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#18 ある不器用な騎士の物語13


※前回の告知通り、少し放出させて頂きました。引き続き楽しんでお読み頂けると幸いです。コメントや評価等も頂けると作者は喜び更新が捗るかもしれません←








◆◇◆◇◆





「なんだよ······これ。一体何があった? 何だってこんな」


「五月蝿ぇ! 御託も戯れ言も後にしろ! 先ずは住民の避難を優先、街の全ての住民達を叩き起こして城に誘導しろっ!」


「おい、第五っ! そっちの手ぇ空いてる連中居ねえのかよ!? こっちに回してくれ! 手数が足りねぇ!」


「居る訳ねぇだろが! 第六の魔法部隊が来るまで死ぬ気で走り続けろっ! 俺も一緒に死んでやるから踏ん張れ! 住民を王城に避難させろっ!」



 そこは既に、ラヴェルが良く知る王都の光景ではなかった。


 夜中だというのに街中が声に溢れている。しかし、それはいつも聞いていた声とは正反対の悲鳴、罵声、怒号、泣き声······。躓き倒れた者を踏みつけ、先を走る者を掴み引き倒し、横を走る者を押し退け住民達は我先にと逃げ惑う。


 ここは何処だ? 本当に王都なのか? 何故こんな事に。一体何が起きている? 寝起きのまま中ば強引に鎧を着込み、無理矢理に身体を前にと動かして、そうして辿り着いた先が地獄と化していた。


 ラヴェルはその光景を見て呆然と立ち尽くす。まるで想像していなかった光景が、未だ鈍い思考回路を更に鈍くさせる。


 それは唐突だった。いきなり後頭部に鈍痛が走り、何事かと振り向いた先には見知った顔の騎士がいた。



「バカ野郎、ぼけっとするなラヴェル! まだ寝惚けてんのかテメエは!」


「あ······こりゃ、一体どう」


「御託はいい! 動けっ! お前の団の団長が探していた! 正門前だ、さっさと行けっ! 後で会おう!」



 あ······と、声をかける前に走り去る同僚の背を見詰めて漸く思考を改める。

 自分は何をするべきか。自分は何を考えるべきか。自分は何処に行くべきか。


 思い立つと同時に弾ける様に走り出す。向かう先は正門前。恐らく、もう外の団員達は揃っているであろう場所。

 そこへといち早く辿り着く為に整備された道を人波に逆らい走り続ける。



 「っそ、何をしてがる俺! この大馬鹿野郎! ボケっとしてる暇なんざねぇだろが! そう、さっき聞いただろ! これは《魔物集団暴走(スタンピード)》だ! 急げ、王都が落ちるかも知れねぇんだぞっ!」



 自身の不甲斐なさに喝を入れ、思考を切り替える。最早ここは良く知る平和な場所ではない。《戦場》なのだと言い聞かせる。自身が何の為にこんな重たい鎧に身を包み、自身の背丈より長い大剣を担いでいるのかを。


 己が騎士であるからこそ、その義務を果す為命を賭して守り抜く。

 かつて、顔を見る事の叶わなかった父がそうした様に······。



「遅れて申し訳ありませんっ! ラヴェル・ハルケイン、只今到着致しました!」


「遅いぞラヴェル! しかし良く来たっ、さっさと並べ!」



 息も整える暇もなく、自身の所属する団に加わる。立つ位置は団員が居並ぶ列の最前列。第三騎士団所属《小数独立殲滅部隊》の最前列にラヴェルは立つ。



「改めて説明する。良く聞けぃ! 現在、王都周辺は第八騎士団所属の魔法支援部隊が結界を維持している! 城壁に第六騎士団所属の攻撃魔法部隊と第四騎士団所属の遠距離攻撃部隊が揃い次第、結界を解き迎撃に移る! 攻撃魔法部隊が先んじて大規模広域殲滅魔法を放った後、我々はその攻撃魔法を合図に正門より打って出る! 先頭はお前だ! ラヴェル! やれるか!」


「勿論です団長! その大任、必ず全うしてみせます!」


「よし! 任せたぞ! ラヴェル、魔物共に我が団の誇る部隊の力、存分に思い知らせてやれい! ······いいか、全員良く聞けい! これより大規模王都防衛戦を開始する! 王国の誇りを証明せよ! 騎士の使命を全うせよ! 仇なす全てを殲滅せよ‼ 我等王国の総意の元、己が信念の名の元に‼ 国の為に己の剣に魂を捧げよ‼」





