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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章中編『黒の盟主と白の盟主』

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Deviance World Online ストーリー3『トレント』

「よぉ? ヴィヴィアンにロッソ。こっちは程々に面白い物を見つけたぜ?」

「流石です、村正。其れに対して我々は、殆ど何もしてませんね。」

「分断行動の意味、あったか? なぁ?」

「探求会から情報を買いましたので、無きにしも非ずといったところでしょう。」


 そう言い、ふぅっと息を吐くとヴィヴィアンはネロを捕まえる。

 ネロは頭に疑問符を浮かべているがヴィヴィアンはそんなのお構い無しに、ネロを抱き上げた。

 まるで西洋人形を持つお姫様の様な構図、それは酷く美しく可愛げの有るものであり、また同時に侵すことが許されない秘境の神秘を思わせる。

 

「なんで余を持つのだ?」

「ダメでしたか?」

「余は一向に構わん!! 歩くのも楽になるし!!」

「其れはよかったです。」


 百合百合しい華が咲いたところで、話を続けようとする村正。

 だが、些事を気にしない村正と違い黒狼とロッソは説明を求めるようにヴィヴィアンに詰め寄る。

 

「なんで合流と同時にアンタはネロを抱いてるのよ!? 説明!! しなさい!!」

「何となくです、文句はありますか?」

「無い事は無いけどまぁ……、いっか? いや、よくない? ……まぁ、いっか。」

「諦めんなツッコミ役を!! 私だけじゃ間に合わないわ!!」


 そう叫ぶロッソだが他四人は何のその、ツッコミを放棄した四人は話を進める。

 話、つまりヴィヴィアンの考察の成否と言ったところだ。

 ヴィヴィアンは、魔法陣の線の交差点からモンスターが大量に湧き出しているのでは無いか? という考察を行なっていた。

 だが実際、そこにはモンスターは居らず結界が張られているだけ。

 この考察や内容の差異や、猿型のモンスターが持っていた謎の鉄筒。

 これらのイベントに直結するであろう謎を村正はヴィヴィアンに話した。

 

 だが話し始めた村正だったが、その行動は即座にロッソに止められる。


「進みながらにしない? 時間は金なりってよく言うし。」

「儂は構わねぇぜ?」

「ですね、黒狼は?」

「俺も問題ナッシング!! 歩きながら行ったら時間の節約にもなるしな。」


 と、言う事でロッソを先頭に他四人は固まる形で森の中を進む。

 村正の話は決して長くなく、事実を語った後に自分の所感も語るため実際にあった事を非常にイメージしやすい。

 10分も経てば全て話し終え、ヴィヴィアンに聞いた話から導き出される答えを問うようになった。

 だが、当のヴィヴィアンの解答は……。


「ふむ……、私にはさっぱりわかりませんね。」

「いや、手前が考察したんだろうがよ!? なんで全く分かってねぇ!?」

「……、プレイヤーが結界を構築した可能性は? 少なくともここに超人級のNPCは居ないわけだし。」

「無いでしょう。ガウェインでも破ることができない、もしくは副次的作用で高域殲滅を行うほどの火力による攻撃を行う必要のある結界。もしそんなモノを張れるのならとっくの昔に魔法陣を破壊してます。」


 事細かに(ネロを抱きながら)話を聞いたヴィヴィアンはそう断言する。

 ガウェインの持つ太陽の聖剣、その能力を事細かに知っているが故にヴィヴィアンにとって其れで破るのが厳しい結界などプレイヤーでは作ることができないと断言できたのだ。

 

