四十四日目 事件
遅れて申し訳ありません。
m(_ _)m
俺は背伸びをして体をほぐしていると……
「直哉ー! あの事聞いたか?!」
俺は竜二が居る方向の耳、つまり右耳を手でふさぎながら「何がだよ」と言った。
「昨日の夜ここで殺人事件が起きた事だよ!」
「……それで、その話の信憑性は?」
竜二が「それは……」と言っている側で奈穂さんが「大分高いわ」と腕組みをしながら言った。
竜二は俺の横に立って奈穂さんは俺の机に寄り掛かっていた。
「……そうですか……」
「おい。言っとくが俺は殺ってねぇからな」
「わかってるよ。こんな状況で冗談言う程バカじゃない」
「ならいいけどな」
「それで誰なんですか?」
一時的に皆が押し黙った。
俺が「どうかしたんですか?」と聞く前に後から来た昇が「黒嶋西佳だな」と言った。
俺達は呆然としていた。竜二も知らなかったらしい。そういえば今日は黒嶋さんを見ていない。黒嶋さんは転校初日から学園に来るのは早かったのに。
だが、昇の次の一言で安堵した。
「……と言っても死んではいないけどな。今は安静の状態らしいな」
昇がいつから俺達の会話を聞いていたのか、竜二に「だから殺人事件じゃなくて未遂だな」と後付けした。
「誰が犯人なんだ?」
これに答えたのは奈穂さんだった。
「今のところはわからないわ」
「ただ……」と勿体振った言い方を奈穂さんはした。
「男らしいわ」
今のところ分かるのは犯人は男。この学園の生徒の確率が高いという事。この学園は塀が高いし塀を乗り越えられても大丈夫な様に塀の内側には溝があった。溝の奥には少し高い壁があって俺達がその溝にはまらない様に作られた。言わばここから先は行けないバリアの様な物だった。昔この塀を昇って学園内に入った者が居るらしく、それでこの対策を考案されたらしい。凶器は家庭科室の包丁らしい。家庭科室に置いてある机の上に無造作に捨てられていて家庭科室にあるはずの包丁が一本なくなっていたらしい。凶器に使われたであろう包丁を入れると数がぴったしだった。黒嶋さんを発見したのは学園の生徒だった。その生徒の証言だと脇腹から血が大量に出ていたらしい。今警察が来て一人一人取調べを行っていた。さすがに一日で全員と会話するのは無理があるのとこんな状況では勉強が教師も生徒も身が入らないので今日中に取調べをする人だけを置いて今日は自宅待機になった。
帰宅途中にちづ姉と会った。
全学年強制帰宅になったので別におかしくもなかった。
ちづ姉の顔は重苦しい感じを背負っていた。
俺は何も言わずに……いや、何も言えずに帰宅したのであった。
俺とちづ姉の二人は居間に行って椅子に座っていた。
沈黙を破ったのは俺だった。
「……聞きましたか?」
ちづ姉はその言葉にハッとして俺に驚いた顔を向ける。
だが、すぐに暗い顔をして俯いた。微かに顔を縦に動かして頷いて見せたのは気のせいではないだろう。
俺はまた事件の事を考えていた。
そこで俺はふと、疑問を持って思い切ってちづ姉に聞いてみた。
「どうして犯人が男だと思ったのでしょうか?」
ちづ姉はしっかりと答えてくれた。
「……最初に黒嶋さんを発見した生徒が言ったんです。……発見する前に男とぶつかったと……」
「……そういえば発見場所はどこだったんですか?」
「……その生徒の教室……1-Aだそうです」
この後にちづ姉があの事件について知っている事を聞いたが俺が聞いたのと何も変わっていなかった。