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狐ッ娘好きがある日狐ッ娘になった。(いや違う、そうじゃない。自分が狐ッ娘になりたいんじゃないんだ!)注:お試し投稿作

作者: rurura


 唐突だが皆はVRゲームと言うのを知っているだろうか?


 そう、専用のゴーグルをつけて立体映像を写し、まるでそこに居るかのように錯覚させて楽しませてくれるゲームの事だ。


 俺はそのVRゲームにはまりまくって家に帰れば飯もそこそこに詰め込んで、後はひたすら寝落ちするまでゲームをやりまくるという生活をするぐらい完全な中毒になっていたんだ。


 何のゲームかと言うと、まあゲームジャンル事態は良くあるオープンワールド型のMMORPGなんだが、このゲームぶっちゃけちゃうと人気ない。

 っていうかそもそもVRゲーム自体人気ないんだがそれは置いておくとする。


 で、なんで俺はそんな人気ないゲームにドハマりしてるのかと言うと、このゲーム……めっちゃキャラメイク細かく出来るんだ!


 まず種族からして何でもある、人間、エルフ、獣人、果てはオークにゴブリンなんてのまで作れるんだよ。

 そのラインナップ、エロゲーかって? いや安心して欲しい、ちゃんと全年齢版だ。


 そして俺は誰はばかる事無くリアルでも声高に主張出来ると断言する程の…………狐ッ娘好きなんだ!


 って訳で俺はめっちゃ頑張ってキャラメイクした。 それこそ3Dの専門書まで読みあさってまで勉強してキャラ作りした。

 すごく時間は掛かったけどまさに理想的な狐ッ娘が完成したのさ。


 一押しのチャームポイントはロップイヤーな垂れた耳!

 ピンっと立ってる普通の耳も良いけど垂れ耳も良い物ですぞ?

 あと、尻尾は一杯にしようかすごく悩んだけど、最終的に一本だけに決めた。

 その代わりに、かなり長ーく、もっこもこにした。


 うん、最高。




 後は分かるだろう?




 本気でキャラメイクして会心の出来のキャラを手に入れた諸兄なら共感して貰えると思うんだ。

 そのキャラを操作して他人に見せつけて自慢して、そしてチヤホヤされるだけでめっちゃ楽しいという事を!!



 …………ま、過疎ゲーだからあんまり自慢できないんだけどな…………サビシイ。



 ただまぁ、ハマってた俺が言うのも何だが、VRゲームって致命的な弱点があるよね。


 だって、そこにあるかの様に見えるのに、触れないんだぜ…………。


 狐耳に尻尾まであるのに…………触れないんだぜ…………。








 と、思ってたんだが、皆驚いてくれ…………このたび俺氏、ゲームキャラで異世界転生、と言うのをしたらしい!





 何言ってるか分からないって?

 大丈夫、俺も分からない。

 けど、問題ない、そんな事は重要じゃないって事を知ってるから!


 だって…………。


 狐耳、触れる!

 尻尾、触れる!!

 思ってた通りすごく手触りが良い!!

 最高かよ!!!


「めっちゃもふもふだー!」


 って、うお! びっくりした。

 自分の声めっちゃ高い。

 

 そういえばそうか、さっき言ったばっかだけど失念してたわ。

 俺…………狐ッ娘になったんだった…………。

 そっかそっか…………長年の夢が叶ったのか…………ふ、もはや悔いは無い。


 って違う!

 そうじゃない! そうじゃないんだ神様!


 俺は狐ッ娘になりたかったんじゃなくて、狐ッ娘と仲良くなりたかったんだよ!


 う~ん、これは困った。 どうしよう? うーむ。




 ……あれ? これってもしかして過疎ゲー過ぎてこのキャラの自慢相手が居ないのを嘆いていた俺への神様からのプレゼントじゃない?

 いや、この微妙に願った事と違う叶え方的に悪魔なのかもしれないけど。


 ふ、ふふふ、だが良いだろう!



