プロローグ
続くのかわかんね
神様転生とかそういったこともなく、俺は転生した。
転生した、と言っても俺が転生したのは、現代日本であるが。
目が覚めたら赤ちゃんで……とかそういうのでもなく頭をぶつけたら〜みたいな奴である。
思い出したのは五歳のとき、ジャングルジムから落ちたときである。なんてありがちな……ありがちではないがありがちな話だ。
体が女になっていたとか、他にも色々あったが……まあ、どうでもいい、なれたし。
特にチートとかもなく……というか、俺はチートじゃなくて、むしろ逆方向へのチートを貰った。
それがいわゆる障害と言うやつである。
どうも神は俺を嫌っているらしく、わざわざ転生させてまで嫌がらせをしてきやがったらしい。
今の俺の体が持ってるらしいのはADHD、失顔症などの精神疾患、あと肉体の方にAPDである、そしてこれ以外にもetc……
社会不適合者待ったなしの状態だ。
これに気づいたのは中学くらいのときだったか、そのときは前世では当たり前のように出来ていたことが出来なくなっていることへ悩んでいるときだった。
気づいたきっかけはとある動画投稿者が、そういうのをネタにしていたからである。
結局そのときは検査とかも受けなかったんだけど。
あまり親に心配とかかけたくなかったのである。今思うと相当バカなことをしたな、といった感じだけど。
お陰様で高校時代は思いっきり病んでしまった。
いわゆる地雷女子?闇垢女子?みたいな感じ、ゴスロリとか着たり、リスカとかしてた。闇垢はなかったけど。
まさか自分があんな感じになるとは思ってもいなかった。
前世なら馬鹿にしてるような存在なのに。
どうも病んでいたときは"俺"という存在はないみたいな感じだったみたいだけど。
なんというか、病んでいた時期の記憶が曖昧なのだ。病気とかそういうのではないはず。
もしかしたら、俺が目覚める前の精神が出てきてたのかもしれない、わからないけれど。
高校を卒業……ではなく退学(高三の後半あたりだ)する頃には比較的病みも収まっていて気づいたら"俺"は帰ってきていた。
帰ってきた……というよりは、混ざったような感じなのだけど。
その後はどうしたのかというと、開き直った。
社会不適合者だとか、そんなのガン無視してやるって。
社会不適合者なら社会で生きなければいいと。
なんて馬鹿らしいこと言っていた。
もちろん、金を稼がないわけにもいかないので、俺はあることを始めた。
それが作曲と言うやつである。
人の前に出なくて済むし、前世含め作曲には挑戦したいと思っていたのだ。
だから、独学で勉強して頑張った。ADHDとかの過集中と言うやつを利用したり、他にも色々。
まあ、大変だった。
独学にはもちろん限界があるし、ネトフレに色々教えてもらったりして。
今はなんとか贅沢をしなければ一人暮らしをできるくらいには稼げるようになった。
本当に贅沢のぜの字もできないレベルだけど。
文化的で健康的な最低限度の生活だっけか?そんな感じの生活である。ワンチャン下回ってるかもしれない。
そんな感じで辛うじて生きていたのだけれど、一つやはり、問題があった。
「贅沢がしたい」
四畳半間というお世辞でも広いなんて言ったら失礼に当たりそうな部屋の真ん中でいつもどおりのゴスロリ服を着て寝転びながら愚痴る。
贅沢が足りないのだ、暇なのだ。
ADHDにとって暇とはとても辛いものなのだ。
パソコンでやるゲームとかも特にやりたいことがなく、することがない。
作曲も悩みながら作るのは好きじゃない、悩みながらだと上手くいかないのだ。気分が乗ってるときに作曲するに限る
何かしなければな。
前世ならこういうときは何もせずにゴロゴロとかしていたけれど今世だととても辛く感じる。
立ち上がりなんとなくパソコンで動画投稿サイトを起動した
オススメ欄に表情されるのはゆっくり実況とかいわゆるvtuberと言うやつの切り抜きやら配信のアーカイブやら。
最近になって見始めたのだが、すぐにハマってしまい、気づいたらオススメ欄がこの様である。
「って、ねねこさん配信やってる」
ねねこというのはライブ25というところに所属するライバーの一人である。フルネームは又振ねねこ。
茶色の猫耳に耳と同じ色の髪、ぱっちりとした目に少し舌ぺろしている姿はとてもとても可愛らしい。
彼女はライブ25の中でも最古参……一期生と言うやつで、vtuberの基礎を作ったとも言われている人物だ。
特徴はその猫の見た目の通りとにかくマイペース、配信時間が短かったり長かったり、コラボ相手を振り回しているのもよく見る光景だ。
マイペースすぎて配信の告知さえしないので配信を見れるかはときの運だったりもするレベル。
それでも万単位の視聴者がいるあたりは流石というか、なんというか。
今日はどうやら雑談配信らしく、コメントに突っ込んだり突っ込まれたりしている。
『にゃふふふ、すごいでしょ!褒めなさい褒めなさい!』
コメント
・凄い!
