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俺の学園生活  作者: BJ
31/45

三十一日目 千鶴

今日は五月五日。

祝日。こどもの日。


「・・・・ねえ、直くん。昔の私を覚えていますか?」

ちづ姉の顔は真剣そのものだった。

いつもなら自分の事は『お姉ちゃん』なのに『私』ってだけでも真剣なのが分かる。

「・・・覚えていますよ」



昔のちづ姉・・・

ちづ姉は初めからこんな人ではなかった。

昔は話し掛けても睨んで来たり・・・悪い時は無理して見向きもしなかった。

俺はちづ姉の声を聞いた事がなかった。

でも、任された仕事(家事)はちゃんとしていた。

仕事をしていた時のちづ姉はまるで言われた事だけを黙々とするロボットの様だった。

愛想が悪かったのは俺にだけではなかった。

お母さん・お父さんにもだ。

でも、お母さん・お父さんは『仕方ない』と言って辛そうな顔でちづ姉を見ていたのを俺は覚えている。

初めてちづ姉の声を聞いたのは・・・・・・




「・・・じゃあ、お母さん・お父さん・直くん・私で冬休みにスキーに行った時の事は覚えていますか?」

俺は頷く。

「あの日、直くんが遭難した事があったよね・・・あの時、私は直くんが決められた道を外していたのを知っていた・・・見ていたのに私は直くんを・・・・・・見捨てた。ごめんなさい!謝っても許してくれないのは分かっています!・・・・・私は人殺しです!私はたった一人の弟を・・・直くんを殺した犯罪者です!」

ちづ姉が土下座をして謝っている。

「・・・ちづ姉・・・別に良いです。元々、道を間違えた俺が悪いんですから・・・・・後、俺を勝手に殺さないで下さい」

俺はちづ姉に笑いながらそう言った。

「でも、殺した様なものなんです!私があの時ちゃんと『そっちは駄目』だと言っていたら直くんは・・・遭難しなかった!・・・もし、あの日直くんが見つからなかったと考えると・・・恐くて・・・私は・・・」

「・・・ちづ姉・・・じゃあ許しますよ」

「えっ?」

ちづ姉が顔を上げる。

その顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。

「許すと言ったんです。許してもらったんですからもう自分を責めない事、いいですね?」

ちづ姉が顔を下げる。

「・・な・・お・・・くん」

「なんですか?ちづ姉」

「・・・・・・ありが・・・・とう!」

ちづ姉が俺にしがみつく。



「・・・・また、ですね・・・ちづ姉」


あの日。

俺が見つかった後。

ちづ姉が俺に最初に言ってくれた言葉・・・・・・・・・





『ごめんなさい』





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