 神か悪魔の仕業か分からないが、俺は俺の教示に掛けてこの最高のキャラを最高な狐ッ娘として完璧に演じきってやる!

 そして皆に自慢しまくってやるんだ!



 そうと決まればまずは練習しておこう。 


「ん~、ゴホンゴホン。 えー、こんにちは! 私、狐人族の…………あ、名前決めてなかったなぁ」


 名前か、どうしようか…………。

 そうだなぁ、まあ狐ッ娘だし、ルナール(フランス語でキツネ 注:本来オスの呼び名です)で良いか。


「じゃ、気を取り直して、こんにちは! 私、狐人族のルナール! よろしくね♪」


 うし、完璧やな!




 ってな訳で、それじゃあさっそく町へ行くとしようか。


 ちなみに町は遠目にみえてるんで割とすぐ行けそう。やっぱこの恵まれっぷり、俺は神に愛されているのか……ふ、罪深いぜ。





 ~~しばらく後~~





 おー、町だ。

 町の周りはめっちゃ太い丸太の柵、と言うか街壁的な物で囲まれてる。 格好良い…………のかな?

 正直微妙だけど門だけは石作りの立派な物だ。 なんかアンバランスで格好悪い気がするけどなんでそんな構造なんだろうか?

 まあ良いや。



 とりあえず……大砲で撃って壊してみたい……ってちゃうねん! RTSゲーマー脳がアホな事考えてしまった。

【RTS=リアルタイムストラテジーゲーム】




 お、門の所で入場待ちっぽい列があるな、並んでみよう。



 うーん、ここの守衛はかなり高圧的だなぁ。 並んでる人達に結構厳しい口調であれやこれや命令してるね。

 これはよろしくないね。 なぜなら、そんな厳しく言われたら俺のメンタルが折れてしまう。

 しょうが無い、我が美貌を使い媚びを売って優しく接して貰うとしよう。 そうしよう。



「次の者、来い! ぐずぐずするな、早くしろ!!」


 おっと、守衛が呼んでるな。 しかもすでにかなりお冠、これは困ったね。

 さてと、初の実戦だ、気合いを入れて行こう。


「はい、お疲れ様です守衛様」


 めっちゃ気合いを入れて完璧男に受けるだろうと思われるブリッ子笑顔で挨拶をする。 首を右に30°傾けるのも忘れない。



 ふっふっふっ、予定通り守衛は顔を赤く染めてうろたえて居るな、完璧すぎる自分が恐ろしい。



「あ、ああ、あー……なんだ、市民証の提示か来訪目的を言ってくれるかい?」


 おお、優しい!

 今までの相手への対応と雲泥の差だ、媚び売り作戦成功だね。


 と言う訳で優しい守衛さんに「田舎から出稼ぎに来たんです!」と言って、じゃあ入街税払えって言うから「盗賊に追いかけられて全部投げ捨てて逃げてきたのでお金ないんですぅ」って涙目で言ったらなんとお金貸してくれた。 稼げたら返すから待っててな。

 にしても、やっぱ狐ッ娘は皆に愛されるんだな、素晴らしい。

 冒険者ギルドと職業斡旋所の場所まで教えてくれたし、良い人だ、さっそく行ってみよう!

 あ、他にも名前とか休みの日も教えてくれたけどそれは省略する。



 とりあえず、ギルドか斡旋所か、どっちに行こう、うーん…………ま、男だったら冒険者ギルド一択か!