・偉い!
・天才!
彼女がさっきまで話していたのは、カップヌードルを一人で作れたという話なのだがコメントでめちゃくちゃ褒められていた。
彼女の生活能力が死亡してるのはとても有名な話である、そんな彼女が一人でカップヌードルを作れたのは確かな進歩なのだろう。
まあ、褒められるのは彼女の人柄ってのもあるのだろうけど。
彼女には人を魅了してしまう才能があるのである。
少し、ほんのちょっと羨ましいなぁ……って思ってしまう。
コメントと楽しく会話する姿はとても輝いていて、楽しそうで、ちょっと眩しい。
こんな四畳半間とかいう狭い部屋の癖に防音とネット環境だけ完璧な部屋で配信を見て惰眠を貪ってる俺と大違いだ
はあ、とため息が漏れる。
やめようやめよう。こんなこと考えるとロクなことにならない。
"私"が出てくると自傷とかしかねないのだ。
暗いことは考えない、ともかく逃げる。長生きのコツだと思う、知らんけど。
『ん〜、そろそろ配信終わるかあ〜』
・乙
・次は告知ありで頼むわ
・おつつつつつつつつ
『告知はう〜ん、そのとき次第にゃ!じゃあ今日の配信はここで……あ!』
画面の向こう側で彼女が何かを思い出したかのような声を上げた。
その瞬間コメント欄が凄まじい速度で動き出した。
彼女には生活能力以外にももう一つ有名な要素がある。
それが閃きである。
あまりにも突発的で謎すぎる閃きをすることで彼女はとても有名なのだ。
つまり、コメント欄が凄まじい速度で動き出したのは、ねねこが何をしでかすのか心配のためである。
かくいう俺もちょっと怖い。
『え〜とにゃ、四期生のオーデションが今から始まるにゃ!』
コメント
・マジか!?
・そろそろと思ったけれど、ついにか
・うおおおおおおお!!!!
・今から?
四期生……四期生か、このタイミングで……
『しょーさいは概要欄のURLにゴートゥにゃ!お疲れ〜』
この言葉と共に配信は終わり、オススメ動画が表示された。
自動再生をキャンセルし、マウスのホイールを回して、概要欄へスクロールする。
概要欄の一番上、そこには四期生オーデションについて、と書かれたURL。
クリック
どこかの俳優のホームページ並みの速度でロードが終わり、ページが表示される。
表示されたのは四期生の募集条件の書かれたPDF。
年齢……問題なし、性別は女性、これも問題なし、条件は……これだけなのね。
ちょっと、いやかなり少ねえ。
下にスクロール、すると応募用の趣味とか色々書くらしい書類のコピー用の奴が出てきた。
やってみようかな……ちょっとそう思って。
俺はコピーのために、徒歩十五分のコンビニへ向かった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ライブ25について語るスレ
324名無しのオタク ID:gjmtp/pma
四期生キチャアアーーー!!!!!
325名無しのオタク ID:GWaPjmdad
>>324
マジ?ソースどこ
326名無しのオタク ID:apWjGmeS
>>325
ねねこの配信で話してたで、公式からの発表もすぐ出ると思う
327名無しのオタク ID:GWaPjmdad
>>326
オケ、ちょっとアーカイブ見てくるわ。ていうかそんな重大発表するなら何か予告しろよw
328名無しのオタク ID:AnSvln4x
ねねこのマイペースは今更や
329名無しのオタク ID:nsXv56hjax
公式から発表来たな↓
ライブ25公式@Live25
四期生オーデション開始!
詳細は↓のURLから
https://××××××××××××××××××××
#ライブ25#四期生
330名無しのオタク ID:bgpnjtXJA0
なんで女だけなんだよぉぉぉぉぉお!!
331名無しのオタク ID:00gmtJadPwm
>>330
三期生は四人中三人男だったからな、バランス取るんだろ
332名無しのオタク ID:%jpwMapwmd
>>331
あれ?三人?……三人?
333名無しのオタク ID:pmpDwjgp3
>>332
女の子はあんな下ネタ言わない
334名無しのオタク ID:Jmjpdk7xf
>>332
女の子は普通あんな欲情の仕方はしない
335名無しのオタク ID:kssmk@Tusb
>>332
女の子は配信中に吐いたりしない
336名無しのオタク ID:frstGjgw
さてさて、今回はどんなエゲツない個性が来るか
337名無しのオタク ID:aPtj34Juj
なんにせよ、楽しみだな
俺は女の子な時点で全員推すわ
主人公色々あって私服から外出用までゴスロリづくし