Death143
「ッ──!! ムーンライト!」
背後で指揮を執っていたムシュタルの声がこちらにまで響いて来る。
広範囲の持続的な回復魔法だ。
「あなたは──あちらの仲間の回収を! 急いで!!」
「君はあちらの防御を──早く!!」
させません──! ヘブンレイ!!
「ッ──!」
明らかにムシュタルの余裕の無い声が──こちらにも戦況が伝わってくる。
「シエルくん──後は頼めるかな?」
「シエルくん──私も……すみません」
リンとマリの2人が謝ってくる。
『えっ──?』
「私達の──」
「そう僕たちの戦略が状況判断の悪さがこうなったのは分かってる」
「だから、せめて後ろの彼らを助けに──」
リンとマリが凄く申し訳無さそうに頭を下げ──。
「やめな!」
「お前らを信じてるあいつらが見てるだろ?」
それを止めるようにシュンとバルが2人を止めていた。
「「えっ──?」」
「あぁ──辞めだやめ!」
「こんな姿見たら、なんかダサいじゃん? 俺たち?」
「シュン? バル?」
「あなた達何を言って──」
「ハッ! 俺たち? だって上に立ってるんだよ、だから分かることもある」
「俺たちは光なんだよ。光がそんな姿見せるな! 俺たちだけの時にしろ──」
だから──。
そう言って2人は迫って来ていたレッサーデーモンを一気に薙ぎ倒すと──。
「後ろは俺たちが行く」
「あぁ、これは貸しな? お前達はお前達のやるべきことをやれよ?」
「「シエル──? 後は頼んだわ? 死ぬなよ?」」
そう言って彼らは一気に薙ぎ倒した敵の跡を見ることも無く、一気に後陣へと下がって行くのだった。
「あっ──」
「──ありがとう」
そんな2人をリンとマリが見届けて──改めて自分達へと目を向けてくる。
「僕たち」
「私たち」
「「共に行かせて下さい」」
そして、2人とも武器を構え直す──。
「うん、宜しくねリン、マリ──!」
「宜しくお願いします」
『あぁ──でも、まずは──』
先程のシュンとバルの一撃でレッサーデーモンは払い斬られていた。
残るはグレーターデーモンと──あのアークデーモンだ。
ただ、この目に映って来るのは飛躍的に能力アップして、こちらの死の気配が濃くなった現状だ。
けれども、まだ相手への死の線が見えている。
これは勝利の道標でもある。
ハジマリの武器を構え直して──僕たちは再度アークデーモンへと挑み始めるのだった。