 って、もう男じゃないんだけどさ。



 てな訳で良い感じな町中を通って冒険者ギルドへ来たよ。


 さて、どうやって入ろうか悩むね。 最初が肝心だもんね、何事もなめられるのいくない。


 バーン!とドアを勢い良く押し開けて、たのもーう! なんて言ってギルドへ入る……そう言うのも良いよね。 様式美だよね。


 でも、愛されキャラな俺ことルナールちゃんはそんな品のない事しちゃ駄目かな? 駄目だね。

 仕方ない、もうちょっと普通に入ろう。


 スッと静かに西部劇の酒場的なドアを開けてギルドにスーッと入る。 で、すこーしだけ首を傾げつつ中を見回して状況確認だ。 首を傾げる、重要。 そん時に目が合った人にはニコッと愛想振りまくのも忘れずにしておいた。


 完璧やん。


 ルナールちゃんの好感度うなぎ登りだね、たぶん。


 にしても、ハッキリ言ってギルド怖い!


 居る人皆さんまるでヤッちゃんみたいな見た目の人ばっかりなんだよ。

 女の人もほとんどの人が極妻みたいな人しかおらんし…………コワ!



 お、奥の方に受付を発見したぞ。 対応している人は女の人が三人、スキンヘッドが一人の計四カ所、ってスキンヘッド!?

 怖いな異世界。

 でも女の人の受付はすっごい混んでるし……スキンヘッドの所は空いてる。 と言うか誰も並んでない。 うーん、まあスキンヘッドの所で良いか。 良い人かもしれないしね。


 と言うかスキンヘッドって言うと怖いから呼び方変えよう。 ツルッと丸い頭だし、タコさんと言う事にしよう、そうしよう。 さあ突撃だ。





 ~~しかしサラッとマルッと省略!~~





 と言う訳で依頼受けたよ!

 ちなみにタコさんはびっくりする程親切で良い人だったよ。 怖いけど。


 その親切なタコさんが勧めてくれた依頼は『薬草取り』なんだ。

 お勧めの理由はとにかく難易度低いって事。

 薬草なんて近くの森に行けばいくらでも生えてるから誰でも達成出来るらしい。その分報酬も安いけどね。


 ってな訳で依頼の為に森に来ました、森です。


 薬草取りなんて言うめっちゃベタなクエストを受けたまでは良いけれど、困った事に見渡す限り草ばかり、見分けられる気がしてこないぜ……。


 でも探す、探す、探しまくる。


 一時間くらい探したところで……飽きたよ!

 見つからない、見つからないよ? 簡単だって行ったの誰だよ、文句言ってやる! でも言ったのタコさんだよ! 怖くて文句言えないよ、ちくしょうめい!

 しかもこのままじゃ文無しだから見つけなきゃ仕方ないって言うね。





 ~~それからさらにしばらく探した後~~





 ん、なんだ?


 なんだか遠くで人が怒鳴ってる様な声が聞こえるな?

 実を言うと狐ッ娘になってからめっちゃめちゃ耳が良く聞こえる様になったんだよね。 やっぱでっかい耳は性能も良いんだな!

 ただ、俺ってロップイヤーだから普通の狐ッ娘よりは聞こえてないかもだけどね。 後、騒音がもの凄く頭に響いて辛い…………。


 っと、それは良いや。 気になるから見に行ってみよっと。



 で、声が聞こえる方に向かって歩いたんだけど、これがびっくりする事に案外遠かった! 自分の耳、良すぎだろ!? どんだけ遠くの声拾ってるんだって話だよ!


 はぁ、まあいいや。


 それで問題の声の元なんだけど、これが困った事になんだか豪勢な馬車がどう見ても盗賊って人らに襲われてるんだよね。 って言うか豪勢な馬車な割にお付きの人っぽいのが御者を含めて三人しか居ないんだけど少なすぎないですかね!?


