表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 金谷羽菜
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/156

第8話 結太、ギリギリで遅刻を回避する

 結太達が学校に着いたのは、朝のHRが始まる五分前だった。

 龍生のお陰で遅刻は(まぬか)れたものの、結構ギリギリな時間だ。二人は早足で昇降口へと向かった。



 昇降口前の階段を上がったところで、


「遅いッ!! 何をノロノロしていたんだ、二人ともッ!?」


 鋭い声が飛んで来て、結太はギョッとして足を止めた。

 声のした方へ目をやると、腰に両手を当て、仁王立ちしてこちらを睨みつけている、咲耶の姿があった。


「ああ、咲耶。ちょうどよかった。授業が始まる前に、君に確認したいことがあったんだ」


 咲耶の登場に、内心ビクついていた結太だったが、龍生はビクつくどころか、ホッとしたような顔をして、彼女の方へ近付いて行く。

 何事かと、咲耶は目をしばしばさせていたが、龍生はそんなことにはお構いなしで、


「今朝、校門の近くで藤島さんに会った?」


 彼女の両肩に手を置き、単刀直入(たんとうちょくにゅう)に訊ねる。

 咲耶は再び目をパチパチさせてから、眉根を寄せて首をかしげた。


「イーリスにか? いいや。会わなかっ――」

「そうか、よかった。ならいいんだ」


 最後まで聞かずに応じると、龍生はニコリと微笑む。イーリスに会わなかったのなら、当然、国吉にも会っていないはずだと、判断したのだろう。


 一方咲耶は、何故そんなことを訊ねられたのかわからず、(いぶか)しげに龍生を見返していた。

 しかし、すぐにハッとしたように振り向くと、壁掛け時計に素早く視線を走らせた。


「マズい、HRが!――ええい、クソッ! 楠木に言ってやりたいことがあったんだが……仕方がない。昼休みにするか」


 悔しげにつぶやく咲耶に、結太は鼻白(はなじろ)んだ。それから彼女に気付かれぬよう、小さくため息をつく。



 何を言おうとしていたのか知らないが、どうせ文句に決まっている。

 朝っぱらから、昼休みが来るのが憂鬱(ゆううつ)になってしまうようなことを、言わないで欲しいものだ。



「ほらっ。教室まで走るぞ、二人とも!」


 一気にどんよりと落ち込んでしまった結太には目もくれず、咲耶は一方的に告げると、階段を駆け上がって行った。

 龍生も軽やかな足取りで後を追い、結太も浮かない顔で続く。



 昼休みといえば、すっかり定着してしまった、龍生と咲耶、結太と桃花、そしてイーリスを加えてのランチタイムも、どうにかならないものだろうか。


 特に、イーリスの家で()()()()が起こってからというもの、桃花はだんまりだわ、咲耶は睨んで来るわ、イーリスはやたらと(から)んで来るわで、落ち着かない日々が続いていた。


 購買で、好物の〝焼きそばとチキンカツのWサンド〟を無事GET出来た日でも、全然美味しく感じられず……。

 とにかく、ここ数日は針の(むしろ)状態で、昼食を楽しむ余裕などなかったのだ。



(ああ、オレの平和なランチタイム……。いつになったら戻って来るんだ?)



 二階の廊下で、まずは咲耶と、次に龍生と別れた後、結太は二年三組の戸を開けた。

 自分の席の方へ目をやると、(すで)にイーリスは着席しており、結太に向かって、ひらひらと手を振っている。


 いったい誰のせいで、こんな遅刻ギリギリに、登校する羽目になったと思っているのだろう?

 結太は呆れ、軽くイーリスを睨んだ。


 それでも彼女はケロッとした顔で、結太が自分の席まで歩いて行くところを目で追っていた。

 そして、彼が着席したと同時に、


「おはよー、結太。間に合って良かったわね」


 などと声を掛け、ニコリと微笑む。



 普通の男であれば、〝天使の微笑み〟とでも称してしまいそうな、とびきり可愛らしい笑顔だった。

 だが、今日の結太には、小悪魔――いや、悪魔の笑顔にすら思える。



「なーにが『間に合って良かった』だ。よくもぬけぬけと、そんなことが言えたもんだな」


 ムスッとした顔でつぶやき、もう一度睨んでやると、イーリスはひょいと肩をすくめ、


「あら、だって。あれは結太が悪いんじゃない。か弱い女の子一人くらい、自転車の後ろに乗せて行くくらい、どーってことないと思うのに……意地悪するんだもの。アタシだって、もう少しで遅刻するところだったのよ?」