「……一つ、いいか?」

「なんでしょう? あ、私ではなくロッソの方でしたか。」

「うん、まぁ。で、さぁ? 道、迷ってない? 先頭のロッソさんや?」

「ギクッッツツツ!!!!?」


 さて、さっきから一切会話に加わろうとしないロッソ。

 彼女は自分が地図上に描いた魔法陣と、ステータスに開いているマップを見比べながら四苦八苦していた。

 マップを見て地図を見て、其れを何回も行うロッソ。

 明らかに方向音痴な子供が、携帯端末を片手に目的地が記された紙と睨めっこしているようなその姿は迷子そのもの。

 その様子を目敏く見つけた黒狼はニヤニヤと笑いながら、嫌らしく、そのように質問した。

 いわばアレだ、小学生男児がちょっと可愛らしい女子にちょっかいを出すのと同じだ。


「ムキーーーーー!! なんなのよ!! なんで真っ直ぐに行けないのよぉ!! おかしいでしょ!!」

「(村正、さっきからトレント系のモンスターが居るのには気付いてますね? 臨戦態勢を。)」

「(おうよ、方向感覚を狂わせる妖とは厄介なもんだな?)」

「(俺探知とか苦手だかんな? 任せたぞ? 村正とヴィヴィアン。)」


 さて、なぜいい歳した女性であるロッソが森の中で迷っていたのか? 答えは酷く単純で、方向感覚をくるわせるモンスターがいたからだ。

 また同時に短気になりやすい状態異常も振り撒いているらしい、ヴィヴィアンがいち早く気づき全員に『キュア』というスキルを使用する。

 補足するまでもないがあえて補足として付け足しておくが、黒狼がロッソを煽ったのは普通に平常運転である。

 状態異常などは一切関係ない、そもそも状態異常無効を持っているし。


「と言うか、俺の進化はその探索が終わった後? 別にいつでもいいけど。」

「そうなりますね、っと。」

「くるぜ? 先ずは雑兵がな。」


 村正は感じる違和感を飲み込みながら、インベントリから刀を抜く。

 ネロ以外も一瞬で意識を切り替え、各々の得手物を構えると現れたてきにソレを向けた。

 現れたのは、猿型のモンスターと豚頭のモンスターの混合軍だ。

 黒狼は即座に鑑定スキルを発動し、それぞれの名前を確認する。


「フォレストモンキーに、グレートオークってところだ!! 個々は強くないが油断はするなよ!!」

「分かってらぁ!! 抜刀『王花紅紫方(おうかべにむらまさ)』」


 総数は二十程度、今更苦戦する程度の敵ではない。

 空に現れた鞘から刀を抜くと村正は猿の方に斬りかかる、同時に黒狼は槍剣杖から剣を抜くとオークの脂肪に槍を突き刺した。

 

 村正が振るう刀は紫色のエフェクトと共に、鮮血が飛び上がる。

 其れらは村正に降りかかる事なく、また赤い道を形成していく。

 例えるならレッドカーペット、王が通る道。

 そこに、血の花が咲く。


「腹いせよ!! 『ファイア・レイン』!!」

「場所を考えなさい、『【蒼情たる大海】』」


 ロッソが使ったスキル、その延焼を防ぐためヴィヴィアンは周囲を囲むように魔術を展開する。

 早速、水に濡れそうになる村正と黒狼。

 3匹倒した時点で慌てて撤退する二人を尻目に、ヴィヴィアンは魔術を展開した。


「黒狼、魔術を教わりたいと言ってましたね? ちょうど良いですし、実践的なお手本をここで一つ。」

「じゃ、私も有名なテクニックを使おうかな?」


 同時に二人は杖を掲げる、どちらも黒狼の貧相なソレとは違い豪華絢爛なものだ。

 同時に、魔法と魔術が大きく蠢く。

 何故か? 答えは二人が詠唱を開始したからだ。


「『緋色の鳥よ、青き大海を征け。我が血脈こそ母なる海なれば』 後述詠唱というテクニックです、簡略と見せかけての後述といった使い方が便利ですね。」

「これが、魔術への転化よ!! とくと見なさい? 『炎の雨、紅蓮の熱、我が意のままに焼き尽くせ。』」


 直後、魔術の威力が2割増になった。

 詠唱、其れは魔術を展開される時に使う技能にして魔術の効果を高めるモノ。

 魔術の神秘化、魔術に術式外の意味を付与する技法。

 それが、詠唱という行為なのだ。


「基本的な詠唱を全文詠唱とし、鍵言葉のみの場合を簡略詠唱とします。そして、鍵言葉の後に詠唱を行う場合は後述詠唱となります。」

「詠唱が詠唱スキル無しじゃ使えないモノと思ってるのなら勘違いね、詠唱とは魔術のブースターよ? 詠唱スキルはあくまでも詠唱という行為をスキル化し簡略化したモノだわ。」