 そんな少人数で豪勢な馬車乗って森の中に入ったらそりゃ襲われますってもんでしょ。 いや、本当だったら治安が良くて普段ならなんも問題ないのかもだけど、現に襲われちゃってるんだよな。

 ちなみに一人だけやたら育ちが良さそうなお坊ちゃんが居るから彼がお偉いさんでしょう。


 さて、助けないと駄目そうだけど、でもどうやって助けようか。

 ハッキリ言って俺が何の策も無く一人で飛び込んでいったら自分の貞操と命がヤバイ。 かと言ってこのまま放っておいたらダメそう。


 ふむー、もうちょっと良く観察してから考えよう。

 ふむふむ、お付きの人はそれなりに強いっぽいね。 一応今は敵を抑えてるし、すぐにすぐ負ける事はなさそう。


 んむむー、お、盗賊の親玉っぽいのが側近っぽいのとなんか話してるぞ。

 ピッと大きな耳を向けて(手動(手で持って))会話を拾ってみよう。



『おい、おめぇら、あいつよぅ、なんか貴族っぽくね?』


『へい親分、たぶんあれ貴族っすよ!』


『それってまずくね?』


『へい、拙いっす! 間違って傷なんてつけちまった日には王国軍が出張って来るっすよ!』


『だよなぁ。 でもホントにあれ貴族か? お貴族様にしちゃぁお付きが少なすぎるんだよな』



 とかなんとか会話してる。

 うーん、襲って良いのか迷ってる感じだな。


 これなら適当にハッタリかましつつ、お坊ちゃんに自分は貴族だって名乗って貰えば見逃して貰えそうじゃんね?


 うん、行けそう。 てかもうそれで行こう!


 良し、飛び出すぜい!


☆☆☆☆☆☆



「お待ちなさい!」


 と言う訳で俺は完璧な計画の元、お坊ちゃん達寄りの場所に大声を出しつつ飛び出した。

 まあ予想通り皆突然乱入してきた超絶美少女の俺ことルナールちゃんにポカーンとした顔をして固まってくれたね。


 なんで(なので)この隙に俺は計画を次の段階へ華麗に進める事にする。


「ひれ伏しなさい無礼者共!! 誰に向かって剣を向けてると思ってるんですか!?」


「は? いや…………ええ?」


 よしよし敵は混乱してるね。 さあそのまま次に行こう。


「あなたたち、こちらの方をどなたと心得る! この方こそかの有名なあの方ですよ!? あなたたちも知らないはずが無いでしょう!?」


「なぁにー、マジか!? お、おい! 一体、誰だってんだい!?」


 ふ、俺の勢い余る啖呵(たんか)に盗賊共もタジタジだ。

 やっぱりとあるご老公からパクった言い回しは悪党に効果覿面だね。


 ふふ、やっぱ何事もノリと勢いとハッタリで乗り切れるって本当だね! あ、でももしもこれでこのお坊ちゃんが何でも無い人だったらどうしよう?


 今更その可能性に気がついたけど…………まあ、その時はその時か、死ぬ気で逃げよう!



「ふふふ、聞いて驚きなさい! さあ、どうぞ、今こそ名乗りを上げて下さいまし!」


 煽るだけ煽ってお坊ちゃんにキラーパス。


 いまだにポカーンとしてるお坊ちゃんにアイコンタクトで訴える。


 ってそれでもポカンとした顔してるだとぅ!? 通じてないんかーい。


 こりゃまずいとバチこん!バチこん!とウインクでめっちゃ訴える。訴えまくる。

 その甲斐あってかしばらく不自然な間の後になんとかお坊ちゃんが再起動してくれたっぽい。


「ぁ……あ、ああ、そうかそうか、そう言う事か!! えー、ごほんごほん。 ふっふっふっ、そうだね、今こそ名乗ろう! 良く聞くが良い、僕こそはカララ辺境伯家の長男、ローライン・フィリモス・ウィール・カララだ。 愚民共よ、ひれ伏し崇め奉れ!」


「はぁぁぁ!? マジか? マジなのか!?」


「うん、マジだ。 そしてお前達も知ってるとは思うが、貴族に武器を向けた者は理由の如何に関わらず例外無く死刑だと言う事は把握して居るな?」


「は? な……う」


「ふむ、声も出せないか。 仕方ない。 だが僕は非常に心の広い貴族でね。 今すぐに武器を納めて視界から消えるのなら今回の事は不問にしてやっても良いのだぞ?」


 ピッと森の奥を指さしてお坊ちゃんが言い切った。

 ってか思った以上に大物だったな。 これなら大丈夫でしょう。 ってフラグじゃないからな!?



