Death107
ゴーン──。
──!!
掛けてくる自分を捉えたのか動揺を隠せない様子のアークエンジェルは慌てて迎撃に入っていた。
ゴーン──。
目の前で産まれて来るエンジェルを足の踏み場にして──次々と倒しては粒子に変えつつ──。
ゴーン──。
跳躍を繰り返して──天へと逃げようとするアークエンジェルへと到達する。
──!!
信じられないという雰囲気をアークエンジェルから感じ取る。
自分でも信じられないのは分かる。
この目を通して──いや、自分の捉えたアークエンジェルの死への道筋がここまで導いてくれた。
数ある可能性の中で自分の望んだアークエンジェルの死へとここまで運んで選び取った結果が今だ──!
ゴーン──。
分かってる。
分かっている──!
ここでの自分のアークエンジェルへのLast Attackは──!
『カタストロフィ──!!!!』
全ての魔力を──今持てる全てを注いで高密度な魔法剣技にしたカタストロフィをハジマリの武器を携えて──。
祝福──!!
ナビのパッシブ魔法が更に自分のステータスを底上げする──!
生命を失わさせる──凶刃の一撃を目の前まで迫ったアークエンジェルへと喰らわせる──!
「────!!!!」
声に鳴らない断末魔が世界を覆う。
鐘の音色は途中で消える。
そして、断末魔がか細くなってくるとアークエンジェルは粒子に──周囲に展開していたエンジェルも粒子へと変わっていく。
そのまま自分は地上外を落下していく──曰く、それは死だ。
死にたくないな──。
そう、思いながら自由落下を始める身体を──。
「シエルぅぅう────!!」
こんな大声は初めて聞いた──。
レイの悲鳴に似た大声と共に血の糸が無数に伸びてきて自分を絡め取っていた。
「シエル──! 諦めるのはあたしは許さないよ!!」
その血の糸をナビが両手で掴んでは一気に引っ張り寄せると自分の落下方向が──彼女達の方へと進路が変わる。
そのまま、一気に地上へと──いや、彼女達の方へと向かっていき──。
動く体力すらない自分は彼女達に抱き止められては、そのままギュッ──となすがままに抱き締められるのだった。
【congratulations!】
頭上にはその言葉が表示されている──。
遅れて──。
【Last Attack Bonus!】
【First clear!】
【──以降、再戦は任意となります──】
【──24階層のボス攻略のお知らせ──】
【──25階層へのルートが確保されました──】
全世界へのアナウンス──。
更に遅れて──。
【最速解放者─congratulations!】
あぁ──こんなのも合ったな──。
そんな風に思いながらも未だにナビとレイに抱き締められる中で大量の経験値とスキルポイントが入ってきているのだった。
「やっぱり──やるじゃねぇか」
「こら──まだ動いちゃ──」
声が聞こえて何とか振り替えるとボロボロのハンネスとそんな彼を支えるセーレが居た。
辺りを見渡すと半数近くは散ったのだろうか──。
人は居なくなっていた。
先に降りたのではない。
脱落して行ったのだ。
「か、各自──現状の確認を……」
何とか声を出しているガイウスもボロボロだ。
彼のギルドメンバーも数人しか残っていなかった。
「あいつは──全く──早く迎えに行かないとね」
「あ、姉御──! まだ動ける身体じゃ!」
「私はあいつの前ではいつだって素敵で居たいんだよ!」
サブマスの事だろうか?
彼が目を白黒させながら喜びそうな言葉をヴァネッサは吐き出していた。
そして、何とか起き上がっては25階層へと──。
【──Last Attack者のみ開放可能──】
25階層への扉の案内がヴァネッサが触れた瞬間表示される。
『ナビ──レイ──』
分かってる。
うん──。
2人は自分を支えて立ち上がってくれて、扉へと一緒に肩を支えて歩いてくれる。
そして、扉まで辿り着き──その光の扉へと手を触れると扉の輪郭が輝きを放ったと思ったらスゥーと扉が輝きを放ちながら開放される。
「ほら、先に行きな! これはあんたの──シエルの特権だよ」
先に行きたい衝動はあるだろうヴァネッサにお礼を言って──3人で25階層へと続く階段へと足を踏み入れる。
そのまま降ると──。
【エデン──休息エリア】
そう、表記されて25階層の開放と活性化がされる。
20階層が天空をイメージした楽園なら、休息エリアは地上の楽園をイメージしたエリアになっていた。
広大な楽園が世界を満たしている光景だった。
暫く見惚れていたら──後ろから次々と攻略したメンバーが降りてきては同じく皆目を奪われていた。
「綺麗──」
あぁ──。
そんな声がチラホラと聞こえてくる。
ナビとレイも途中でやっと意識を戻して、自分を支えながら休息エリアの宿へと自分をベッドまで運んでくれて──そして、その日は初めて夜に邪眼や呪いを掛け合ったりする事なく3人で同じベッドで泥のように眠りに就くのだった。