるほど私は魔術が下手じゃないわよ、とはいえ私の魔術が読み取りやすいって言われるのは嬉しいわね。あのクソ老害どもが作り上げてきた魔術を必死に読み取って簡略化させた意義があるってっものよ。」


 言葉の通り、ロッソの魔術はひどく読み取りやすい。

 言い換えれば、彼女の魔術は教本だ。

 術式に不要な単語を組み込まず構成する文章、ソレは一つの魔術の完成形とも言える。

 黒狼が過去に見た魔術を文章とするのなら、『私は魔術を持って命令する氷の槍が形成され高い威力で発射されると命令する。この命令は必ず実行する必要がある。』という文章であったとしてロッソの魔術を文章に変更するのならば『実行内容 構成→火 形状→プリセット1 射出速度→10 魔力量→10MP』と言った内容だ。

 また速度や形状は形態化された単語が書き込まれており、一見するだけではソレを理解するのは怪しいかもしれないがきっちり確認をすれば容易に理解できる内容だろう。


「というか、クソ老害どもって? 俺は街に行ったことがないから一般的なプレイヤーの情報を知り得ていないんだよ。」

「安心して、一般的なプレイヤーだとあなたを思ったことはないから。さて、クソ老害の話だっけ? アイツらは……、簡単に言えばNPCでの魔術におけるプロフェッショナルね。彼らは自分たちが守ってきた魔術に誇りを持っていて、そこに絶対的な自信を持っているのよ。別にそれだけなら微塵も問題はないのだけど……、本当の問題となるのは彼らがその誇りを傘に着て金だったりアイテムだったり本当に呆れるぐらいに大量に請求してくるのよ。そして教えてくれる魔術は大したものじゃないし。見たらわかるわよ、あのでっぷりとした腹!! あの目!! 何よ!! 最低じゃない!!」

「ドウドウ、落ち着け、餅つけロッソ。いや、餅はつかなくていい、っていうかそんなに酷いのか? ここのNPCは結構リアリティがあるって話は聞いてたけど。実際、俺が見たNPCも人間そっくりだったが……。」

「そっくりなんてものじゃないわよ、本当の人間だわ。少なくとも人間が作り意図を押し付けた存在じゃない。言葉の通り、自意識を持つ人間そのものね。」


 黒狼の驚愕に自分の見解を交えた回答を行うロッソ。

 だが、その見解もあながち間違いではないだろう。

 何せこのゲームはAIが全てを、一から作成した世界なのだ。

 そこに人間らしい意図が介在する余地はない、まるで現実のように。

 

「ほんと、どんな技術を使ってるんだよ。噂に聞けば、通信ラグもないらしいな? しかも火星と地球で。現代の技術としても異常だろ? サーバーどこに置いてんだよ。」

「ラグがないっていうのはよく聞くわね、少なくとも星間での通信は情報の読み取りも含めて一秒以上のロスがあるって話のはずよね? 本当にどうしてるのかは気になるわ。もしもその話が本当なら光以上の速度で情報を伝えられる媒介物質があるって話になってしまうし……。」

「だな、っと。とうとう到着したか、雑談もやめてとりあえずはネロを探そう。」

「え? あ、本当ね。どこか静かだと思ったら……。どこで逸れたのかしら?」


 トン三郎としゃべっていた時に静かに独断先行をしていたネロに今更気づいた二人は、慌てて周囲を見渡すとそこにはシャルに担がれてるネロの姿があった。

 他に、そこにはローラン、アストル、他多数の『十二勇士』のメンバーもいる。

 一応大きく逸れていないことに安心しつつ、人なりを知るために軽く接触をはかる二人。


「お? 黒狼!! お前、コイツから聞いたけどお前らって面白い冒険してるんだってな!? 何やら魔術の達人っていう噂のヴィヴィアンって人に喋り方が古風というか和風って感じらしいあの『妖刀工』千子村正!! いいなー、いいいなー、羨ましいなー。どうどう、どうなんだ? やっぱ村正ってYOUTOUを作れるのか!?」

