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両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 金谷羽菜
第1章

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第18話 イーリス、夏休みの予定を聞き出すため龍生に迫る

「『既に予定が決まっている』……って何? いったい、どんな予定なの?」


 出端(ではな)(くじ)かれて興醒(きょうざ)めしつつも、即刻(そっこく)立ち直り、イーリスは興味津々(きょうみしんしん)という感じで、前傾(ぜんけい)姿勢で龍生に迫る。

 龍生は一瞬、教えるべきか躊躇(ちゅうちょ)したが、黙っていてもすぐにバレてしまうだろうと思い直し、『四人で別荘に行くんだ』と正直に伝えた。


「別荘ですって!? 四人でって……まさかホントに、四人だけってことはないわよね? 大人も、数人くらいは付き添うんでしょう?」

「それは……」


 これも、正直に言うべきだろうか?

 龍生は今度こそ逡巡(しゅんじゅん)した。



 秋月家所有の無人島なのだから、危険な人物が入り込むようなことはないだろうと、秋月家当主(龍生の祖父)からは、四人のみでの滞在を許可されていた。


 島までは、秋月家所有のヘリコプターで、龍生専属のボディガード(兼、雑用係)の東雲(しののめ)に送ってもらう。


 滞在中に必要となる、一週間分の食料は、事前に運んでおいてもらえるし、途中で必要なものが出来たとしても、東雲に連絡を入れれば、すぐに運んでくれる手筈(てはず)になっていた。


 別荘はオール電化で、水道も使用出来るし、自家発電装置や、地下倉庫には、非常食や災害用キットなども完備されている。

 これだけ揃っていれば、もしもの時でも、数週間程度は持ち(こた)えられるはずだ。イーリスにも、『高校生だけで別荘に滞在するなんて』と、非難されることはないだろう。


 しかし、龍生もまだ、イーリスがどういうタイプの人間なのか、把握(はあく)出来ていない。

 正直に全て教えてしまって、問題はないのかどうか、今の時点で判断するのは難しかった。



(教室では、誰に聞き耳を立てられているかわからないしな。妙な噂が立って、問題にでもされたら、それこそ面倒なことになるし……。仕方ない。ここは、念のためにごまかしておくか)



 そう判断すると、龍生は、イーリスにニコリと笑ってみせた。


「もちろん、家の者も数名同行するよ。未成年者だけでは、咲耶や伊吹さんのご両親も、心配なさるだろうからね」


 龍生の話が、聞いていたこととは違っていることに、三人は驚き――特に咲耶は、何か言いたげに、龍生をじっと見つめた。


 だが、龍生は落ち着いた様子で彼らを見返した後、微笑を浮かべ、小さくうなずいてみせる。

 彼の目は、『ここは俺に任せろ』とでも、言っているかのように見えた。


 何か考えがあっての発言なのだなと、即座に理解した結太らは、特に訂正(ていせい)することなく、黙っていたのだが……。



「ああ、そうよね。無人島に行くのに、四人だけのはずないわよね。大人が一緒にいなきゃ、何かあった時大変だもの。……でも、そっか。無人島かぁ……」


 イーリスは胸の前で両手を組み合わせ、何故か、うっとりとした顔でつぶやくと、


「よし、決めた!! アタシも一緒に行かせてもらうことにするわ、その無人島――秋月くんの別荘とやらに!!」


 ガタッと音を立てて席を立ち、高らかに宣言する。


「ええッ!?」


 当然のことながら、結太達は驚きの声を上げた。

 何かとお騒がせなイーリスだが、まさか、四人で行くと言っているところに、強引に加わって来るなどとは、思ってもいなかったのだ。


 呆然とする四人に、イーリスは尚も続ける。


「ああ、心配しないで? 別荘までは、うちのヘリかクルーザーで送ってもらうから。滞在中の食費も宿泊費も、ちゃんとお支払いするわ」



 ……そういうことを、心配しているわけではないのだが……。



 あまりにも勝手なイーリスの発言に、四人が二の()()げずに固まっている間も、彼女は嬉々(きき)として話し続ける。


「無人島の別荘だなんて、面片会の最初の活動場所にはもってこいよね! バイト以上に、素敵な経験が出来そうだもの!……あぁ~っ、楽しみぃ~~~っ! この夏は、みんなでたっくさん、楽しいことしまくりましょうね! なんたって〝面片会〟だもの。その名に恥じない活動をしなきゃ!」



(……おいおい。こっちの都合も考えず、勝手に一人で盛り上がっちまってるぞ? どーすんだ、これ?)



 結太はチラリと、龍生の様子を窺った。

 彼は口を一文字(いちもんじ)に結び、(わず)かに睫毛(まつげ)を伏せて、何か考え込んでいるように見える。

 隣の咲耶に目を移すと、明らかにムスッとした顔で、黙々(もくもく)と弁当を頬張(ほおば)っていた。



(ヤベーな。なんか、マズい雰囲気になっちまったぞ。二人とも、家でも学校でも、ほとんどイチャつけねーから、別荘に行くの、楽しみにしてたんだろーに。イーリスも一緒ってなると、面片会の活動がどーのとかって言ー出したりして、なかなか二人きりにはさせてもらえねーかもしんねーしな。そりゃー、不機嫌にもなるか)



 彼らに同情する一方、己のことについても考えてみる。


 龍生には、


「悪いが、別荘ではなるべく咲耶と二人きりになれるよう、協力してくれ。その代わりと言ってはなんだが、俺も、おまえが伊吹さんと上手く行くよう、可能な限り協力する。二人きりになれる機会を、出来るだけ多く作ってやる」


 というようなことを、事前に告げられていた。


 龍生は咲耶と付き合っているだけでなく、婚約者でもあるのだから、べつに、結太が協力する必要などないのではないか――と訊ねると、


「いや。伊吹さんも別荘に行くとなると、事情が違って来るんだ。咲耶はいつでも、俺より伊吹さん優先だからな。彼女が一人で寂しそうにしていようものなら、絶対に彼女の方に行く」


 などと、妙に自信満々に言い切るのだった。


 結太も、咲耶の〝桃花愛〟の強さは、今までずっと、(はた)から見ていて知っている。軽々しく、『そんなことないだろ』と、気休めを言うことも出来なかった。

 確かに、桃花が『一人にしないで』と頼んだりすれば、迷うことなく、咲耶は彼女の(そば)居続(いつづ)けるだろう。



(だから二人で協力し合って、お互い、好きな人と一緒にいられる機会を、少しでも多く作ろうって、龍生と話してたのにな……。イーリスが加わるとなると、なんか、ややこしーことになりそーだよなぁ……)



 もうすっかり、自分も行く気になっているイーリスだが、龍生はどう出るのだろう?

 島も別荘も、龍生の家が所有しているものだ。龍生が一言『ダメだ』と言えば、どれだけ行きたがったとしても、彼女が共に行くことは出来ない。


 だが、さっきから、『面片会の活動スタートの場所が、個人所有の無人島――しかも、別荘だなんて素敵よねっ』などと、キャッキャとはしゃぎまくっているイーリスに、そんな無情なことを告げられるだろうか?



 ……龍生であれば、告げられそうではあるが……。



 結太は、いったいどうする気だろうと、先ほどから黙考しているらしい龍生を、盗み見てみる。

 そして彼の表情から、(いま)だに答えを出せずにいるらしいと知ると、ハァ~と大きなため息をついた。

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