 と、一人ノリツッコミしてる間に盗賊達は凄い勢いで我先にと逃げ散ってしまった。

 凄いな貴族様効果。



「ありがとう、君のおかげで命拾いしたよ」


 盗賊が完全にいなくなった後、お坊ちゃんが話しかけてきた。


「いえいえ、私は特に何もしていませんよ。 たまたまあの盗賊達が貴方が貴族かどうか確信が持てなくて悩んでるって内容の会話が聞こえたので、お貴族様の名乗り上げが出来るように少し強引に場を乱させて頂いただけです」


「うん、それは十分凄い事だからね。 まず普通の人にはあの混乱の中で盗賊の会話を聞き取る事なんて出来ないからね」


「まあ私は見ての通りこんなに大きな耳がありますので。 ところでここはまだ町からそれほど離れて居ない場所だと思うのですが、ずいぶんと人目に付きそうな場所で襲われましたね」


 大きな耳を両手で持ち上げて見せつつ気になった事を聞いてみた。


「いや本当にね。 早かったね。 町を出て一時間で盗賊に襲われたよ。 びっくりだね、あはは」


 特に危機感も無くお坊ちゃんは頭を掻きつつのほほんとしてる。 なんでだ、こっちこそびっくりだよ。


「いえいえ、それ笑えないですよ! 危ないんで一度帰って出直した方が良いですよ!」


 全然危機感が無いお坊ちゃんに業を煮やして俺は忠告する。 でもあんまり深刻に捉えてなさそうな雰囲気。


「うーん、結局の所大丈夫だったし、問題無い気もするけどね。 でもそうだね、君ほどの美人がそこまで言うなら仕方ない、それじゃあ一度帰ろうか」


 それでもお坊ちゃんが俺の言葉に不承不承(ふしょうぶしょう)ながら頷いてくれた……んだけど、実はその後ろのお付きの三人が涙流しながら喜んでペコペコと頭下げて感謝してくれてるのは見なかった事にしよう。

 あと、説得の内容に美人かどうかは関係無い気がするんだが……。





 ~~町へ戻る馬車の中~~





 何故かナチュラルに馬車に連れ込まれて一緒に町へ戻る事になってしまった…………。

 まだ薬草取ってないから帰る予定なかったんだけども。


 ま、乗せられちゃったんだから仕方ない、諦めて気になってた事を聞くことにしよう。



「ところで、町の近くとは言えなんで貴族様がこんな少人数で出歩いてるんですか?」


「んー? ああ、僕は貴族じゃ無いよ。 僕の父が伯爵ってだけでね。 厳密に言えば僕自身は貴族では無いんだよ」


 お坊ちゃんは何故か前髪をファサッと爽やかに掻き上げてキラリと歯を光らせつつ、あんまり格好良くも無く、そして聞いた質問の内容とも微妙被っても居ない返事をさも凄く格好良い事かの様に教えてくれた。


 あれ、じゃあ盗賊は貴族に武器向けたわけじゃないから死刑じゃ無かったって事?

