二十日目 訪問
今日は土曜日。
俺は今、校長先生に会えと言われ。その人物のマンション前にいる。
「会えば分かると言っていたから俺の知っている人なんだろうけど、このマンションに住んでいる知り合いはいないぞ」
俺は見るからに高そうな高級マンションを見上げる。
俺は軽く深呼吸してから中に入る。
702号室のインターホンを鳴らす。
・・・・・・・・・・・
『・・・・はい』
電話の向こうからは男の声。
「あ、あの!西谷直哉ですけど!その桜林学園で!校長先生が!」
『・・・クッ、アッハッハッハッハッハッ・・・・・』
向こうから笑い声が聞こえる。
『そんな堅くならなくて良い。
知らない人じゃあるまいし』
「・・・誰かわからないんです」
『・・・ああ、そういう事か。俺の名前を聞いてないからだな。でも、名前を聞いた所で意味はないがな。俺、名前変わってるし。まあ、入って来ると良い。誰かは会ってからのお楽しみという事で』
(プツッ)
通信が途絶えた。
702号室をノックした。
「・・・どうぞー」
俺は中に入る。
中もかなり綺麗である。
洋風になっていてわざわざスリッパも用意してくれた。
「こっちだ」
俺は声がした方に歩を進める。
俺はすぐに顔を見るとその人物は・・・・・忘れた。
顔は覚えてるというか会った事はあるような感じなんだけど・・・名前を覚えてない。
「西谷久しぶりだな」
「・・・・誰でしたっけ?」
「・・・・本当に?」
言葉の代わりに頷く。
この人は黒髪で男性の割にはだらーんとかなり長い髪をしている。
年は見た目四十代だ。
「西谷の両親と一緒によく集まった事あるだろう?西谷の遊び相手もしてあげただろう?覚えてないか?」
首を横に振る。
「・・・・・・お前の母親の兄だよ」
「・・・・・・・・・・・・・ああ!!」
「思い出したか!?」
「全然」
「・・・・・・・・」
「まあ、お母さんの兄なんでしょう?親戚って事で納得したから良いじゃないですか」
「・・・・まあ、そうだな。それで我慢しよう」
「それで用事ってなんですか?」
「ああ、ちょっと西谷に頼みがあってな・・・俺の事も知らないなら俺の娘の事も知らないな?その娘の学園初の友達になってほしいんだ」
「・・・学園初?転校ですか?この時期に?」
「そう、俺も一週間前に引っ越して来たばっかりでな友達が学園に一人でもいると友達が出来やすいって聞いたから西谷頼むな」
「まあ、別に良いですけど・・どんな人ですか?」
「明日お前の家に行くから分かる」
「なんでですか?写真でも良いじゃないですか」
「写真じゃあ限度があるだろう?それに挨拶はしておいた方が良いと思うが?」
「・・・・そうですね・・・まさかこの為だけに俺を呼んだんですか?」
「ああ」
「明日でも良くありません?」
「予定があったら嫌だからな」
「じゃあどうして内密にした方が良いんですか?」
俺は前校長先生に言われた事を尋ねる。
「その方が面白いからだ」
「・・・・じゃあどうして校長先生から俺に来るよう言ったんですか?校長先生も忙しいでしょ」
「一番芹沢と仲が良いんだ。だから芹沢に頼んだ」
芹沢というのは校長先生の名前だろう。
「わかりました。それじゃあ最後に一つ。あなたの名前はなんですか?」
「お兄ちゃんと呼ん・・・」
「嫌です」
「・・・ああ、そう。じゃあ黒嶋と呼んでくれたら良い」
「わかりました。それじゃあ失礼します」