表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章中編『黒の盟主と白の盟主』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

129/360

Deviance World Online ストーリー3『作戦会議 エキドナ戦』

 第三会議室で待つこと10分程度、忍者服を着た恰幅の良い童顔の男と髪の毛の長いガンナーの装いをしたインキャっぽい女が入ってきた。


「お、有名プレイヤーがたくさんでござるね!! こういう場は初めてでござるなぁ!!」

「あ……、そう。別に私達が一番ってわけでもなかったのね……。」

「ふーん、貴方達も生きてたのね? 『豚忍』に『銃撃魔』さん?」

「え……、あ……。はい、お久しぶりですね……。ロッソさん……、今度火薬貰えませんか……?」


 早速何やら交渉を始めた二人を横目に、黒狼は彼らがどういうプレヤーなのか調べる。

 

 プレイヤー最速、『豚忍』トン三郎。

 技術による最速こそが、『剣聖』柳生とするのならば彼はステータスによる最速に他ならない。

 その最速は驚愕の300km/hに到達する、並大抵の存在ならば彼を視界に捉え続けるのは不可能と言えるだろう。

 体型こそ恵体であるが、ソレは決して遅いことを示すわけではない。


 ガンナーの先駆者、『銃撃魔』ビリー・ザ・ガール

 彼女はこのゲームにおいて1900年代後半から主流に使われてきた武器である銃を再興させた人間であり、その情熱は他のプレイヤーと比較しても非常に高い。

 ただ問題は、彼女の腕前が微妙なため誤射ばかりするという欠点があることだろう。


「どっちも有名なんだな、へぇ……。」

「そりゃ有名に決まってんだろ〜? 掲示板の守護者だぞ?」

「掲示板の守護者って……、いやまぁ掲示板に出てる頻度が高いのはよくわかるけどさ。」

「ほぼ常に出没するんだぜ? そう言われても仕方ないんじゃないか〜?」


 そう言いつつ、シャルも二人に近づいていく。

 どうやら黒狼以外は彼ら二人と知己の中のようで、ある程度は仲良く談笑しているらしい。

 その様子を見ながら、黒狼は掲示板のログを見つつビリーが掲示板とリアルで結構性格が変わる系の人間なんだな〜、と認識する。

 掲示板で結構きつい性格をしている彼女が対面すればこんな風に芋っぽい女性というのは……。


「少し狙いすぎじゃね? 素の性格がコレなら兎も角……、いや俺が言う話じゃないか。」

「女性のこう言うところは口を挟まない方が吉よ、黒狼。確かに私から見ても結構狙ってるようにしか見えないけどこれは素の性格ね、ひどい批判をするのなら……、わかってるわよね?」

「へいへい、そこまで文句を言うつもりもないから安心しろ。あくまで心から漏れ出た感想だよ、女性を怒らせると少し怖い。特にヴィヴィアンとか怒らせたら死ぬまで祟ってきそうだしな?」

「全く怖そうに思ってない言い方ね……、まぁヴィヴィアンの件については同意するわ。確かにあのタイプの人間は怒らせたら後が怖いわね、そうそう怒ることもなさそうだけど。」


 二人と言葉を交わしたロッソが耳ざとく黒狼の言葉を聞き会話を行う、内容としてはビリーの擁護だったが実際彼女も結構あざといとは思っているようだ。

 そしてそのままヴィヴィアンに飛び火する話題、おそらく現実ではレポートを纏めつつコーヒー味の液体栄養補給剤を啜っていた彼女がむせていることだろう。

 

 そんなふうに彼らを歓迎していると、また別の人物が入ってくる。

 今度は聖職者然としたプレイヤーと、ソレに付き従う幼いシスターがいた。


「ふむ、少々遅れましたかな?」

「『脳筋神父』でござるか、お久しぶりでござるな!! 相変わらずの肉体美……、拙者のAGIを越すことはなかろうが一体どれほどのSTRを持っているのか気になるところ……!!」

