Death208
「タナトス……?」
「死を司る者……?」
「ん? シエルは生死を司る者では無かったか?」
リンとマリ、そしてムシュタルの言葉である。
そう、ムシュタルの言う通り。
自分は死だけじゃない生も司っている……らしい。
「ほぅ、やはり──か」
『やはりというのは?』
「我の身の一部であり、死を司る神としての1番の機能であるその目だが、我にはそれを御せなかったのだ。そう、何かが致命的に足りず、且つそれが我には分からなかった。だから、我はここに囚われる時にその目に真の所有者を己で見定められるように運命へと投げ入れたのだ」
「えっと──ごめんなさい。囚われる時というのは……?」
タナトスの言葉に疑問の余地が多いのは当たり前だった。
そして、ナビが気付いたら質問してしまっていたようだった。
「ふむ、ナビだったか? そうか、我が囚われた理由か。それは我が死を司る神だからだ」
「えっと──?」
レイが流石にそれだけだと分からないと反応を示すとタナトスは暫く沈黙した後に口を開く。
「元は世界はエネルギーが不足していたのだ。その中でも生命や世界を増やそうとしていた。いや、神が思想の数や世界の数だけ増えて、そのエネルギーの確保や管理のために更に世界は必用だったのだ。我らは信仰や生命という魂の輪廻から生まれる微かなエネルギーが我らのエネルギー源なのだ。だからこそ、最初はそれを爆発的に増やしたり、信仰を仰ぐ目的もあって世界同士を争わせる為に、現在のゲームシステムを採用したのだ。お主達の話を聞く限りは1つの世界でその遊戯は完結していたが、遥か昔は多数の世界で競わせては、時には直接争わせては大量のエネルギーを確保していたのだ」
「胸くそ悪い話だな……」
「だが、俺たち人間も似たような事をやってるか」
タナトスの話にシュンとバルは苦虫を噛み潰したような顔になる。
「問題はそこからだ。いずれかはエネルギーがほとんど問題ない……いや、過剰に集まったのだ。だが、我ら神はそこで意見が分かれた。娯楽に乏しい我らだ。このまま遊戯を楽しむ者、それを遠巻きに見る者、反対する者に分かれた」
「えっと、タナトスさんは……」
「どちらについたの?」
マリとリンが質問する。
「我は当たり前だ。反対する者だ。我は死を司る者──無意味な殺生など好まん。……だが、問題があった。そのゲームでは大量に生命が簡単に失っていく、大量の死など並みの神では扱えないのだ」
「読めてきました──」
ムシュタルが、頷く。
「そうだ。彼らは強硬手段に出た。元々反対する者は少なかったのだ。それらの神を駆逐、または幽閉しては我を捕らえに来た。我は神たちの中でも弱い方なのだ。いや、顔が利くという意味では強いとは自負しているが、我自身は弱い」
「何故ですか?」
ナビが質問する。
「我は先ほど言った通り、我としての死を司る者として一番重要な器官である、その目を使いこなせなかったからだ。シエルと言ったな? 世界はどう見えている? 我にはボンヤリとした死の気配しか分からなかった」
『僕は──』
そう、最初は数値化された死だった。
その後にこの目を受け入れ初めてからは死の匂い、そして生と死の気配や色。
今や世界を掌握すれば全て……いや、神だろうとその生死を与奪は掌握出来ると理解させられてしまっていた。
「そうだろう──な。そうか、そこまで……、だから生死を司るなのか。ステータス機能とは実に愉快だな」
「この機能は神様が作ったの?」
レイが質問する。
「そうだ、我ら最初の神々が根幹を作った。それからは新しい神々含めてバージョンをアップしたり、色んな仕様を書き加えたりオリジナリティを持たせているはずだ」
『教えて欲しい──僕にタナトス……あなたの事を教えてくれたのはデーモンロード……そうゲームでは表記されていた存在からだ。あなたと会うことが出来れば、このゲームを本当の意味で終わらせる事が出来ると……』
「ふ、ふはは……。なるほどな──」
僕の質問にタナトスは笑っては何かを納得するように頷いたように見えた。
「いくつか、訂正がある。我が終わらせるのではない。我に会うことが出来るようになっていれば、シエル……お主が終らせる事が出来るのだ。そして、本当の意味での終わりというのは──通常の終わりはそれを仕組んだ神の手のひらの上での終わりだが、我と出会うことで、ゲームの仕様を知ることが出来たお主ならば、逆に神を御する事で自分で望み選ぶ終わり方を選択出来るということだろう」
『えっと、それは──』
タナトスの言葉に言葉が詰まってしまう。
僕が終らせる──?
「ふむ、お主達がここに来たという事は、何かしらのゲームをクリアしてのゲーム内と世界の歪みの中でしか存在し得ない我へと続くゲートを通ったと言うことだろう。ここの時間は長く居ても、世界の流れる時間は……ほんの数秒だが、急いだ方が良いだろう」
そう、言いつつタナトスは我を拘束する枷を外してくれないかと言ってくる。
『──分かりました』
タナトスからの死の気配は無い。
むしろ、色濃く生の気配がこれでもかと流れてきている。
そして、タナトスを拘束する鎖はゴーレムと同じ仕様で出来ていたが……、自分の手に掛かれば──死の核を壊すことで、枷はどんどんと外れていくのだった。




