Death1
「シエル……! 目の前だ!」
『いや、待って──』
僕は視界の数字を読み取る──。
あそこの岩影は数字が少ない。
『岩影に隠れるんだ!』
「分かった!」
目の前にはドラゴンが居る。
自分の周りの数字が相対的にはね上がって行く。
数字が多すぎる、能力を落とすよう意識を……。
視界がクリアになっていく、仲間の頭上の数字と点在する数字のみになる。
ちなみに目の前のエンシェントドラゴンの数字は1だ。
これでも倒せないのか──。
古代龍は強い。
当たり前だ。
だが、誰もクリア出来たことが無いのはゲームとして異常だった。
最高装備、最高のステータス、最高のスキル、最高のメンバー。
今それが揃ってるはずだった。
仲間の1人の数字が急上昇して100になる。
──と同時に古代龍の爪で抉り飛ばされてデータが消し飛ばされる。
銀貨や装備の幾つかが散乱する。
クソっ! やっぱりダメなのか?!
仲間は皆まだ希望を持っている。
でも、僕の目には古代龍の僕だけが見える数字が0になっている。
0とは死なない。
死なない数字だ。
それはもう覆らない事を意味している。
『もうダメだ!』
「何を言っている! 最高のメンバーだ! お前も死神と言われてるが、最強の後衛だろう!!」
『ッ!』
──とりあえず、やられた仲間の装備を掻き集める。
あっ! もう1人の仲間の頭上の数字も急上昇して100に──いや、何人も?!
ブレスか──!
そう思った時は仲間は皆、ブレスに呑まれて貨幣や装備が散乱しながらデータが消えていく。
クソっ──!
集中するんだ!
視界に数字が蔓延る。
あっちはダメだ!
ここは行ける!
爪の攻撃を避ける。
全部が100?!
ブレスか!
バリア──!!
自分の周囲の数字が10に納まる。
でも、10は死亡へ近づく──。
ヒーリング──!
自動回復をかけて仲間の装備や貨幣をかき集める。
よし──!
目の前を見たら全てが100のマップの世界になっていた。
なんだこれ……、これって……本当にそうなのか?
クリア出来るのか?
その日はレイド──いや、世界中のゲームプレイヤーでこの古代龍に挑んでいた。
内容はこいつを倒さなければ世界が終わるというやつだ。
皆、最高峰のプレイヤーだった。
仲間もそうだ。
世界中が挑んだ。
けれども世界中の人が死んだ──いや、データが吹き飛ばされた。
『エスケープ!!』
僕は緊急脱出の魔法を唱える。
そして、マップ上空へと上がって行く中で──このゲーム天空の城エデンのMAP全体が50階の最下層から上層の1階部分まで全てが数字が100に蔓延っているのが見えてしまった。
『は? ──ははは、嘘だろ?』
その日、僕以外を残して天空の城エデンの世界中のログインしていたプレイヤーは全滅した。