「まさか、未だ400半ばでありますよ。とはいえ、最近非常に興味深いスキルを得ましてね……、と。そちらの御仁はアンデッド、スケルトン族ですか。」

「ああ、名前を黒狼っていう。そっちの忍者さんもまとめてよろしく。」


 互いに名乗りつつ、硬く手をかわす。

 常に薄っぺらい笑みを、一見すれば聖者のように思えるその微笑みを見つつ黒狼は背骨に悪寒が走るのを感じた。

 油断ならない、そう思わせる気勢がこの男にはある。

 元より聖職者とアンデッドは不倶戴天の存在。

 相容れない存在であるからこそ、そう思うのかもしれない。

 だが、それ以上になんとも言えない何かかがある。

 少なくとも、黒狼はそう感じた。


 ソレに反し、『豚忍』であるトン三郎に対してはそこまでの感覚はない。

 ただの人間、それ以上でもソレ以下でもない。

 強いて言えばその掌が脂肪たっぷりで柔らかいということだろうか?


「ガスコンロ神父様、お席を用意いたしました。どうぞ、お掛けください。」

「ありがとう、ヴィオラ。有り難く座らせていただこう。」


 寛大な声でそういうと、そのまま彼は音もなくその筋肉質な体を椅子に掛けた。

 聖職者のローブに包まれてその筋肉がどのような形を大きさをしているのかは正確に測れない。

 だがそれでもわかるぐらいには、彼の筋肉は大きかった。


 彼が椅子に座り、その背後に佇むヴィオラという女性が静かに武器種としては魔術書判定の聖書を持ったところで再度扉が開く。

 今度登場したのはアストル、そしてその背後に続く複数人の軽装備なプレイヤーだ。

 それが合計五人ほど、入ってくる。

 一人目は金髪が短く切られた女性、二人目は赤髪を長く伸ばした男性、三人目は特徴的な剣と槍を持つ緑髪の女性、四人目は武装の布面積が少ない(とは言え腹回りが出ているだけでありそこまで欲情するような格好でもない)ロリ、五人目はアストルだ。

 それぞれが其々、各々の特徴的な得手ものを持ち中々に個性的な格好をしている。


「やっときたか!! リナルドにオリビエ、テュルにマラッジ!! それとアストル!! 結構遅かったじゃないか〜!! って、来てくれただけで感謝だな!!」

「招集とは、珍しいな。我輩が入った後では初めてではないか? カカカカカカ、同じクランとはいえ対面など何日振りであろうか!! なぁ、オリビエ!!」

「五月蝿いです、テュル。貴方はいつも暑苦しい、だから私はあまり好みません。今度会話するときはもう少し冷静に、それを私は望みます。」

「まぁまぁ、いいじゃな!? ボクは滅多に会わないからこそ、再会の感動があると思うんだよね!! ねぇねぇ、シャルもそう思うでしょ!!」


 さて彼らは誰なのか? そう思う方々も多いだろう、反面おおよそ察しがついているものも多いかもしれない。

 というわけで、彼らの紹介と行こう。

 彼らは血盟(クラン)十二勇士(パラディン・ナイト)』の幹部にして通称十二勇士と呼ばれる二つ名プレイヤー達。

 金髪の女性が『シスコン勇士』リナルド、赤髪を長く伸ばした一人称「我輩」の男性が『司教』テュル、そんな彼と話していた緑髪の女性が『恋する知恵者』オリビエ、そして布面積が少ないロリが『賢馬勇士』マラッジだ。