 でもあんまり変わらないか、どうせこう言う世界の盗賊は軽い刑になることなんてないもんね。


 って違う! そうじゃない、そうじゃ無いんだよ。


「そうなのですか。 って、いえいえいえ! 私が言いたかったのはそう言う事では無いのです! 平民から見たらどっちも差が無いですからね!?」


「ん、そうなのかい? そうかもしれないね」


 あぁぁ、ダメだ。 たぶんこの人天然だ……。

 全然話が進まないよ。


「それで、お話を戻させて頂きますけど、どうしてお付きの人がほとんど居ないのです?」


「ああ、そうだった、そんな話だったね。 いやなに、僕の弟にね『領主家に連なる者が領内の視察に行くのなら、護衛など仰々しく連れ歩いたら笑われますよ! 我が家の名を汚すつもりですか!?』と言われてね」


「…………え? それを信じたのですか?」


「うん、だって僕付きの執事とメイドにも確認したら『その通りです』ってお墨付きも貰ったもの。 だから最初は一人で行く予定だったんだけどね。 馬車は一人じゃ動かないって事に気がついてね。 彼らに手伝って貰ったと言う分けさ」


「そう、なんですか」


 あ、これダメ。

 凄くダメなやつだ。


 たぶんこの人弟に暗殺されそうになってるわ。


 ほっといたら遅かれ早かれ殺されちゃうよ…………。


「あ、そうそう。 君には助けて貰ったお礼をしなければいけないね。 今手持ちは無いけど、我が家に招待するからそこで報償を渡そう。 それに家族にも紹介したいし、晩餐にも参加してくれると嬉しい」


「そんな、良いのですか?」


「うん、遠慮は要らないよ」


 ってか何で家族に紹介する必要があるのさ!?

 伯爵家に行くだけでも拙そうなのに、家族に紹介なんてされたら巻き込まれそうじゃん!


 行きたくない……巻き込まれたくない……でも、ほっといたら絶対この人死んじゃう…………。



「分かりました。 それではお言葉に甘えて伺わせて頂きます」



 …………仕方ないなぁ、もう!!


 正義のヒロインなこのルナールちゃんが助けてあげようじゃないの!

 助けられるか分からないけど!

 ぶっちゃけ何か出来る気もしないけど!

 と言うか自分が危なくなったら躊躇い無く逃げるけど!!


 それまではルナールちゃんが助けてあげるさ! 感謝しろよ?




 と言う微妙に軽い決意をして俺は伯爵家へと乗り込んで行くのであった。






 ――で、それからなんやかんやあって、あっという間に数年後――






 おかしい、こんななずじゃ無かった…………。






「奥様、こんな所においででしたか。 旦那様がお呼びですよ」


「あら、なにかしら? どうせたいした用事じゃないのでしょうけれど、仕方が無い人ね。 分かったわ、ありがとうねメイド長」


「はい、奥様。 全く、まだ朝食でお会いになってから二時間も経っていませんのに呼ばれただけでそんなに嬉しそうなお顔をして、本当に仲がお宜しいこと」


「な!? ち、違うわ!! 私はあの人が頼りないから仕方なく一緒に居てあげてるだけよ! 本当よ!? 仲なんて良くないわ! そこは勘違いしないで下さいまし!」


「はいはい、分かっておりますよ、奥様」


「もう! ところでアレムとルーナを見かけなかったかしら?」


「ああ、お坊ちゃんとお嬢様も旦那様とご一緒でしたよ」


「あら、私だけ仲間はずれにして酷い人。 その酷い人のところへ案内してくれるかしら?」


「はい、奥様。 こちらで皆様お待ちですよ」




 …………ほんと、なんで(・・)はこんな事になっているのやら。


 それもこれも全部あの人が頼りないのが悪いのよ!

 全く、まあ良いわ。 もう少し付き合ってあげる。 


 まあ子供が危なくなったら躊躇い無く逃げるけどね!


 それまでなら、仕方ないからこの超絶美女のルナールさんが付き合ってあげるわよ!








最後まで読んで頂いた方、ものすごい半端でごめんなさい!

ありがとう御座いました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 短編投稿ありがとうございます(^_^ゞ 地味にアドニスさんが居ませんでしたか? お懐かしや(´艸`*) [一言] なんやかんやで数年後! 何故に幸せ結婚生活に至ったのか。 ……まぁ、玉の輿…
[一言] TS狐娘が最終的に子供まで作ってるのええやん!
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