「……私が説明しますので喋らなくとも結構ですが? まさか、私の究極で完璧な解説が解りづらいと仰るつもりはございませんよね?」

「フン、この理屈屋が!! 私の説明の方が何倍も理解しやすいと思うのだけど?」


 バチバチと視線を交わす二人を尻目に黒狼は、魔法を起動させる。

 もう敵は殆ど倒されており、残る敵のHPはほんの僅かだ。

 放置しても死ぬだろう敵だが、念には念をということで魔法を発動させる。


「『ダークレイン』」


 影の弾丸の雨、それがフォレストモンキーとグレートオークに襲い掛かる…

 ダメージは微量だが、数の暴力で敵を叩きつけ徹底的に嬲り殺す魔法。

 闇という可視化された不実在を証明するかのように、もしくは闇が持つ負のイメージを象徴するかのように。

 数多の黒の弾丸が降り注ぐ。


「よし、討伐完了。」

「「話を聞きなさい!!」」


 聞けるか!! という心の叫びを飲み込み黒狼はすまんすまんと言いつつ両手を合わせる。

 はっきり言おう、二人の解説は前提知識を持たない人間にとって非常に分かり辛いのだ。

 黒狼は属性を表す文字といくつかの単語しか知らない、そんな相手に全文詠唱や後述詠唱などを論じても訳がわかる訳が無い。

 足し算程度しか知らない相手に、+ーの概念を使った√の話をしているようなものだ。

 だが、天才二人には其れを理解できない。

 いや、ロッソはヴィヴィアンの説明を掻い摘んで説明しているが詠唱が魔術のブースターとか何とか言われても理解をできるはずがない。

 何せ前提からして理解していないのだから。


「態々説明してあげてるのになんで聞かないのよ!?」

「愚か、としか言いようが有りませんね。」

「いやいやいや!! 普通に聞いてたよ!? ただ理解を諦めただけだっつーの!!」

「どっちもどっちと思うのは儂だけか?」


 呆れと共に息を吐く村正、ネロはヴィヴィアンに抱かれスヤスヤと寝ているようだ。

 其れを見てさらにため息を吐く村正、彼の心労は止まるところを知らない。


 そしてギャアギャアと文句の言い合いをする3人を横目に、現れた雑魚を切り伏せると村正は刀を一本投げつけた。

 瞬間、明確な違和感を感じ取る。


「ふん、やはり大した仕掛けじゃねぇか。最悪、空間置換も考えたがそこまで上等な敵でも無い。魔払系統を三、四ほどさせば十分解除出来る、か?」

「お? 何々? 余裕に解除可能なのか?」

「はぁ……、で? あっちは良いのか? 手前が中心であんな大喧嘩してんだぞ?」

「問題ねーよ、というかアソコに入る方が余程怖い。」


 コミカルな動作で戯けながら黒狼がそういうと村正は半目で睨み、刺した刀を見る。

 明らかにその空間を中心に違和感が漂っており、また絶賛現在迷っている所から異常を通常であると認識させられていることに気づく。

 状態異常が無効化させられる黒狼が状態異常を受けている、矛盾のように感じるこの現状。

 だからこそ、黒狼はその魔術の仕組みに気づいた。


「視覚じゃなく空間側を誤認識させてるわけね。一直線に走ってもこりゃ無意味か?」

「へぇ? そういう仕組みか。まぁ、どちらにせよ問題ねぇ。儂の刀だ、そこらの雑魚相手なら十分効く。」

「人は其れを慢心って言うんだよ、村正。」

「これは慢心じゃねぇ、自負だ。」


 その言葉と共に、村正は三本の刀を先ほどの一本と合わせ西方四角になる様に突き刺す。

 手で呪印を結び、そして刀の銘を告げた。

 瞬間、刀から細い光が織り成され一つの魔法陣となる。


「ごめん、訂正する。お前のそれは慢心なんかじゃなく、当たり前だわ。なんだよこれ? 神になんか奉納する気か?」

「お? よく分かったな。これは儂がやっている奉納の儀式をこちら側に合わせた代物だ、理屈こそわかんねぇが魔術っていうのは意味を与える行為らしい。んで、儂のする奉納は刀の銘を神に告げ刀の在り方を定める物。」

