二十九日目 バスケットボール
今日は五月三日。
祝日。憲法記念日です。
「直哉!パス!」
俺は竜二からバスケットボールを渡されてレイアップシュートを入れる。
俺・竜二対神谷・昇で2対2のバスケをしている。
「ハンデやハンデ、ほな行くでぇ」
神谷が俺達に突っ込んで来る。
それに当たるは俺。
俺は神谷の進むルートに割り込む。
「・・・・にっ」
神谷が笑った顔を見せて前を向いたままでのバックパス!
「なっ!?」
神谷の後ろにいたのは昇。
昇がボールを受け取ると足を曲げて上に高く飛び上がる。
スリーポイントシュートだ。
昇がボールを放とうとした時、昇の前から何かが出て来た。
竜二だ。
だが、昇は平然とボールを放ってスリーポイントを決める。
「甘いな。それぐらい予想してたな」
ここまでの点数は25対33で神谷・昇の優勢。
神谷はスピードで勝負して来ても技術はかじった程しかないから案外簡単だ。
33点の八割を入れた昇の方が強敵だった。
昇は今バスケ部に入っているから当たり前だろう。
むしろ、たった8点差しかない方が凄かった。
それは俺・竜二は運動が普通に出来て神谷が昇の足を引っ張る所が唯一の勝てる所。
だから8点差しかない訳だ。
つまり、この中で神谷が一番弱いのだ。
「ほらほら来な!全部ワイが倒してやるさかい」
一番威張っているのも神谷だった。
普通に神谷からボールを取って竜二とランパスを入れながら進む。
俺・竜二対昇で2対1の勝負だ。
俺は昇から一メートル離れた位置でスリーポイントを狙う。
だが、昇はすぐに間合いを詰めて来て俺がシュートフォームを崩す。
崩れながらも俺から横に五メートル離れた位置にいる竜二にボールをパス。
竜二は俺からボールを受け取ると少し進んでからジャンプシュートでツーポイントを狙う。
しかし、また、昇が竜二の前で手を高く伸ばす。
竜二はその体勢のまま後ろにボールを投げる。
そこにいたのは俺でスリーポイントシュートで入った。
それから少しして最終結果。
32対37で神谷・昇の勝利。
「それで直くん負けたよね」
「はい・・・ってちづ姉!見てたんですか!?」
ちづ姉が親指を立てて(グッ)とする。
見てたらしいです。
いつの間に!?
「直くんの行動など、全てお見とうしです!じっちゃんの名に賭けて!」
「俺のじっちゃん賭ける程凄い人じゃないしそれパクリだからっ!!」
「駄目だよ直くん。人気を取る為には色んな物に乗らなくちゃ」
「そっちの方が駄目だから!っていうかちづ姉、小説の事知ってたんですか?」
「天野くんに教えて貰いました」
ちづ姉が『えっへん!』と腰に手を当てる。
「という事で色んな物に乗っかりましょう!」
「駄目ですよ!」
「直くんだって乗ってるでしょう?」
「乗ってません」
「ソフ〇バンクに乗ってます!」
「違います」
「まだ、白を切るつもりですか?証拠が出ているんです!白状しなさい!そんな子に育てた覚えはありません!」
「なんか取り調べみたいになってるんですけど!?」
「・・・直くん、いつからこんな嘘付きになってしまったの?お姉ちゃんは・・・・・お姉ちゃんは・・・・・・・・・・・お姉ちゃんは!」
「・・・・じゃあ、ちづ姉はこんな俺は嫌いですか?・・・俺を棄てるんですか?」
「・・・・直くんっ!」
ちづ姉が俺を抱きしめる。
「そんな事しない!直くんを棄てたりなんかしない!・・・いつまでも面倒は見るからね。直くん」
最終結果。
俺の逆転勝ち。