「五月蝿い、シャル。興奮すんな、とうか一気に答えられないし答える気もないから諦めろ。そっちのロッソに聞いてくれ。」

「私に鬱陶しいのを回さないでよ? めんどくさいことを対処させようという魂胆が見え見えなのだけど?」

「シャルってばー!! 面倒くさいって言われてるよー!?」


 早速興奮した様子で黒狼に詰め寄るシャルを、黒狼はロッソに丸投げしロッソはソレを拒否する。

 ソレを何がおかしいのか笑いながらクルクル踊っているアストルはそのまま地面に倒れ、だが倒れ切る前にその腕をテュルが掴み起こす。

 その起こし方に不満があったのか、オリビエは眉を顰めた。


「私は不満です、なぜそのように助けるのですか?」

「ヌゥ、別に構わんだろう。吾輩は淑女ならば丁寧に救うが……、コレだぞ?」

「淑女です、その事実は真実です。」

「面倒くさい話し方やめて……、よ? 頭を使いたくない……、よ?」


 相変わらずの個性の強いメンバー、だが怒りを覚える程度のモノではない。

 そのまま彼らは話を脱線し続ける。

 会話とはキャッチボールではあるが、彼らの会話はまるで暴投だ。

 キャッチできない球を投げ、ソレを広いそのまま別の人物に暴投で返す。

 他者が入り込めばかなり疲れる会話だろう、慣れていればそこまで疲弊は感じないだろうが。


「吾輩はソフトクリームこそが至高だと考えているのだが!! まさかそれに異を唱えるのか!?」

「ハァ〜!? チョコミントこそが一番かっこいいだろ!! 全くテュルはわかってねぇな〜? オレのアイスクリーム道を語ってやるよ!!」

「違う違う!! アイスクリームはいちご味こそ最高なんだ!! ボクの意見に賛成だよね!? マラッジ!!」

「私が好きなアイスクリームはプリン味です。貴方たちの考えは理解できません。」


 早速喧嘩が勃発している。

 というか、なぜアイスクリームの話になった? この短い話でどうやってアイスクリームの話題に変わった? 本当に謎な話だ。

 横で聞いていた黒狼とロッソもなぜそこまで一気に変わったのかわからず、目をパチクリしながら首を傾げている。

 血盟『十二勇士』、その最大の特徴は身内ノリが酷いことだ。

 クランチャットは勿論のこと、基本的な会話ですらネットミームで溢れており他人が見て共同性羞恥を感じるほどに程度の酷いロールプレイをしているプレイヤーも結構な数存在する。

 どちらかといえば、トップはマシな方なのだ。

 会話が脱線することはよくあるが、空気を読めないアストルですら黙っている時は黙っている。

 一番マシなシャルは結構まともな会話ができ、カッコよければそれだけで傾倒するような性格をしてはいるが交渉は通用する。

 だがメンバーまでそんな真面目な訳ではない。

 有名な事件、事案はいくつもあり火薬を開発しようとし実験を失敗して町の機能を一時的に麻痺させた話は有名だ。

 その事件で作成されたモノが火薬と全く関係のない加薬、つまりインスタント料理に入っている野菜や肉などの作り方だったのもネタでしかない。

 そんなクランが血盟『十二勇士』なのだ。


「……まぁいっか、とりあえずネロも見つかったしいい加減に急ごう。」

「む!? 遅れるのは問題であるな!! ここは一つ、競争と意向ではないか!!」

「ボク、いっちばーん!! 追いつけるもんなら追いついてみろぉ!!」

「『急加速』『突進』、私は負けません。」

「おい、スキル使うのは反則じゃね!? って、負けられるか!! オレも急ぐ、待てー!!」


 各々がそう言いつつポカンと呆けた二人を置いて、全員走り出して行った。

 ハァ、というため息を吐いた黒狼もロッソを手招きしつつネロを見失わないために走り出したのは言うまでもない。

ツッコミ要員くれ


(以下定型文)

お読みいただきありがとうございます。

コレから黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『◼️◼️◼️◼️』    (ヴィヴィアン)の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!

また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね

「この点が気になる」や「こんなことを聞きたい」、他にも「こういうところが良かった」などの感想があれば是非感想をください!! よろしくお願いします!!

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