Death154
『ここは──』
「シエル──?」
「シエル? ナビさん?」
声をお互いに確かめると同時に繋いだ手を認識する。
一先ずは別々に飛ばされていないことに安堵を覚えていると──。
「むっ──? 我の出番はまだのはずだが……」
奥の方から暗闇の向こうから声が聞こえて来る。
パチンッ──!
と、指を鳴らす音が響くと同時に──。
ボッ! ボッ! ボッ──!
と、周囲の蝋燭台の蝋燭に火が灯り始めて周囲が見えてくる。
「えっと──」
ナビの言いたい言葉は分かった。
「魔王城──」
レイの言葉がその答えだろう。
魔王城──。
その最新部にピッタリだろう。
そして、声のした方は玉座のある場所……そう、要は──。
「攻略前のお客人? ということか? 神よ──無粋だな、こんなことは初めてだぞ? ──いや、待てよ?」
独り言だろうか、呟いていたが途中から訝しげに自分をジッと見てくる──名前は文字化けしており分からない。
「お前ら? どうやってここに来た? 正規のルートもクエストもゲームとして存在していないはずだ。これは神の用意した盤上外の出来事。この会話もあいつらは見れていないはずだ」
『神? 盤上? ゲームとして存在? 会話……?』
「あぁ、そうか。滑稽だな──お前らは何も知らないと来たか。いや、駒役に成り下がった我もお前らの事は言えぬか──だが」
『──』
「お主……名はなんという?」
『シエル──』
「その目、雰囲気──あの方に似ておる。そうか、その目でここを……はは、該当する者がついぞ現れたということか!!」
「あなたは何を言って──」
「あぁ、面白い。 面白いな──あの方の願いが芽吹いたのか」
「あの方って何……?」
ナビとレイも会話に加わるが、目の前の相手に声が届いているのかは微妙な所だった。
「シエルと言ったな?」
『は、はい──』
「我にその力、その可能性を見せてみよ」
「「──!!」」
2人が一気に構えるが、自分は構える事もしない。
目の前の相手からは死の気配が一切しなかったからだ。
「なるほど、視えるか。あの方より、馴染んでいるようだ」
『あの方って──?』
「我に力を指し示すのだ。シエル、お前にその力があると我が認めた時にそれを伝えよう。神へ叛逆するのだ──その力はあの方がその為に放った最期の希望だ。我にその片鱗を魅せてくれ」
『それはどういう──』
「むっ。奴らめ気付き始めたか──お前達を……インフェルノエリアへ送り返そう。この事は他言無用だ──口にするのもダメだ。奴らへ伝わる。いいな?」
『「「────」」』
皆で頷くのを見て、満足そうに頷いた目の前の相手は自分達へと手を翳すと転送陣が展開される。
「そうか──祝福が必要か。希望を魅せてくれた礼だ、餞別を我から与えてやろう」
転送の発動に包まれながら、何かを贈られるのを感じる。
そのまま一瞬の浮遊感と真っ白な世界の後は──。
パタッ──と、インフェルノエリアの中心地……ポータル地点へと地に足を付けていた。
両隣ではナビとレイが不思議そうに周囲を見つつ、安全を確認していたが──3人で視線を合わせては頷く。
言葉にするのは先程してはいけないと言われていたのが今も覚えていた。
ただ、本当にあったことなのか──その確認の為に視線を合わせては頷いたのだったが──。
【congratulations!】
大量の経験値
大量のSEED
大量のスキルポイント
──アイテムボックスの更なる拡張&保管機能の更なるアップグレード
※収納時の自動修復の付与(増大)
【インフェルノの祝福を授けます】
【インフェルノの加護を獲得しました】
※1日1回リミッターを解除します
※00時に効果のリセット
※特殊効果(該当──シエル、ナビ、レイ)
※各種ステータスの一時的なリミッター解除、UP量は祝福者に依存(成長加護)
まるで、それが現実であったとアナウンスが教えてくれるようにログが流れていく。
そして、自分とナビとレイ──3人とも改めて表情を固くして頷くのだった。