 悪びれもせず、まるで結太が悪いかのように言ってのけ、今度はこれ見よがしに、口をとがらせてみせる。

 これにはさすがに呆れ返り、結太は一瞬、ポカンと口を開けたまま固まってしまった。


「……あのなー……」


 ようやくそれだけ声に出すが、ふと、前方に視線を感じ、反射的にそちらを向くと。

 桃花とバチっと目が合い、結太はハッと息を呑む。

 後方に顔を向けていた桃花は、慌てたように前を向き、うつむいてしまった。



(伊吹さん……。まだ、怒ってんのかな……?)



 正直なところ、結太には、ここ数日、桃花に避けられている理由が、どうしてもわからなかった。



 確かに、驚かせてしまっただろうし、目撃した瞬間は、結太がイーリスを襲っているように、見えてしまっていたかもしれない。


 だが、その翌日には、咲耶が事情を説明してくれ、龍生も、イーリス自身も、ハッキリと疑惑を否定してくれた。とっくに誤解は解けているはずなのだ。


 それなのに、未だ彼女は、結太と目を合わせようともしてくれず、話し掛けようとしても、逃げるようにどこかへ行ってしまう。


 昼休みだって、結太の前で黙々と弁当は食べているが、積極的に話の輪に加わろうとはせず、咲耶に話し掛けられた時だけ、言葉少なに返す程度だった。



(理由はよくわかんねーけど……オレ、嫌われちまったのかな……?)



 そう思ったら、頭と肩に大きな鉛を乗せられたように、ズシンと気持ちが重くなった。



 あの事件が起こるまでは、少なくとも、嫌われてはいなかったはずだ。

 普通に会話も出来るようになっていたし、話の最中に、笑ってくれることも多くなっていた。


 だが、今の二人の関係は――。

 彼女と話せるようになる前より、明らかに状況が悪化している。〝ふりだしに戻る〟どころではなく、むしろ、〝ゲームオーバー〟に近いのではないだろうか?



(チックショォオオオ……ッ!! これじゃ、告白するどころじゃねーじゃねーか!!……詰みだ。完全に詰んじまったぁあああッ!!)



 決して振り返ることのない桃花の後姿を、結太は絶望的な気持ちで見つめる。それから頭を抱え込み、机に突っ伏すと、


「えっ?――ちょ、ちょっと、どーしたのよ結太? いきなり頭なんか抱えて……。頭痛? これから授業始まるのに、大丈夫? 保健室行った方がいいんじゃない?」


 気遣(きづか)わしげに、イーリスが声を掛けて来る。


 心配してくれるのはありがたい。

 ありがたい……が、桃花との関係にひびが入ってしまったのは、イーリスが原因のようなものなのにと、多少イラッともしてしまう。



(……いや、待て。落ち着け。イーリスの家で起こったことは、べつにイーリスが悪いってワケでもねーだろ。Gが出て来たのは、あくまで偶然だ。イーリスが、Gを見るだけでパニック起こしちまうのだって、仕方ねーことだろーが。誰だって、苦手なもんのひとつやふたつ、あるもんだし……)



 そこまで考え、結太はますます気が滅入(めい)って来た。


 今の思考は、丸っきり八つ当たりではないか。

 いつまでも告白出来ないでいる自分の不甲斐(ふがい)なさを、誰かのせいにしたがっているだけだ。



 ……そうだ。

 元はと言えば、自分に意気地(いくじ)がないために、告白を先延(さきの)ばしにして来てしまったのがいけないのだ。

 イーリスのせいではない。自分のせいだ。



「……最悪だ」


 ボソッとつぶやくと、耳聡(みみざと)くイーリスが反応し、


「ええっ? 最悪って……。ちょっと結太、ホントに大丈夫? そんなに辛いなら、保健室に付き添ってあげましょうか?」


 尚も心配そうに、声を掛けてくれるが、結太はのっそり体を起こし、首を左右に振った。


「いや、ダイジョーブだ。病気とかじゃねーから。……ありがとな、心配してくれて」

「そ……そう? ならいいけど……」


 イーリスがそうつぶやいた後、前の戸がガラリと開き、担任が入って来た。

 何人かの生徒が、『先生、遅刻ー』などと言い、(はや)し立てる声をぼんやりと聞きながら、結太は再び机に突っ伏し、大きなため息をついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