表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/99

#41 ある優しい妖精の物語4


※更新時間ミスです申し訳ありません......。連休更新頑張りますのでご容赦を。





◆◇◆◇◆





 ーー儂はな、元々この村でハンター業を生業として暮らしておったんじゃ。嫁のエリンと息子のバリーと共にな。見ての通り、あの村にゃ何もありゃしねぇ。けどな、それで良かったんじゃ。ただ静かで平和で、それだけでよかったんじゃよ······。



「おとーさん! 気を付けてね!」


「いってらっしゃい貴方。はいお弁当、気を付けてね」



 《あの日》の朝、儂はいつも通りに息子と嫁に見送られて村を出た。そして、魔物を狩るために通い馴れた森へと入ったんじゃ。しかし、少し森に入った頃じゃ、森の様子が少しおかしい事に儂は気が付いた。



「ん······妙だな。静か過ぎる。偶然か、何かが起こっているのか。用心に越した事はないな」



 その時じゃった。其奴は唐突に表れた。



「っ!? な、なんだこいつはっ!? 一体何処から······いや、それよりも今はこいつを!」


「グルルルル······」



 それは、ゴブリンと呼ぶには様子がおかしく、通常緑色の外皮は赤く赤熱し熱を放ち、筋肉すら膨脹して既にゴブリンとも呼べんものになっておった。長年この土地でハンターをしてきた儂じゃが、あのゴブリンは初めてじゃった。そして、其奴を逃がすと不味いと判断した儂は、その場で仕止める事を選んだ。



「ぬおおおおおっ‼」


「ギイィィィ!」



 兎に角強かった。身体は限界を迎え、片腕は折れ、満身創痍で必死に戦った。そして。



「はぁっ、はぁっ、ゲホッ! っくそ! 何なんだお前は、畜生が!」


「ギ、ギルル······」


「流石、にっ、もう立てん、だろうがっ! くそっ!」



 どれ程の時間戦っていたのか、朝の内に森に入った筈が、既に陽は傾き掛けていてな。それでも、妙な胸騒ぎがして儂は村へと急ぎ引き返したんじゃ。しかし、満身創痍の身で思ったよりも時間が掛かった。そして、陽が落ちた村へとたどり着いた儂が見たものは。



「お、おおお······何だ、何だこれは。一体何が起こっているっ!?」



 何者かに襲撃を受け、煙を上げ悲鳴が響く村が飛び込んできた。何が起こっているのかは理解出来んがただ急いだ。急いで家族の待つ家へと向かったんじゃ。そこで家族と会った。会えたんじゃ。



「お······おおおおっ‼‼ 貴様等ああああ‼ 何を、何をしてやがる!」


「ギギッ、グギッ」


「放せ! 今すぐ息子の腕をその口から放せえええぇぇぇ‼‼」


「グギャッ!? ギッ······」


「死ねっ! 死ねっ! 死ねえええぇぇぇ‼」


「······ギ」


「はぁっ、はぁっ······バリー、バリー! 嘘だっ、嘘だと言ってくれっ! はぁっ、はぁっ、はっ、エリン······? エリン、エリン! エリーン‼ どこだ! どこにいる!?」



 変わり果てた息子を置いて、儂は妻を探したんじゃ。そして見つけた。見つけてしまったんじゃ。



「あな、た。逃げ、て······うっ、あ」


「ギギ······ギギッ、ギッ?」


「ギギ! ギイイイイイ!」


「エリ、ン? 貴様、貴様等っ‼ 貴様等ああああぁぁぁ‼‼」



 妻は両肩に太い木の枝を刺され、身動きを封じられゴブリン共に(もてあそ)ばれておった······。それを見た儂は、怒りに我を忘れひたすらにゴブリン共をぶち殺した。そして、何も居なくなった部屋には、儂と妻しか居なくなった。両肩を木の枝で刺され······喉にも木の枝を刺された、血を吹く妻が。



「うっあ、ああああ‼‼ ああああ‼ エリン、エリン‼ 頼む、死なないでくれ! エリン‼」


「ゴボッ······はっ、はっ、あな、ゴホッゴボッ」


「いい、喋るな! 喋るんじゃない‼ 誰か、誰でもいい! 助けてくれ、助けてくれ‼」


「きい、て······殺して、っゴボッ、っ、苦し、い、のっ。ゴフッ、ゴホッ、バ、リーをっ、守れなゴホッ」


「いい、いいんだ! いいから······済まなかった、守れなかった! 守ってやれなかった! だから、だからっ‼」


「ね······も、楽にゴフッゴフッ、してっ。おねが、コブッガフッ!」


「駄目だ、駄目だ、諦めるな、頼むから諦めるなっ! くそっ、誰かーっ!! 頼む、っ、助けてくれよ······助けてくれよおっ‼ うおああああああああ‼‼」



 儂はただひたすら泣き叫び、妻が既に事切れている事にすら気が付かなかったんじゃ。どれ程の時間が立ったのか、村には静けさが戻っておって、儂は血塗れになった部屋で他のハンター達に発見されたよ。冷たくなった妻を抱き締めたままな。

 ······そこからじゃ、儂は森へと移り住み、ひたすらに森の魔物を殺して殺して殺し尽くす日々を始めたのは。恨んだ、呪った、ひたすらに殺した。自身の無力を隠す様に、死に場所を探す様に毎日毎日殺したんじゃ。



「くたばれえええぇぇぇ‼‼」


「ギッ!? ギギャッ!」


「ギギャッ! ギギィィィ!?」



 当然、村の連中は心配して何度も儂の元を訪れた。しかし、その尽くを追い返し、儂は森に残り魔物を殺す日々を選んだ。······そうして、いつの頃か誰も訪れん様になった。そんな時、おっちょこちょいのお節介焼きな、小さな《友達》と出会ったんじゃ。



「ねぇねぇ? 毎日毎日沢山魔物を殺してて楽しいの?」


「············」


「むっ、なんで無視するのよ!? 聞こえてるでしょ、絶対聞こえてる筈だっ! ねぇってば‼」



 毎日毎日飽きもせず、儂の元を訪れ喚いてな······いつしか、儂の小屋にまで居着く様になり、儂も気付けば話す様になっておったよ。きっと救われたんじゃよ、その小さな《友達》にな。



「ねぇ、そういえばまだ名前聞いて無いわよ? なんて言うの、お爺さん?」


「儂は儂じゃ、名は捨てた。爺でも何でも好きな様に呼ぶといい」


「何よそれ! ま、私も名前なんて無いんだけどね。いいじゃん、お互い名無しで! お揃いね私達!」



 その屈託のない笑顔に救われておった。あの日守れなかった、大切な家族を重ね合わせて救われておったんじゃ······。ありがとう、我が小さな《友達》よ。そんなお主に、儂の名を聞いて欲しいんじゃ。愚かで弱い、この儂の名を、どうしても······っ! ゴホッ、ゴボッ!! ゴフッ、はっ、はっ、よく、聞いてくれ、儂の、儂の名は······っ!







 お読み頂きありがとうございます。宜しければページ下部にあります評価ポイントで作品の評価をしてくだされば幸いです。


 また、感想やブックマークもお待ちしております。


 お時間を頂きありがとうございました。

 次の更新でまたお会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