「刀に刻んだ意味を魔術の媒介、つまり魔法陣代わりにしてるって訳か。ん? ソレなら魔法陣要らなくね?」

「んにゃ、多分必要だろ? 儂の方法は心血を注いだ錬鉄の末に成ったもんだ、万人が真似できる筈がねぇ。凡夫は汎用化された技術を必死に使う以外に方法はねぇだろうよ。」


 ニヤっと嘲笑いながら黒狼に告げる村正だが、黒狼はその嫌味を意に介さず現れたモンスターを見る。

 いや、意に介していないわけではない。

 若干涙目になり、凡夫と馬鹿にされたのが悔しいようだ。

 村正もソレに気づいたのか、若干焦っている。

 だが次の言葉を聞き、その心配は杞憂であったと認識し直した。


「村正、目の前の敵を倒す方法。あるか?」

「……、っは!! 笑わせてくれらぁ!!!」


 ニヤリと犬歯を覗かせながら、村正はインベントリから新たな刀を取り出す。

 取り出した刀の鞘はいくつかの布で覆われており、只ならぬ雰囲気を醸し出していた。

 いよいよ村正の本気が見れるのか!? そんな興奮と共にワクワクとした顔で眺める黒狼。


 同時に、目の前のモンスターが……。

 いや、モンスターたちが一斉に黒狼たちを見た。

 総勢20は超えている、そしてそのモンスターの顔に正気は無い。

 理由は見れば分かった、全員に根っこが絡みついているのだ。

 

「一種のアンデット、か? ま、殺せば死体に変わり無いだろ。」

「たかが腐乱死体程度に梃子摺んじゃねぇぞ?」


 背後でいまだに喧嘩している二人、其れを無視しながら村正は抜刀する。

 同時に黒狼も剣を抜いた、共に敵の方へ杖を向ける。


 同時に、スキルを発動した。

 黒狼は闇魔法の『ダークバレッド』、村正は刀術の『一刀両断』。

 互いに展開したスキルは敵を突き破り、その先のモンスターにもダメージを与える。

 与えたダメージは軽く100を超えこの周辺の雑魚敵に十分以上の破壊を齎した。


「うむ、悪かねぇ!! 良い出来だ、さすが儂。『撫で斬り』」

「自画自賛ここに極まれりかよ!! っと、地味に強いな? クソが!! 『ウォーターボール』!!」


 稀にも使わない魔法を使った黒狼はあヴィヴィアンとロッソの喧嘩に物理的に水を差す。

 頭から水をかけられた二人の怒りの矛先は黒狼に向かい、そしてようやく現状に気づき魔法を展開した。

 現れる火の雨と風の刃の嵐。

 二つは混ざり合いながら火災旋風となり、しかしながら被害を拡大させる事なく森の一部を焼き尽くした。


「……炎に耐性あり、ですか。」

「植物のくせに!! とっとと燃えなさいよ!!」

「喧嘩すんなバーカ!! 有効手段を考えやがれ!!」

「糞!! 魔法耐性持ってやがるのかよ!!」


 四人が一気呵成に攻撃を開始する。

 襲い掛かるはトレント、及びソレに支配されたモンスター。

 対するはただのプレイヤーたち。

 勝負は、今始まった。

犬猿の仲であるヴィヴィアンとロッソ。

コイツらマジで仲悪いな……。


(以下定型文)

お読みいただきありがとうございます。

コレから黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『◼️◼️◼️◼️』    (ヴィヴィアン)の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!

また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね

「この点が気になる」や「こんなことを聞きたい」、他にも「こういうところが良かった」などの感想があれば是非感想をください!! よろしくお願いします!!

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