 全員が個性的な様相をしており、今までに登場したプレイヤーなど比較にならないほどに灰汁が強い。


「これはこれは、知名度こそ低くとも全員がキャメロットの円卓と肩を並べられる人物ではないですか。戦力的にも期待できますね、この巡り合わせを神に感謝しましょう。」

「いやぁ、そこまででもないと思うけど……。というか、オレのクランは連携がないからなぁ……、総合力は期待しないでくれ〜!!」

「リーダーがこんなのって……、クランとしてどうなんだよ?」

否否(ひひ)、別によくあることだと思う……よ? 宜しく、骨の人。」


 マラッジが黒狼の元にトテトテと歩いてきたかと思えば、それだけ言うと黒狼の近くの椅子に座る。

 他のプレイヤーも各々、自分の座りたい場所に座り始めた。

 だが、まだ来客は途絶える様子はない。


 次に来たのは、和風の鎧で全身を覆った黒い男と鉄色の西洋鎧を纏った高身長の一人の女性が入ってくる。

 互いに無口であり、雰囲気の刺々しさから声をかけるのも難しい彼ら。

 互いにそこそこ離れた席に座ると一気に空気が沈み込む。

 いそいそと立っていた他のプレイヤーも同じように椅子に座り、会議場にはある程度の静寂が訪れた。

 その中で、最後に入ってきたプレイヤー達は……。


「ごめんなさい、遅れてしまって……。ささ、『ワンコ探偵』さんとライラプスお姉ちゃんと卍ダークスレイヤー卍さんも空いてる席に座ってください。」

「僕をその名前で呼ぶな!! 全く、なんで教授のジョークがここまで広まったんだよ……。」

「へいへい、俺はこの席でいいかなー?」

「don't have time、とは言えですね。早くすませるに越したことはないでしょう。頑張ってください、プロキオン。」


 レイドボス『魔獣胎母』エキドナ。

 攻略直前会議が、始まった。


*ーーー*


(全く、俺だけ場違いすぎるだろ……? 他は全員かなりの有名人じゃねぇか。)


 二つ名を持っていないと言えば、ダーディスも入るだろうがこの中で完全に無名なのは黒狼だけ。

 そのため若干の劣等感を持っている黒狼だったが、それによって眼鏡に色がつくことはない。

 それどころか、いつになく冷静な目で物事を見ていると言ってもいいだろう。


「さて、司会進行は僕が進めるけど……。その前に自己紹介は必要かな? ここにいる人間の実力はそれぞれがある程度保障しているから僕は疑ってないけど……。」

「不要ね、時間がない。キャメロットのみが一強となり台頭するのをよしとするわけ? 貴方達、『黒獣傭兵団』は。」

「……、確かにそうかもしれない。だけど君たちは本当にそれで連携できるのかい? それに対して確信を持てないからこそ……。」

「舐めないでいただきたい、愚かな子羊を抱えながら戦場を駆け回ることすら我々には可能だ。逆に、貴方は我を信用できないのか?」


 まさか、そう言うように首を振り否定を示した後プロキオンは謝罪をする。

 それに対し言い過ぎたと一言訂正を入れるガスコンロ神父だが、相も変わらずその表情にはなんの感情も読み取れない。


(ロッソは……、ヴィヴィアンの目的を達成するために俺の自己紹介を省略する、それと手柄を上げてより強い武器やアイテムを入手すると読んでいいのか? それとも別の目的が? ……考えるだけ無駄か?)


 一旦、挟まった会話により止まった会話。

 静寂は一時、すぐにプロキオンが会議を再開する。


「あのレイドボス、つまりエキドナは大きく動くことがないです。我々のクランの二席が一度接近し攻撃を叩き込んだとしても、大きく動くことはありませんでした。つまり近づきさえすればどんな攻撃でも通用します。」

