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両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 金谷羽菜
第6章

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第5話 咲耶、イーリスから贈られた水着に激怒する

 水着を広げてみた咲耶が、思わず大声を上げてしまった訳は、デザインの()()()にあった。


 形は一応、ワンピースタイプと言えるのかもしれないが……。

 上下は、前身頃の中心部分だけが繋がっていて、両脇はガッツリ開いている。

 後ろから見たら、ビキニにしか見えない。しかも、上半身の後ろと、下半身の両脇は、(ひも)で結ぶだけ――というデザインなのだ。



(なっ、なななな何なんだこれはっ!? ビキニじゃないって言ってたのに、腹部の中心部分しか、上下繋がってないじゃないか! しかも、紐で結ぶだけだなんて……。こ――っ、ここここんなのっ、激しく動いたりしたら、結び目が(ほど)けてしまう恐れだってあるんじゃないのか!?)



 そう思ったら、頭のてっぺんから足のつま先まで、一瞬にして熱くなった。

 ある意味ビキニよりも、着るのに勇気がいるのではないだろうか?



(うぅぅ……っ。イーリスめぇえええ――っ! 『ビキニ以外のタイプ』だと言っていたから、ろくに確認もせずに、持って来てしまったじゃないかぁああッ! こんな恥ずかしいデザインだと知っていたら、スクール水着の方を持って来たのに……。うぅぅぅぅ~~~っ、いったい、どーすればいーんだ!? 秋月には、『水着に着替えて来る』と言ってしまったし……。でも、こんなものを着るワケには……)



 咲耶はどうにも腹に()えかね、ビーチバッグからスマホを取り出した。

 素早くタップし、イーリスに『何なんだ、この水着は!? ビキニとたいして変わらないじゃないか!』とメッセを送る。


 だが、一分待っても、二分待っても、三分待っても返事が来ない。

 それどころか、既読にすらならなかった。


 咲耶はますますムカついて、今度は電話を掛けてみた。

 ……やはり、いくら待っても出ない。


「チクショウ!――何故だッ!? 何故出ない!?」


 腹が立って、バッグの中に、スマホを叩きつけるようにして投げ入れた。


 文句を言ったところで、今更どうにもならないのだが……。

 どうしても、何か言ってやらなければ、気が済まなかったのだ。



 咲耶がイーリスに連絡を入れていた頃、向こうの島では、写真撮影が始まっていた。

 そちらに集中していたイーリスが、スマホの着信音に気付かなかったのも、無理のないことではあった。



 だが、そんなことなど知るはずもない咲耶は、



(あああっ、もうッ!! いったいどーしてくれるんだ!? まさか、スクール水着を取りに行くためだけに、東雲さんに来てもらうわけにも行かないし……。この水着を着るのも……うぅぅ、メチャクチャ恥ずかしいっ! 絶ッ対、無理だッ!!)



 イーリスがプレゼントしてくれた水着を両手に持ち、ひたすら途方(とほう)に暮れていた。




 その頃。

 咲耶から『おまえも用意しておけ』と言われてしまった龍生は。

 意味も分からぬまま、言われた通り水着に着替え、咲耶が洗面所から出て来るのを待っていた。



(……まったく。どういうことなんだ? ドアを勢いよく開けて入って来た時の咲耶は、どこか吹っ切れたような顔をしているように見えたから……てっきり、〝大人のキスより先へ行く覚悟〟を、決めて来てくれたのかと思ったんだが……。急に『海に行く』などと言い出して、どういうつもりだ? 返事を長いこと待たされたあげく、今度は着替えまで待たされるとは……。相変わらず、咲耶の行動には驚かされるばかりだ。……まあ、そこが彼女の、魅力のうちのひとつでもあるんだが)



 椅子に座って手足を組み、ひたすら黙考している間にも、洗面所からは、咲耶の驚いたような声や、怒っているような声、困惑したような声までが聞こえて来る。

 気になって、様子を見に行こうと、何度も椅子から立ち上がったりもしたのだが……。


 咲耶のことだ。

 そんなことをすれば、『何でもない! 勝手なことをするな!』『私が出て行くまで、大人しく待っていろ!』などと言って、怒りを(あら)わにするに違いない。


 彼女の身に危険なことが起こりでもしない限り、そっとしておく方がいいのだと、龍生は判断した。



(……しかし、それにしても遅いな。水着に着替えるだけで、十数分も掛かるとは思えないが……。まさか、中で倒れている――ということはないだろうな?)



 常に落ち着いている龍生だが、さすがに心配になって来た。

 やはり、様子を見に行った方がいいのだろうかと、椅子から立ち上がった瞬間。

 ようやく洗面所のドアが開き、中から、咲耶の()()()がひょっこりと現れた。


「……咲耶? ドアから顔だけ出して……何をしているんだ?」


 思わず訊ねると、彼女は()で上がったタコのような真っ赤な顔をし、


「い――っ、今から出て行くが、絶対絶対、笑ったり、変なこと言ったりするなよ!?……いいか!? 絶対だぞッ!?」


 何のことやらわからないが、そう言って龍生を睨みつけた。

 龍生は彼女の言動に戸惑いつつも、『あ、ああ……。わかった』と、とりあえずは素直にうなずく。


 咲耶は一度頭を引っ込め、またしばらく、中で何やらためらっているようだったが、再び大声で、


「いっ、いいか!? 今から出て行くが、本当に笑うなよ!? 絶対絶対笑うなよッ!? 少しでも笑ったり、変なこと言ったりしたら、すぐに東雲さんに電話して、迎えに来てもらうからなッ!? いいな!? 約束したからな!? 絶対に守れよ!?」


 早口で告げると、思い切ったように洗面所のドアを開け放ち、野生のイノシシのような勢いで、龍生に向かって突進して来た。

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