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両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 金谷羽菜
第4章

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第10話 各々、龍生と咲耶に何があったか推測する

 咲耶に手を引かれ、長テーブルの一番端の隣に、成り行きで座ることになった桃花は、目をぱちくりさせながら、隣の咲耶の様子を窺った。


 咲耶は両手を膝の上に載せ、その手をギュッと握り締めつつ、真っ赤な顔でうつむいていた。

 赤くなっているだけでなく、どこか、緊張しているような様子も見て取れる。


「……咲耶ちゃん? あの……どうかしたの?」


 小声で訊ねると、咲耶はビクッと肩を揺らし、


「は……はっ? な、ななな何のことだっ? わ、わた…っ、わたわた私っ、は――っ、べべべ、べつにっ、ど、どーもしないっ、ぞっ?」


 どう考えても、何かあったとしか思えない動揺っぷりで、目を白黒させている。

 困惑した桃花は、咲耶がこうなってしまった原因である人物――龍生へと視線を移した。


 咲耶が変になったのは、龍生がダイニングルームに入って来た時からだ。

 彼が原因としか考えられない。


 桃花は疑問を投げるように龍生をじっと見つめ、彼はそれに気付くと、困ったように微笑した。

 それから、咲耶と桃花の方に向かって、歩いて来ようとしたのだが、近付く前に咲耶が、


「来るなッ!!」


 いきなり鋭い声を上げ、彼を制した。


「……咲耶?」


 当然、龍生は驚いたように目を見張る。

 咲耶は恋人の方を見ようともしないまま、


「頼む。頼むから来ないでくれっ!!……今は……今はまだダメなんだッ!!」


 今度は泣きそうになりながら、懇願(こんがん)するかのように叫んだ。



 龍生も、そして桃花も、その場にいる人間全てが、咲耶のことを呆然と見つめていた。



 ……いったい、何がダメだと言うのだろう?

 『今はまだダメ』――ということは、この先、『ダメ』ではなくなる時が来るのか?



 皆、内容がわからないまま、二人の言動を注視していた。

 すると、


「わかった。俺に近付いてほしくないなら、そうしよう。……君の気持ちが落ち着くまで、ね」


 龍生は咲耶に向かってそう言うと、彼女からだいぶ離れた位置にある椅子に、ゆっくりと腰を下ろした。



(なんだなんだっ? いったい、何があったってんだ? 保科さんが別荘に戻って行っちまった後、龍生も追ってったけど……仲直り出来なかったのか?……いや、でも……国吉さんのことがあって、イーリスに説教した後は、特に不機嫌な様子は見せてなかったよな? 保科さんと何かあって、険悪な感じになっちまった時は、いつもはすぐわかるもんな。龍生、普段はポーカーフェイスなんて得意中の得意だけど、保科さんが関わってる時だけは、ポーカーフェイスなんて、出来なくなっちまうんだもんな。だから、ケンカにはならなかったんだなって……仲直り出来たんだなって、ホッとしてたのに。……違ったのか?)



(どうしちゃったんだろ、咲耶ちゃん? 秋月くんから、スマホで『夕食だから、ダイニングルームに集まって』って連絡受けたから、下りて来たんだよね? スマホで話してるってことは、ケンカなんてしてないはず……って、思ってたのに……。違ったのかな? 咲耶ちゃんの様子からすると、怒ってるって言うよりは、困ってる、恥ずかしがってる……って感じの方が近いと思うんだけど……。う~ん……気になるよ~~~。何があったの、咲耶ちゃ~~~ん?)



 結太と桃花は、二人の仲を心配し、ハラハラしていたのだが。

 イーリスと東雲の見解は違っていた。



(あの二人……怪しい。怪しいわ。咲耶のあの……『今はまだダメ』とかってのも、怪し過ぎるくらい怪しい――!……まさか、アタシ達が別荘にいない間に、秋月くんが咲耶に何かしようとした……とか? それを咲耶が(こば)んだから、『今はまだダメ』ってセリフに繋がるの?……でも、あの二人って、アタシが転校して来るちょっと前から、付き合ってたのよね? だとしたら、交際開始から、二ヶ月以上経ってるはず。……その間、二人には何もなかったのかしら?……んん、キスくらいはしてると思うけど……。だからやっぱり、秋月くんがキス以上の関係に持って行こうとして、失敗した……ってこと? だとしたら、咲耶のセリフにも納得出来るけど……。でも、失敗したんなら、秋月くんは、もうちょっと落ち込んでなくちゃおかしくない?……見たところ、咲耶に拒否られたにもかかわらず、妙に穏やかな顔してるし……。うぅ~ん、謎だわ~~~。気になるわ~~~)



(坊ちゃん、とうとう初体験を……。ついに、大人の階段を上っちまったんですね?……わかります、わかりますよ坊ちゃん! ずっとお側で見守らせていただいてたんですから! 坊ちゃんの、余裕あるあの表情……。保科様に拒絶されちまってたら、あんな清々(すがすが)しいお顔は、ぜってー出来ねーはず! 初体験は、大成功だったんですよねっ!? 保科様の『今はまだダメ』。……あれは、照れてらっしゃるんだ。大人の経験しちまった後の、何とも表現しがたい恥じらいがそーさせてるんだあーそーだそーに違いねえッ!!……くぅぅッ! 後でサギと祝杯あげなきゃな! おめでとうございますっ、坊ちゃん!!)




 ……果たして、誰の見解が正解なのか。はたまた、誰も正解してはいないのか。


 それぞれの思惑が(うず)巻く、混沌(こんとん)としたダイニングルームで。

 各々(おのおの)は、黙々とおかずを皿に盛り付け、席に戻り、黙々と食べ進める――という行為を複数回繰り返してから、おもむろに席を立った。

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