「逆を言えば近づけねばあらゆる攻撃が通用せん、そして近づくにはあのミ=ゴとやらを殺さねばならぬ、と言うことであるな? ふむ、中々に難易度が高いではないか!!」

「さらに付け加えると、あのミ=ゴは突破が難しいバイオ装甲という防御を保有しているな〜!! アレはオレの剣でも突破は厳しいぞ?」

「ですね、確かに難易度は高い。ですが、どうにか近づく方法はあります。まず、これを見てください。」


 プロキオンはそういうと、背後にあるボードを手で指す。

 そこに描かれていたのはこのマップの全体像であり地図スキルを用いれば容易に手に入る情報だ。

 そこに書かれている地図には円周上に亀裂が走っており、中心からなんらかの莫大なエネルギーが架けられたことが伺える。

 その地図にプロキオンは魔力を用いて何やら書き込んでいった。


「中心部の丸はエキドナを示しており、今付け加えた線はそこに到達するための道筋ですね。僕の得た情報によればこの経路が最も危険が少なく、そして成功率が高い。理由は……」

「そっちは僕から話そう、探求会所属のロンだ。掲示板の情報からミ=ゴの目的と徘徊ルートなどを割り出した、詳しく話すと長いので今回の戦いと関係性が高い内容だけを話していこう。まず最も重要な徘徊ルートだが、彼らは中心ではなく外周部に多く存在している。中心部の様子は不明、一部の隠密系……、そうトン三郎さんのような隠密などを得意とするプレイヤーにより調べてもらった。とは言えあの母体にここ一時間半で接触できているプレイヤーはいないことを留意していただきたい。さて、話を戻そう。外周部にミ=ゴが多い理由の最大はおそらく資源の採取だと思われる。時間経過及び死亡したプレイヤの数に比例し、ミ=ゴの武装である電気銃などが充実していることを確認した。死亡したプレイヤーから情報を得られていないため不明な部分が多いが……、通常戦闘とは違いデスペナルティとして装備の剥奪などの可能性があることを理解していただきたい。さて、このルートが最も安全な理由だが……。これに関しては単純で、最も破壊痕が少ないルートだからだ。貴方達トッププレイヤーであれば、下手な小細工を弄するより、単純に正面突破した方が良いだろう?」

「我輩からは否定しかねるな、確かに正面突破が一番強い。」

「同じく、私もそちらの方が良い。」


 鉄の鎧を着た女性がそう発言し、そのまま全員が軽く話し出す。

 全ての会話はその思考実験の結果だろう。

 例えば、トン三郎なんかは障害物の多い場所の方が戦闘しやすいと認識している。

 だがシャルやアストルなどは広い場所での戦闘行為の方がやりやすいと感じており、一概にどちらの方が良いとは言えない。

 故に生じたざわめきだったが、それもすぐに終わる。

 プロキオンが手を叩き注目を集めたからだ。


「今描いたルートは予定のルートだから戦いの最中でどうしようもなくなった時は変更する予定、いくつか予備ルートもあるけどそこは今は重要じゃないから割愛だね。あと参加する予定のプレイヤーだけど……、申し訳ないけどこのうちの半分は道中の防衛になると思う。」

「えぇ!? なんででござるか!?」

「トン三郎、僕たちでこのレイドボスを倒すのは非常に難しいんだ。何せエキドナは、二席の彼の攻撃でも表面を軽く抉っただけ。正直、ここにいるプレイヤーだけじゃ火力がどう頑張っても足りない。新しくそこの彼……、スケルトンの貴方ね? 彼が一応ほぼ無制限の高火力技を持って入るけど、これは接近した時に集まってくる雑魚を蹴散らす方針で行く予定だ。僕らが行う目的は、高火力攻撃手段を持つプレイヤーの復活を待つこと。そして、このイベントでの貢献度を稼ぐことに他ならない。わかるかい? この戦いは勝つための戦いなんだ。」


 言い換えれば、絶対にあのレイドボスには勝てないと。

 プロキオンは、そんな。

 そんな酷く残酷なことを言葉にした。

色々出てきましたねぇ。

そして1800ポイント達成!! ありがとうございます!!


(以下定型文)

お読みいただきありがとうございます。

コレから黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『◼️◼️◼️◼️』    (ヴィヴィアン)の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!

また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね

「この点が気になる」や「こんなことを聞きたい」、他にも「こういうところが良かった」などの感想があれば是非感想をください!! よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