『己が信念の名の元にっ‼‼』





 団員全員が自身の胸の前で武器を持ち、刃を天へと掲げる。王国騎士団の伝統の儀式。戦場に赴き、己の命を賭けてでも騎士の職務を全うする事を誓う決死の儀式。

 自身の命を剣と化し、仇なす全てを打ち滅ぼす。例え命が尽きようと、自身達の後ろにいる者達を必ず守り抜く。その決意を剣に込める。


 掲げたままで目を閉じる。思い浮かべるのは大切な人達。愛する者。帰りを待つ者。友の、家族の顔。

 皆が皆、思い浮かべるものは違えど心は同じ。《命を賭けて守り抜く》。それこそ騎士の義務であり、騎士の誇りであり、騎士の生き様である。


 未だ開かぬ正門を前に、今か今かと待ち続ける。門が開け放たれるその時まで、大切な顔を思い浮かべるのであった。



 「······大丈夫、俺ならやれる。今まで幾度となく魔物共を蹴散らしてきたじゃねーか。いつも通りだ、問題無ぇよ。けど······くそっ、心臓がやけに五月蝿く跳び跳ねやがる! 落ち着け、落ち着け。何でもねぇ、何でもねぇぞ。今こそ正に、俺が待ち望んだ騎士の本懐ってやつを遂げるべき時じゃねぇか! 気合い入れろ馬鹿野郎っ!」



 ラヴェルは自らを鼓舞し、五月蝿く鳴り響く心臓を落ち着かせようと必死になっていた。そして、皆と同じ様に自身の大剣へと願いを込める。その時、ふと浮かんだ顔に自照の笑みが零れる。



 「······何だよ、こんな時にお袋の顔を思い出すなんてな。あぁ、でも確かに後悔はあるな。今生の別れになるかも知れん、最後の顔合わせがあれじゃあ締まらねぇよな。······すまねぇお袋。今回ばかりは生きて帰って来れねぇかも知れん。そうなったら、お袋を一人にしちまうな。あぁ、親孝行らしい事の一つもしてねぇや。悪ぃな、こんな親不孝な駄目息子でよ。もし、生きて帰って来れたなら、少しは親不孝って奴をしてみようか」



 目を閉じて耳を澄ます。その時を逃さぬ様に。この門が開けばそこはきっと地獄だろう。けど、逃げる訳にはいかない。退く訳にはいかない理由がある。背中にいるであろう何万という人達を守る為に、退く事は許されない。それこそ騎士の本懐を遂げる為に進むのだ。


 そうして、自身が小刻みに震えている事に気が付く。心の奥底からくる震えは、如何に抑えようとも治まらず乾いた笑みを浮かべる。

 気が付くと、周りも確かに震えていた。中には歯が打ち付けあう音が聞こえる程に震えている者もいた。

 

 そこで、ふと温かいものを感じる。


 何かと手で(まさぐ)ってみると、肌身放さず持ち歩いている短刀だった。


 それは、母親から託された《ハルケイン》家の家宝。それこそ御先祖様が国王陛下から直々に授かった王家の《血族の証》。


 不思議に温かいその短刀を握り、不適に口角を上げる。



 「何を俺らしくもねぇ事を考えてんだか。こうなったら、やる事は一つだろうが。一匹もこの王都にゃ入れさせねぇ。それだけだ。······不思議だな。この短刀が熱く感じる。御先祖様の御利益ってやつかね。なら御先祖様よぉ、しっかりと見といてくれ。あんたの子孫が敵を討ち滅ぼす様をしっかりと見といてくれ!」





 程無く、その時は訪れる。


 地獄へと続く門が、今大きな爆発音と共にゆっくりと開け放たれる。


 両の目でしっかりと前を見据え、しっかりと自身の得物を握り締める。



 「さぁ、俺達騎士の生き様を嫌という程見せてやろう。お前らが誰に喧嘩を売ったかを、その命を以て知るがいいっ!」



 我等王国騎士団総員。


 全身全霊を以て貴様等を討ち滅ぼす。





「総員っ! 進めえええええ‼‼」







 お読み頂きありがとうございます。宜しければページ下部にあります評価ポイントで作品の評価をしてくだされば幸いです。


 また、感想やブックマークもお待ちしております。


 お時間を頂きありがとうございました。

 次の更新でまたお会いしましょう。

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